80 / 82
番外編 出産祝い
しおりを挟む
直生の妊娠が発覚して、総治郎はさっそく大成に報告の電話をかけた。
「直生が妊娠した」
「そりゃおめでとさん。お祝いは何がいい?」
「うーん…」
お祝いはと聞かれると、何も思い浮かばない。
妊娠がわかって以降、いろいろ必要なものを買い揃えた後だからだ。
そんなタイミングで今さら何が欲しいかと言われても、なかなか出てこない。
「おむつケーキでいいか?定番だろ?」
「ああ、そういえば、そんなのもあるんだよな」
おむつケーキというのは、おむつを丸めたものをまとめてラッピングして、ケーキのように見立てたものだ。
総治郎はつい最近になってその存在を知ったのだけど、デパートなんかでも出産祝いを探しに行けば、必ず販売されているような定番のプレゼントなのだとか。
──最近のプレゼント事情は分からんな…
「あ、でも、アレ解くの大変なんだよなあ。ラッピングのリボンとか包み紙とかの片付けも面倒らしいし、それならおむつ1パック丸ごと贈ったほうがいいか?」
「うーん…」
総治郎は悩んだ。
出産祝いを贈ったことは何度かあったが、受け取る側になったのは初めてのことなので少し悩んでしまう。
また、総治郎は何を贈られても構わないが、産むのはあくまで直生だ。
「俺が良くても、直生がどう思うかまではわからん」
「じゃあ、カミさんに聞いてくれよ。お祝いは何がいいか」
「わかったよ。じゃあな」
「おう!」
通話を終えると、ちょうどいいタイミングで直生がこちらに来た。
「お友だちですか?こないだ総治郎さんが話していた人」
「そうだ。結婚式にも来てたぞ」
「そうなんですか?」
直生がキョトンとした顔で総治郎を見つめた。
そういえば、直生は大成の顔を知らない。
大成は結婚式に来てくれたものの、さっさとお開きにしてしまいたい気持ちから、直生に彼を紹介する間もなく切り上げてしまったのだ。
──こんなことなら、あのとき紹介すべきだったな
こんなに関係が発展するとは思っていなかった総治郎は、いまさらそんなことを考えた。
「子どもが生まれたら、紹介してくださいね。」
「そうだな。ああ、それと、大成が出産祝いは何がいいって聞いてきたんだけど、きみは何がいい?」
「うーん。祝ってくださるなら、何でもいいですよ」
言いながら直生が、意味深に体を寄せてきた。
こういうときはだいたいセックスのおねだりなのだけど、いまは妊娠中だからできない。
では、いったい何だろうか。
「ねえ、総治郎さん」
直生が口を開いた。
「何だ?」
「これから、いろいろ大変だし、その…しばらく何もできないから、たまるとは思うんですけど……」
直生の顔が不安げに翳りを帯びる。
「“せめて妊娠中は浮気しないでください“か?」
「そうですね……そういうことです」
直生の細い腕が総治郎の腰にまわってきて、しがみつくような体勢になる。
いつか見た育児雑誌で、妊婦が不安に感じることのひとつに「妊娠中の浮気」があったのを総治郎は覚えていた。
やはり直生も、そのあたりに不安を感じるらしい。
妊婦の精神状態が胎児に影響することもあるとも書いてあった。
「そのへんは安心しなさい。こんなすっかり枯れきった中年と寝たがる物好きは、きみくらいしかいないんだから」
総治郎は直生を安心させようと、自虐とからかいを込めた言葉をかけた。
「やだ、総治郎さんたら!」
直生がクスッと笑う。
少しは安心させることができただろうか。
「実際そうだろう?」
直生につられて、総治郎もつられて笑った。
「いままでずっとモテモテだったクセに、そんなこと言って!イヤミな人!」
「きみの買いかぶり過ぎだよ」
「もう総治郎さんたら!あ…あの、総治郎さん、あともう一つお願いがあって…」
話の途中で、直生がまた切り出してきた。
「直生が妊娠した」
「そりゃおめでとさん。お祝いは何がいい?」
「うーん…」
お祝いはと聞かれると、何も思い浮かばない。
妊娠がわかって以降、いろいろ必要なものを買い揃えた後だからだ。
そんなタイミングで今さら何が欲しいかと言われても、なかなか出てこない。
「おむつケーキでいいか?定番だろ?」
「ああ、そういえば、そんなのもあるんだよな」
おむつケーキというのは、おむつを丸めたものをまとめてラッピングして、ケーキのように見立てたものだ。
総治郎はつい最近になってその存在を知ったのだけど、デパートなんかでも出産祝いを探しに行けば、必ず販売されているような定番のプレゼントなのだとか。
──最近のプレゼント事情は分からんな…
「あ、でも、アレ解くの大変なんだよなあ。ラッピングのリボンとか包み紙とかの片付けも面倒らしいし、それならおむつ1パック丸ごと贈ったほうがいいか?」
「うーん…」
総治郎は悩んだ。
出産祝いを贈ったことは何度かあったが、受け取る側になったのは初めてのことなので少し悩んでしまう。
また、総治郎は何を贈られても構わないが、産むのはあくまで直生だ。
「俺が良くても、直生がどう思うかまではわからん」
「じゃあ、カミさんに聞いてくれよ。お祝いは何がいいか」
「わかったよ。じゃあな」
「おう!」
通話を終えると、ちょうどいいタイミングで直生がこちらに来た。
「お友だちですか?こないだ総治郎さんが話していた人」
「そうだ。結婚式にも来てたぞ」
「そうなんですか?」
直生がキョトンとした顔で総治郎を見つめた。
そういえば、直生は大成の顔を知らない。
大成は結婚式に来てくれたものの、さっさとお開きにしてしまいたい気持ちから、直生に彼を紹介する間もなく切り上げてしまったのだ。
──こんなことなら、あのとき紹介すべきだったな
こんなに関係が発展するとは思っていなかった総治郎は、いまさらそんなことを考えた。
「子どもが生まれたら、紹介してくださいね。」
「そうだな。ああ、それと、大成が出産祝いは何がいいって聞いてきたんだけど、きみは何がいい?」
「うーん。祝ってくださるなら、何でもいいですよ」
言いながら直生が、意味深に体を寄せてきた。
こういうときはだいたいセックスのおねだりなのだけど、いまは妊娠中だからできない。
では、いったい何だろうか。
「ねえ、総治郎さん」
直生が口を開いた。
「何だ?」
「これから、いろいろ大変だし、その…しばらく何もできないから、たまるとは思うんですけど……」
直生の顔が不安げに翳りを帯びる。
「“せめて妊娠中は浮気しないでください“か?」
「そうですね……そういうことです」
直生の細い腕が総治郎の腰にまわってきて、しがみつくような体勢になる。
いつか見た育児雑誌で、妊婦が不安に感じることのひとつに「妊娠中の浮気」があったのを総治郎は覚えていた。
やはり直生も、そのあたりに不安を感じるらしい。
妊婦の精神状態が胎児に影響することもあるとも書いてあった。
「そのへんは安心しなさい。こんなすっかり枯れきった中年と寝たがる物好きは、きみくらいしかいないんだから」
総治郎は直生を安心させようと、自虐とからかいを込めた言葉をかけた。
「やだ、総治郎さんたら!」
直生がクスッと笑う。
少しは安心させることができただろうか。
「実際そうだろう?」
直生につられて、総治郎もつられて笑った。
「いままでずっとモテモテだったクセに、そんなこと言って!イヤミな人!」
「きみの買いかぶり過ぎだよ」
「もう総治郎さんたら!あ…あの、総治郎さん、あともう一つお願いがあって…」
話の途中で、直生がまた切り出してきた。
10
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~
ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。
転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。
朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。
生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。
どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。
忙しい大人の甘いオフィスラブ。
フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる