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「おいおい、感動の再会ってヤツか? そんなの気が早ぇんだよ。おい女! さっさと部屋へ戻ってろ。言う通りにしねぇと、どうなるか分かってんだろうな?」
「…………っ」
「詩歌ちゃん、大丈夫だから、今は部屋に戻ってて。必ず、ここから救い出すから」
「……分かり、ました」
黛に言われ部屋へ戻る事を躊躇っていたものの、郁斗にそう言われた事で頷き、後ろ髪引かれる思いで部屋へ戻って行く詩歌。
「随分余裕あるじゃねぇか? まるで勝算があるような言い方だな?」
「そりゃな、こんな所に単身乗り込んでくんだから、何も考え無しな訳ねぇだろ?」
「ははっ! 面白ぇ! ならその考えとやらを是非聞かせて欲しいなぁ」
「そんなの、直に分かる事だ」
お互い拳銃を向けたまま、会話を続けていく。
部屋に戻った詩歌は郁斗のその言葉に、根拠は無いものの確実な勝算があるのだと密かに感じていた。
そして、自分の身は自分で守ろうと、黛が隠し持っている他の銃をクローゼット奥にしまってあった箱から取り出し手にした。
これは詩歌が眠っている時に黛がクローゼットを漁っていたのだが、その物音で詩歌は目を覚ましていて、気付かれないよう寝たフリをしながら様子を窺い、隠し場所を覚えていたのだ。
ただ、銃を手にしたところで詩歌に扱えるはずもないのだが、もしもの時の保険として手にしていようと思い震える手で握っていた。
郁斗と黛は互いの出方を待っているらしく、睨み合ったまま動かない。
けれど、これこそが郁斗の狙いだった。
ここへ来る直前恭輔から連絡があり、黛の追放処分が正式に下された事を知った。
それなので神咲会をはじめ、各組織にも協力を仰ぎ、黛を確保する為このマンションを包囲するよう頼んでいた。
それこそ黛に気付かれないよう慎重に。
そして、もうそろそろ全ての準備が整うだろうという頃合を見計らった郁斗は、
「黛、そろそろ終わりにしようぜ」
そう口にしながら、構えていた銃を床に置いた。
「何の真似だ?」
「俺に戦う意思はねぇって事だよ」
「はあ?」
「なぁ、詩歌の傍に行ってもいいか?」
「訳分からねぇよ。何なんだ? 何を企んでやがる?」
「別に、何も。ただ、詩歌の傍に居たいだけだ。沢山、不安にさせたし、辛い思いもさせたからな。少しでも安心させてやりてぇんだよ。なあ、いいだろ? 俺は今、丸腰だ。何も出来はしねぇよ」
「お前の事だ、信用出来ねぇな」
「俺は何もしない。怪しい動きをすれば、すぐに俺を撃てばいいだろ?」
郁斗が何を企んでいるのか怪しむ黛だが、詩歌の居る部屋に窓はあるもののベランダ側でもなければこの部屋は十階なので飛び降りる事も出来ない。よって逃げ場は無いので一緒にしても問題無いと判断したのか、
「まあ良い。但し、少しでも怪しい動きをすれば撃ち殺す。お前じゃなくて、女をな」
「分かった」
詩歌の傍に行く事を許可した黛は拳銃を郁斗に向けたまま、詩歌の居る部屋へ入ると、
「おい女! テメェ何持ってやがる!?」
銃を握っている詩歌を目にし、再び怒りを露わにする。
「やっ! こ、来ないで……!!」
「詩歌ちゃん!」
これには郁斗も驚き、彼女に駆け寄ろうとするも黛に制されてしまう。
「動くな!! 夜永、お前も動くな。おい女、それを置け! 今すぐ置け!! でないと撃つぞ!」
これまで受けた恐怖から、身を守りたい一心の詩歌は震える手で銃を黛へ向けている。
「詩歌ちゃん、それを置いて。大丈夫だから。俺が今、傍に行くから。だから、それを置いて、早く」
けれど郁斗の言葉で少しだけ落ち着きを取り戻したのか、言われた通り床に銃を置いた。
「…………っ」
「詩歌ちゃん、大丈夫だから、今は部屋に戻ってて。必ず、ここから救い出すから」
「……分かり、ました」
黛に言われ部屋へ戻る事を躊躇っていたものの、郁斗にそう言われた事で頷き、後ろ髪引かれる思いで部屋へ戻って行く詩歌。
「随分余裕あるじゃねぇか? まるで勝算があるような言い方だな?」
「そりゃな、こんな所に単身乗り込んでくんだから、何も考え無しな訳ねぇだろ?」
「ははっ! 面白ぇ! ならその考えとやらを是非聞かせて欲しいなぁ」
「そんなの、直に分かる事だ」
お互い拳銃を向けたまま、会話を続けていく。
部屋に戻った詩歌は郁斗のその言葉に、根拠は無いものの確実な勝算があるのだと密かに感じていた。
そして、自分の身は自分で守ろうと、黛が隠し持っている他の銃をクローゼット奥にしまってあった箱から取り出し手にした。
これは詩歌が眠っている時に黛がクローゼットを漁っていたのだが、その物音で詩歌は目を覚ましていて、気付かれないよう寝たフリをしながら様子を窺い、隠し場所を覚えていたのだ。
ただ、銃を手にしたところで詩歌に扱えるはずもないのだが、もしもの時の保険として手にしていようと思い震える手で握っていた。
郁斗と黛は互いの出方を待っているらしく、睨み合ったまま動かない。
けれど、これこそが郁斗の狙いだった。
ここへ来る直前恭輔から連絡があり、黛の追放処分が正式に下された事を知った。
それなので神咲会をはじめ、各組織にも協力を仰ぎ、黛を確保する為このマンションを包囲するよう頼んでいた。
それこそ黛に気付かれないよう慎重に。
そして、もうそろそろ全ての準備が整うだろうという頃合を見計らった郁斗は、
「黛、そろそろ終わりにしようぜ」
そう口にしながら、構えていた銃を床に置いた。
「何の真似だ?」
「俺に戦う意思はねぇって事だよ」
「はあ?」
「なぁ、詩歌の傍に行ってもいいか?」
「訳分からねぇよ。何なんだ? 何を企んでやがる?」
「別に、何も。ただ、詩歌の傍に居たいだけだ。沢山、不安にさせたし、辛い思いもさせたからな。少しでも安心させてやりてぇんだよ。なあ、いいだろ? 俺は今、丸腰だ。何も出来はしねぇよ」
「お前の事だ、信用出来ねぇな」
「俺は何もしない。怪しい動きをすれば、すぐに俺を撃てばいいだろ?」
郁斗が何を企んでいるのか怪しむ黛だが、詩歌の居る部屋に窓はあるもののベランダ側でもなければこの部屋は十階なので飛び降りる事も出来ない。よって逃げ場は無いので一緒にしても問題無いと判断したのか、
「まあ良い。但し、少しでも怪しい動きをすれば撃ち殺す。お前じゃなくて、女をな」
「分かった」
詩歌の傍に行く事を許可した黛は拳銃を郁斗に向けたまま、詩歌の居る部屋へ入ると、
「おい女! テメェ何持ってやがる!?」
銃を握っている詩歌を目にし、再び怒りを露わにする。
「やっ! こ、来ないで……!!」
「詩歌ちゃん!」
これには郁斗も驚き、彼女に駆け寄ろうとするも黛に制されてしまう。
「動くな!! 夜永、お前も動くな。おい女、それを置け! 今すぐ置け!! でないと撃つぞ!」
これまで受けた恐怖から、身を守りたい一心の詩歌は震える手で銃を黛へ向けている。
「詩歌ちゃん、それを置いて。大丈夫だから。俺が今、傍に行くから。だから、それを置いて、早く」
けれど郁斗の言葉で少しだけ落ち着きを取り戻したのか、言われた通り床に銃を置いた。
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