優しい彼の裏の顔は、、、。【完】

夏目萌

文字の大きさ
70 / 90
STORY7

5

しおりを挟む
 一方の詩歌は、目を覚ますと別の部屋で黛が酷く荒れている声が聞こえて来た事で、恐怖から身を縮こまらせていた。

「クソっ!  迅の奴!  バックレやがった!  アイツ、ただじゃおかねぇ!!」

 電話を掛けてから暫く、再度迅に電話を掛けた黛だったが、既に迅自らスマホを壊してしまったせいで繋がらなくなっている事に酷く腹を立てていた。

 そんな事とは知らない詩歌はただ、この部屋に入って来ない事だけを願っていたのだけど、

「っ!!」

 バンッと大きな音を立ててドアが開いたと思ったら、怒りに狂っている黛が詩歌の居る部屋に入って来た。

「……何だぁ、その目は?」

 そして、怯える詩歌に近付く黛。

「……っ」
「何なんだよ、その目はぁ!!」
「きゃっ!!」

 詩歌が何かした訳では無いものの、怒りで我を忘れている黛には正常な判断が出来ないのか、反発しているように見えた詩歌のすぐ横に拳を飛ばすと、彼女が背にしていた壁を殴り付ける。

「どいつもこいつも馬鹿にしやがってぇ!!」
「嫌っ、止めてっ」

 そして嫌がる詩歌の腕を掴み上げた黛は強引に立たせると、すぐ側のベッドに押し倒した。

「や、やだ……」
「嫌がるなって言ったよなぁ?」
「それは……あの時だけじゃ……」
「ああ?  んな訳ねぇだろうが!  ずっとだよ!  嫌がるならいいぜ?  今すぐ夜永をここへ呼び寄せるか?  見られながらされてぇのかよ?  なぁ?」
「嫌っ……もう、やだっ!」

 上から押さえつけられて動きを封じられた詩歌が涙を浮かべて声を上げた、その時、ピンポーンと来客を知らせるインターホンの音が鳴り響く。

「何だ?」

 その音に面倒そうな顔をする黛。

 もしかしたらもっと声を上げれば外へ届くかもしれないと詩歌が声を上げかけるも、

「た、助け――」
「おい、黙れ。」
「んんっ!!」

 すぐに口を手で覆われてしまう。

 そして、再びインターホンが鳴った事で相手は何か用があると感じた黛は詩歌に、

「いいか?  声を上げたきゃ上げればいい。けどな、お前が声を上げれば今来てる誰かはお前のせいで……これの犠牲になる」

 そう告げながら、懐に隠していた拳銃を取り出した。

「それでも良ければ大声を出して助けを求めろよ」

 黛のその言葉に項垂れる詩歌。他人を犠牲にして自分が助かる事を選ばないと分かっているのか、呆然とする彼女をよそにカメラで相手の姿を確認すると、そこには大手宅配業者の格好をした男が映っていた。

 帽子を目深にかぶっていて表情までは確認出来ず、黛は怪しみながらボタンを押して応対する。

「何だ?」
『黛様に、周藤すとう  じん様よりお届け物です』
「迅から?  今開ける」

 届け物が迅からという事が気になった黛は拳銃を手にしたまま玄関へと歩いて行った。

 詩歌は声を上げて助けを求めたいと思うも、それをした事によって宅配業者の人の命が奪われてしまうのならばそれは出来ないと唇を噛む。

 だけど、黛は詩歌が声を出そうが出すまいが、どのみちこの宅配業者を襲って部屋に引き入れるつもりだった。

 詩歌を脅す材料には何かが必要だと考えていたから。

 拳銃を構えながら玄関前にやって来た黛は鍵を開け、ドアノブに手を掛ける。

 そして、扉を開いて開けた、次の瞬間――

 男に拳銃を突きつけようとした黛同様、宅配業者の男もまた、黛に向かって拳銃を向けていたのだ。

「お前……何でここに?」
「ここじゃ人目につく。ひとまず中へ入れてくれ」
「…………ッチ。入れよ」

 黛は忌々しそうな表情を浮かべながら、相手の男を中へ招き入れる。

「もう一度聞く、どうしてお前がここに居るんだよ――夜永」

 そう、黛の言葉通り、この部屋を訪れて来たのは宅配業者なんかではなく、宅配業者に扮した郁斗だったのだ。

「お前は既に気付いてんじゃねぇのか?  悪いが、迅は買収させてもらった」

 郁斗の声が聞こえた瞬間、詩歌は震える身体でベッドを降り、ゆっくり歩いて部屋を出る。

 そして、

「……郁斗……さん……」
「詩歌ちゃん……」

 男物なのか、大きめのTシャツ一枚だけを身に付けた詩歌が姿を現し、ようやく二人は再会する事が出来たのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

愛し愛され愛を知る。【完】

夏目萌
恋愛
訳あって住む場所も仕事も無い神宮寺 真彩に救いの手を差し伸べたのは、国内で知らない者はいない程の大企業を経営しているインテリヤクザで鬼龍組組長でもある鬼龍 理仁。 住み込み家政婦として高額な月収で雇われた真彩には四歳になる息子の悠真がいる。 悠真と二人で鬼龍組の屋敷に身を置く事になった真彩は毎日懸命に家事をこなし、理仁は勿論、組員たちとの距離を縮めていく。 特に危険もなく、落ち着いた日々を過ごしていた真彩の前に一人の男が現れた事で、真彩は勿論、理仁の生活も一変する。 そして、その男の存在があくまでも雇い主と家政婦という二人の関係を大きく変えていく――。 これは、常に危険と隣り合わせで悲しませる相手を作りたくないと人を愛する事を避けてきた男と、大切なモノを守る為に自らの幸せを後回しにしてきた女が『生涯を共にしたい』と思える相手に出逢い、恋に落ちる物語。 ※ あくまでもフィクションですので、その事を踏まえてお読みいただければと思います。設定等合わない場合はごめんなさい。また、実在の人物・団体等とは一切関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

処理中です...