【完結】人妻オメガの密かな願望

若目

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おやすみなさい

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「やだあ!くすぐったい!!」
直生がせわしなく体をよじる。
そのせいで、直生の体についた水分が何滴か床や壁に飛び散った。
完全にわざとだ。
わざと総治郎を困らせて、楽しんでいるのだ。

「こら直生。もう!ジッとしないか!」
イタズラがはなはだしく、手に負えない子どもみたいなことをする直生を、総治郎は父親みたいになだめた。
いや、おいおい父親になることを考えると、いつかは自分の子どもともこんなやりとりをするかもしれない。

「いやでーす!」
直生はクスクス笑いながら、さっきより激しく身を捩った。
「まるで体ばっかり大きな子どもだな!そーら、つかまえた!!」
その悪ふざけに乗っかるように、総治郎は直生の華奢な体を抱きしめた。
こんなふうにじゃれ合いつつ、2人は遅い入浴を終えた。



2人がバスルームから出てベッドに入るときには、もう日付けが変わる寸前だった。
結婚当初は寝るときは別々だったのが、いまはもっぱら総治郎の部屋で寝るのが慣習になっていた。
というのも、総治郎の部屋のベッドサイズはセミダブルで比較的大きいので、2人いっしょでも寝られるのだ。

「明日も発情期が大変だと思うから、ゆっくり寝るんだぞ。起きたときに発情期が苦しくて、俺がまだ寝てたときはムリヤリ起こしてくれても構わないから」
隣で寝ている直生の体に、総治郎はブランケットをかけてやりながら、労いの言葉をかけた。
直生は以前、寝ている自分に遠慮して、襲いくる発情期にずっと耐えていた。

「大丈夫ですよ。発情期、もう過ぎちゃいましたから」
「え?ああ、そうだったのか」
言われてみれば、発情期が来てから1週間くらい経っていた。
直生に付き合っているうちに、それほどまでに時間が過ぎているなんて、総治郎は気がつかなかった。


「はい!だから、あとは赤ちゃんを待つだけです」
「それはちょっと気が早いだろう」
総治郎は笑ってしまった。
いや、言っていることは間違いないのだけど、まだそういう兆しもないのに、もうすっかり母親になるつもりの直生がなんだか可愛く思えるのだ。

「それはそうなんですけどね。でも、できれば早く来てほしいんですよ」
「まあ、妊娠にはリミットがあるし、俺も歳とはいえ、そんなにあわてて子どもを生むことはないだろう。こればっかりは授かりものだから、気長に待つことにしよう。子どもが生まれるまでは、自分をいたわることだけを考えなさい」
蒸栗色の髪を撫でてやると、直生は嬉しそうに頬を緩めた。

「そう言ってくれるのは嬉しいですけど、総治郎さんも自分をいたわってくださいね。いずれはパパになるんですから」
髪を撫でる総治郎の手に、自分の手を重ねた。

「それもそうだな。医者から血圧だの皮下脂肪だの、アレコレ指摘されてるし」
「あらやだ、そうだったんですね」
心なしか、直生が心配そうな顔をした。

「この歳で健康診断なんかいったら、どっかしら引っかかるのが普通なんだよ」
「じゃあ、健康のために早く寝ましょう」
直生が体をこちらに寄せてきた。
「そうだな」
総治郎の返事を合図に、2人は目を閉じた。
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