【完結】人妻オメガの密かな願望

若目

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番外編2 名前を決めよう

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「なんだ?」
さて、どんなお願いをしてくるのだろうかと総治郎は身構えた。

「わたしに発情期が来たときは、かならず相手をしてくださいね」
「……なんだ、そんなことか。お安い御用だとも」
それぐらいなら、無理難題というわけでもない。
むしろ、可愛らしいおねだりだなと微笑ましい気持ちにすらなった。

「かならず、ですよ?」
直生が念を押すように詰め寄る。
「わかったよ」
その仕草がなんだか愛おしくて、総治郎は思わず口元を緩めた。


「総治郎さんが悪いんですよ?わたしのことめちゃくちゃに抱くから。あんなの覚えちゃったら、発情期にひとりで過ごすなんてもう考えられないんですから」
直生が甘えるように、腰に回した腕をより強く締めてきた。

「そりゃ悪かった」
誘ったのはきみじゃないかと総治郎は思ったが、直生の不安は取り除かれたようだし、総治郎自身もまんざらでもないので、さっさと聞き流した。


ここで総治郎は、あることを思い出した。
直生がはじめて願望を口にした頃に、大成にもらったアドバイスだ。
「そうだ直生。子どもの名前を考えよう」
「子どもの名前?」

「そうだ。こういう名前がつけたいとか、希望はあるか?」
「生まれるのはまだまだ先だから、それは後でいいんじゃないですか?」
「まあ、それはそうだが。けっこう多いらしいぞ。子どもの名前で揉める夫婦」

「揉める?子どもの名前で?」
直生は「そんなことがあるの?」という顔をした。
「子どもの父親が母親に何の相談も無しに勝手に名前を決めて、役所に届け出を出したなんてことがあったらしい」
「まあ!」
直生は「それは大変!」とばかりに目を見開く。
最近の直生は、表情がコロコロと変わるようになった。

「あと、役所に出すときに子どもの名前に使えない漢字なんかもあるそうだ。一生懸命考えたのに役所が受理してくれなかった、なんてこともあったとか。受理されなかった前例とか、そのへんも調べないとな」
「けっこう大変なんですね、子どもの名前を考えるのって」
「そうだな。だから、早めに決めた方がいいと思う」


そこから総治郎は、亡き両親を思い出した。
総治郎の名前は父親が考えたもので、名前に「総」「治」とあるのは将来リーダーシップを持った人間になるように、という願いをこめてのことだ。

結果的に、総治郎は人の上に立つ仕事に就いたわけだから、名前に込められた想いというのは強いのかもしれない。
もっとも、この結果はそうなるべくして育ててくれた両親の努力が、功を奏した可能性も大きいだろう。

そんな両親が存命しているうちに孫の顔を見せてやれなかったのは悔やまれるが、経済面に恵まれたおかげで手厚い治療や充分な介護ができたのは、喜ばしいことのように思う。

両親ともに要介護になったのは、総治郎がビルを所有して収入が安定した頃合いであった。
働かずとも収入が入ってくるおかげで時間に余裕ができて、ようやく老親に楽しい時間を作ってやれると思っていた矢先のことだ。

若い頃は仕事の忙しさにかまけて、ろくに親に顔も合わせなかった総治郎にとって、これは心身に堪える出来事だった。
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