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プロローグ
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朝、スマホから聞こえてくるメッセージの通知音で目が覚めた私は、それを開くと共に口から盛大な溜め息が漏れ出ていた。
「はあ……、またなの?」
送り主は【瀬尾 直倫】。
私よりも二つ年上の二十八歳で、手短に関係を紹介するなら【元彼氏】。
彼とは一年程前に別れた。
原因は彼の浮気。
勿論、彼の方から別れを告げて来た。
要約すると捨てられたのだ、私は。
そんな元カレさんが何故私にメッセージを送って来たのかというと、話は約三ヶ月程前に遡る――。
「綺咲?」
「……直倫……」
給料日の仕事終わり、春も終わりに近付いてそろそろ夏服が欲しくなった私は久しぶりに買い物でもしようと駅ビルに立ち寄っていた。
そんな帰りの事、ビルを出て駅のホームへ向かって歩いている最中、偶然直倫と鉢合わせた。
浮気した挙句に向こうから振ったくせに、それすらも忘れているのか普通に声掛けてくる辺り信じられないし、無神経にも程があると思った。
それでも、事を荒立てたく無かった私は怒りやモヤモヤを我慢して作り笑顔を浮かべながら、「久しぶりだね」と一言口にした。
その時は軽く世間話をした程度で別れたのだけど、それから数日が経った頃、友達から《直倫くんとヨリを戻したがってるって本当なの?》という不可解なメッセージが送られて来た事で、平穏だった私の日常生活は音を立てて崩れていったのだ。
その友達は直倫とSNSで繋がりがあって、話によると直倫が私と再会した事を書いていた他、その際にヨリを戻したがっているようだったとか有りもしないデタラメを書いていたというもの。
私が浮気されて捨てられた事を知っている子だったから不思議に思いメッセージをくれたみたいで、それを聞いた私はすぐさま友達から直倫のアカウントを教えてもらって抗議のメッセージを送ったのだけど……それは全くの逆効果へとなってしまう。
私からメッセージを送った事で更にデタラメを書いていく直倫。
その内容に反論してみたものの類は友を呼ぶという言葉は侮れないようで、直倫のフォロワーの殆どが皆私の言う事よりも直倫の話を信じてしまっている状況だった。
何を言っても無駄、どうせ嘘なのだから構わなければいいし、その内飽きるだろう。
そう悟った私はSNSのアカウントを削除して再び直倫との関わりを絶った。
だけど、この問題はそんなに単純なものでは無かったのだ。
飽きるどころか直倫の行動はエスカレートしていく。
「綺咲」
「直倫……何、してるの?」
「何って、お前を待ってたに決まってるだろ? きちんと話す時間を取ってやろうっていう俺の優しさだよ」
何故か彼は私の職場のすぐ側のカフェで私の事を待っていた。
正直、これには驚きよりも恐怖を感じた。
「話って……、私は別に話す事なんて何も無いけど?」
「何? 照れてんの? つーかお前からメッセージ送って来たくせにアカウント消すとか何なの? 俺の連絡先も相変わらずブロックしてるだろ? 不便だから解除しろよ」
「はあ? あのさ、ブロックするのは当然だよね? そもそも別れたのは直倫が浮気したせいだし、私よりも相手の子を選んだからじゃん。そんな終わり方なのにその後も連絡取りたいとか思う訳無いでしょ?」
「あー、はいはい、それは俺が悪かったよ。あの時はさ、俺もどうかしてたんだよなぁ。つーか、そもそもあの女に騙されたんだよ。本当、綺咲には悪かったと思ってる。これでも反省してるんだぜ?」
「何を今更。っていうかこの前も言ったと思うけど、私にヨリを戻すつもりは微塵も無いんですけど?」
「そういうのいいから。いい加減素直になれよ。そうやって可愛げないから他の女にふらついたんだぜ? 言っとくけど、俺が浮気したのはお前にも非があったんだよ」
何を言っても聞く耳を持たないどころか、浮気したのは私にも原因があるとか言ってくるし、何故か私がヨリを戻したがっている体で話は進められていく。
「はあ……、またなの?」
送り主は【瀬尾 直倫】。
私よりも二つ年上の二十八歳で、手短に関係を紹介するなら【元彼氏】。
彼とは一年程前に別れた。
原因は彼の浮気。
勿論、彼の方から別れを告げて来た。
要約すると捨てられたのだ、私は。
そんな元カレさんが何故私にメッセージを送って来たのかというと、話は約三ヶ月程前に遡る――。
「綺咲?」
「……直倫……」
給料日の仕事終わり、春も終わりに近付いてそろそろ夏服が欲しくなった私は久しぶりに買い物でもしようと駅ビルに立ち寄っていた。
そんな帰りの事、ビルを出て駅のホームへ向かって歩いている最中、偶然直倫と鉢合わせた。
浮気した挙句に向こうから振ったくせに、それすらも忘れているのか普通に声掛けてくる辺り信じられないし、無神経にも程があると思った。
それでも、事を荒立てたく無かった私は怒りやモヤモヤを我慢して作り笑顔を浮かべながら、「久しぶりだね」と一言口にした。
その時は軽く世間話をした程度で別れたのだけど、それから数日が経った頃、友達から《直倫くんとヨリを戻したがってるって本当なの?》という不可解なメッセージが送られて来た事で、平穏だった私の日常生活は音を立てて崩れていったのだ。
その友達は直倫とSNSで繋がりがあって、話によると直倫が私と再会した事を書いていた他、その際にヨリを戻したがっているようだったとか有りもしないデタラメを書いていたというもの。
私が浮気されて捨てられた事を知っている子だったから不思議に思いメッセージをくれたみたいで、それを聞いた私はすぐさま友達から直倫のアカウントを教えてもらって抗議のメッセージを送ったのだけど……それは全くの逆効果へとなってしまう。
私からメッセージを送った事で更にデタラメを書いていく直倫。
その内容に反論してみたものの類は友を呼ぶという言葉は侮れないようで、直倫のフォロワーの殆どが皆私の言う事よりも直倫の話を信じてしまっている状況だった。
何を言っても無駄、どうせ嘘なのだから構わなければいいし、その内飽きるだろう。
そう悟った私はSNSのアカウントを削除して再び直倫との関わりを絶った。
だけど、この問題はそんなに単純なものでは無かったのだ。
飽きるどころか直倫の行動はエスカレートしていく。
「綺咲」
「直倫……何、してるの?」
「何って、お前を待ってたに決まってるだろ? きちんと話す時間を取ってやろうっていう俺の優しさだよ」
何故か彼は私の職場のすぐ側のカフェで私の事を待っていた。
正直、これには驚きよりも恐怖を感じた。
「話って……、私は別に話す事なんて何も無いけど?」
「何? 照れてんの? つーかお前からメッセージ送って来たくせにアカウント消すとか何なの? 俺の連絡先も相変わらずブロックしてるだろ? 不便だから解除しろよ」
「はあ? あのさ、ブロックするのは当然だよね? そもそも別れたのは直倫が浮気したせいだし、私よりも相手の子を選んだからじゃん。そんな終わり方なのにその後も連絡取りたいとか思う訳無いでしょ?」
「あー、はいはい、それは俺が悪かったよ。あの時はさ、俺もどうかしてたんだよなぁ。つーか、そもそもあの女に騙されたんだよ。本当、綺咲には悪かったと思ってる。これでも反省してるんだぜ?」
「何を今更。っていうかこの前も言ったと思うけど、私にヨリを戻すつもりは微塵も無いんですけど?」
「そういうのいいから。いい加減素直になれよ。そうやって可愛げないから他の女にふらついたんだぜ? 言っとくけど、俺が浮気したのはお前にも非があったんだよ」
何を言っても聞く耳を持たないどころか、浮気したのは私にも原因があるとか言ってくるし、何故か私がヨリを戻したがっている体で話は進められていく。
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