69 / 69
番外編
15
しおりを挟む
理真が生まれてから約半年の時が過ぎ、鬼龍組の面々も大きな変化を見せていた。
朔太郎は保育士の資格を取得した事を生かして、人手不足の日は皇保育園の保育士としての仕事をこなす日々も増えていた。
それでも、やはり鬼龍組組員として理仁の役に立ちたい彼は、真彩や悠真の送迎を出来る限り担当していく。
翔太郎は相変わらず理仁の右腕としてサポート役に徹しているものの、最近では真面目で寡黙な彼に、女性の影がちらついているという噂がちらほら。
それは果たして任務の為なのか、それとも……。
その他の組員たちも、理仁を助け、鬼龍組を東区域一の組織となれるよう日々自分の任務をこなしていた。
そして理真は、
「理真はもうすぐハイハイ出来ちゃうかもしれませんね」
「ああ、最近よく動いているな。成長が早いから、常に目が離せねぇな」
「本当に。何だかあっという間に何でも出来るようになってしまいそうですね」
寝返りやおすわり、ずりばいなんかも理真は他の子よりいくらか早く、最近では少し目を離した隙にずりばいで動いていて真彩を驚かせているせいか、平日はいつも気が抜け無い。
そんな中でも悠真が良いお兄ちゃんなだけあって、休みの日はいつも妹の傍で一緒に遊んであげたり絵本を読み聞かせていたりするので、休日だけは真彩も安心して家事をこなせるのだ。
家事を終えて理真と悠真の居る部屋へ戻ってくると、理仁が部屋の前に立っている。
「理仁さん……何して――」
そんな理仁を不思議に思った真彩が声を掛けるも、口に人差し指を当てて黙るようにという仕草を見せた彼を前に思わず自身の口を塞ぐ。
そして、部屋の襖の前に立つと、中から悠真の声が聞こえて来た。
「りーま、早くいっぱいあそべるようになってねー! おしゃべりもたくさんしたいねー! お兄ちゃんがいろんなこと、おしえてあげるからね!」
それは理真相手に悠真が話し掛けているもので、いつも自分の事を“悠真”と言っているのに理真の前では“お兄ちゃん”と言っているという新たな発見が出来た真彩と理仁。
そんな微笑ましい場面に出会して良かったと思いながら、暫く二人にしようと隣の部屋に入って行った。
「悠真、本当に理真の事が大好きで、何だか嬉しいです」
「理真が成長するにつれて理真自身も悠真を好きになるだろうから、相思相愛だな」
「ふふ、確かに。理真もきっと、お兄ちゃん大好きっ子になりますよね」
真彩は悠真が理真を大切に思ってくれている事が本当に本当に嬉しかった。
お腹の中に赤ちゃんがいると知って悲しむ悠真を見た時は、やっぱり兄妹なんて作っては駄目なのかと思ったし、もっと成長して理仁との血の繋がりについて知った時、理真は理仁が本当の父親だけど自分は違う、自分の居場所は無い……そんな疎外感を感じないかという不安がやはり心の片隅にあったものの、理仁は悠真にも理真にも変わらない愛を注いでくれるし、それを悠真も絶対感じていると信じているから、いつしかそんな不安も消えていた。
「理仁さん」
「ん?」
「……私、四人家族になれて、本当に良かったって思ってます」
「俺もだ。悠真も理真も可愛いし愛おしい存在だ。真彩と同じくらい愛してる。これからは、もっと良い父親にならねーとな」
「理仁さん……。理仁さんは今でも充分、良い父親ですよ?」
「いや、全然だ。悠真や理真にとって尊敬される父親になりてぇけど、俺は組織の人間だし、抗争が起きれば、子供たちにも迷惑をかけちまう。そうならねぇように、組織の治安を良くしていかねぇとな」
「無理だけは、しないでくださいね?」
「分かってる。お前たちを悲しませるような事だけは、しねぇから」
不安そうな表情を浮かべた真彩の肩を抱いた理仁はそのまま自身の腕の中へ彼女の身体を抱き締める。
「しかし、子供ってのは本当に可愛いな。理真は真彩似だから余計に可愛い」
「もう、理仁さんったら……」
「成長するにつれて、ついうるさく言っちまいそうだな、口煩く言って嫌われねぇように気をつけねーと」
「大丈夫ですよ、理真はきっと、お兄ちゃんの事もパパの事も大好きって言うような子になりますから」
「そうだといいな」
真彩のその言葉通り、成長した理真は「お兄ちゃんとパパの事が大好き」が口癖の女の子になるのだけど、
それはまだ少し、先のお話――。
―END―
朔太郎は保育士の資格を取得した事を生かして、人手不足の日は皇保育園の保育士としての仕事をこなす日々も増えていた。
それでも、やはり鬼龍組組員として理仁の役に立ちたい彼は、真彩や悠真の送迎を出来る限り担当していく。
翔太郎は相変わらず理仁の右腕としてサポート役に徹しているものの、最近では真面目で寡黙な彼に、女性の影がちらついているという噂がちらほら。
それは果たして任務の為なのか、それとも……。
その他の組員たちも、理仁を助け、鬼龍組を東区域一の組織となれるよう日々自分の任務をこなしていた。
そして理真は、
「理真はもうすぐハイハイ出来ちゃうかもしれませんね」
「ああ、最近よく動いているな。成長が早いから、常に目が離せねぇな」
「本当に。何だかあっという間に何でも出来るようになってしまいそうですね」
寝返りやおすわり、ずりばいなんかも理真は他の子よりいくらか早く、最近では少し目を離した隙にずりばいで動いていて真彩を驚かせているせいか、平日はいつも気が抜け無い。
そんな中でも悠真が良いお兄ちゃんなだけあって、休みの日はいつも妹の傍で一緒に遊んであげたり絵本を読み聞かせていたりするので、休日だけは真彩も安心して家事をこなせるのだ。
家事を終えて理真と悠真の居る部屋へ戻ってくると、理仁が部屋の前に立っている。
「理仁さん……何して――」
そんな理仁を不思議に思った真彩が声を掛けるも、口に人差し指を当てて黙るようにという仕草を見せた彼を前に思わず自身の口を塞ぐ。
そして、部屋の襖の前に立つと、中から悠真の声が聞こえて来た。
「りーま、早くいっぱいあそべるようになってねー! おしゃべりもたくさんしたいねー! お兄ちゃんがいろんなこと、おしえてあげるからね!」
それは理真相手に悠真が話し掛けているもので、いつも自分の事を“悠真”と言っているのに理真の前では“お兄ちゃん”と言っているという新たな発見が出来た真彩と理仁。
そんな微笑ましい場面に出会して良かったと思いながら、暫く二人にしようと隣の部屋に入って行った。
「悠真、本当に理真の事が大好きで、何だか嬉しいです」
「理真が成長するにつれて理真自身も悠真を好きになるだろうから、相思相愛だな」
「ふふ、確かに。理真もきっと、お兄ちゃん大好きっ子になりますよね」
真彩は悠真が理真を大切に思ってくれている事が本当に本当に嬉しかった。
お腹の中に赤ちゃんがいると知って悲しむ悠真を見た時は、やっぱり兄妹なんて作っては駄目なのかと思ったし、もっと成長して理仁との血の繋がりについて知った時、理真は理仁が本当の父親だけど自分は違う、自分の居場所は無い……そんな疎外感を感じないかという不安がやはり心の片隅にあったものの、理仁は悠真にも理真にも変わらない愛を注いでくれるし、それを悠真も絶対感じていると信じているから、いつしかそんな不安も消えていた。
「理仁さん」
「ん?」
「……私、四人家族になれて、本当に良かったって思ってます」
「俺もだ。悠真も理真も可愛いし愛おしい存在だ。真彩と同じくらい愛してる。これからは、もっと良い父親にならねーとな」
「理仁さん……。理仁さんは今でも充分、良い父親ですよ?」
「いや、全然だ。悠真や理真にとって尊敬される父親になりてぇけど、俺は組織の人間だし、抗争が起きれば、子供たちにも迷惑をかけちまう。そうならねぇように、組織の治安を良くしていかねぇとな」
「無理だけは、しないでくださいね?」
「分かってる。お前たちを悲しませるような事だけは、しねぇから」
不安そうな表情を浮かべた真彩の肩を抱いた理仁はそのまま自身の腕の中へ彼女の身体を抱き締める。
「しかし、子供ってのは本当に可愛いな。理真は真彩似だから余計に可愛い」
「もう、理仁さんったら……」
「成長するにつれて、ついうるさく言っちまいそうだな、口煩く言って嫌われねぇように気をつけねーと」
「大丈夫ですよ、理真はきっと、お兄ちゃんの事もパパの事も大好きって言うような子になりますから」
「そうだといいな」
真彩のその言葉通り、成長した理真は「お兄ちゃんとパパの事が大好き」が口癖の女の子になるのだけど、
それはまだ少し、先のお話――。
―END―
11
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ヤクザの組長は随分と暇らしい
海野 月
恋愛
キャバクラでバイトするリカ
店に来たヤクザの組長である中井律希のテーブルにつかされた
目当ての女の接客じゃないことに面倒くさそうな態度だったこの男。それがどうして――
「リカちゃん。俺の女になって」
初めての彼氏がヤクザなんて絶対にごめんだ!
汚い手も使いながらあの手この手で迫ってくる中井を躱し、平和な日常を取り戻そうとあがくストーリー
虚弱なヤクザの駆け込み寺
菅井群青
恋愛
突然ドアが開いたとおもったらヤクザが抱えられてやってきた。
「今すぐ立てるようにしろ、さもなければ──」
「脅してる場合ですか?」
ギックリ腰ばかりを繰り返すヤクザの組長と、治療の相性が良かったために気に入られ、ヤクザ御用達の鍼灸院と化してしまった院に軟禁されてしまった女の話。
※なろう、カクヨムでも投稿
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
お前の全てを奪いたい【完】
夏目萌
恋愛
面倒臭がりで女に興味の無いNo.1ホストと、お人好しで一途な鈍臭い新人キャバ嬢が出逢い、お互いに初めて本気の『好き』を知る、ちょっと大人なラブストーリー。
《――これ程までに人を好きになれるなんて思わなかった。この出逢いはきっと運命》
※別名義にて掲載していたものを改稿して公開し直しています。この小説はあくまでもフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
お隣さんはヤのつくご職業
古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。
残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。
元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。
……え、ちゃんとしたもん食え?
ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!!
ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ
建築基準法と物理法則なんて知りません
登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。
2020/5/26 完結
ハイスペミュージシャンは女神(ミューズ)を手放さない!
汐瀬うに
恋愛
雫は失恋し、単身オーストリア旅行へ。そこで素性を隠した男:隆介と出会う。意気投合したふたりは数日を共にしたが、最終日、隆介は雫を残してひと足先にった。スマホのない雫に番号を書いたメモを残したが、それを別れの言葉だと思った雫は連絡せずに日本へ帰国。日本で再会したふたりの恋はすぐに再燃するが、そこには様々な障害が…
互いに惹かれ合う大人の溺愛×運命のラブストーリーです。
※ムーンライトノベルス・アルファポリス・Nola・Berry'scafeで同時掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる