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さくら1st写真集 編
さくら1st写真集編 2〜お蔵入り?〜
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9月の初め、かっきーが長めの夏休みを取ることを発表した。
体調が万全とはいえない中でツアーを乗り切ることになり、無理していたんだと思う。
だから、かっきーの休養発表に私は少し安心していた。
かっきーの真面目な性格からして、仕事のことを完全に忘れるなんて出来ないかもしれない。
それでも、ゆっくりと身体を休めてほしいと心から願っていた。
かっきーは「お休み中でも、さくちゃんはいつでも連絡して」って言ってくれたけど、どうしても遠慮してしまう。
私は私で「お休み中になにかあればすぐ行くから、遠慮しないでね」と言ってあったけど、かっきーも同じように遠慮しがちなのは分かっていた。
きっと「さくちゃんは写真集のPRで忙しいだろうし」とか「私のお休みに付き合わせるのもわるいかな」とか、考えてるんだろうな。
そんな理由から、私たちが連絡を取る頻度は少しだけ減ってしまっていた。でも、たまにはこういう期間があってもいいと思う。
だから、夜に部屋でくつろいでいた時にかっきーからいきなり着信があったのは正直びっくりした。
遥香「さくちゃん、いきなりごめんね…私、さくちゃんに謝らなきゃいけないことがあって…」
電話のかっきーは、今にも泣き出しそうな声をしていた。
さくら「かっきー、どうしたの?!」
電話でかっきーのこんな声を聞いたのは、付き合ってから初めてかもしれない。
なにがあったんだろう…
「えっと…今日ね、ちょっとだけ会社に行く用事があって。そこで、さくちゃんの写真集を見せてもらうことになったの」
そういえば、もう本になった形の写真集が出来ているんだった。スタッフさんやメンバーが読めるように、会社には何冊か置いてあるんだろう。
(かっきーが、私の写真集を読んでくれたんだ…)
どんな感想を持ってくれたか気になって、ドキッとする。ただ、いまは落ち着いてかっきーの話を聞くために、平静を装ってみる。
「かっきー、もう読んでくれたの?ありがとう」
「ううん、私こそ読ませてもらってありがとうだよ。それで、読んでる様子を撮影してもらえることになったんだけど…私、ちょっとミスしちゃったっていうか、やらかしちゃったっていうか…うぅ~……」
よっぽど言いにくいことなのかな。
言葉を詰まらせてしまうかっきーを落ち着かせながら少しずつ話をしてもらうと、頭の中で内容を整理していく。
どうやら、
写真集を初めて読んだリアクションを撮ってもらっていたけど、ちょっとしたトラブルがあって今日の撮影は中止になった、ってことらしい。かっきーが言う"ミス"は具体的には訊かなかったけど、NGでも出してしまったんだろう。
挽回するためにかっきー自身は日を改めて撮り直すよう希望したけど、マネージャー陣で検討した結果、残念ながら撮影自体が見送られることに決まって。
ついさっき、マネージャーさんからかっきーへ撮影中止の連絡が入ったみたい。
途中まで撮影していた動画は、テレビ局でたまに聞く"お蔵入り"というやつになるんだろう。
撮影中止の判断が下されたのは、きっとかっきーの体調を最優先に考えた結果だと思う。そもそも休養中のメンバーを撮影するのもどうかなと思うし。
それに、たぶんああいう動画は初めて読んだリアクションを撮りたいはずだから。撮り直しが出来ないのは、しょうがないのかもしれない。
(何かトラブルに巻き込まれたのかと思ったけど、そういうわけじゃないんだ…よかった…)
かっきーはかなり落ち込んでいるみたいだったけど、状況を理解して私は安心した。
それに、話を聞く限りかっきーが責任を感じる必要はない。きっと誰のせいでもないはず。
「私の写真集が出た時、さくちゃんには読んでみた動画に出てもらったし、そのお返しがしたかったの。さくちゃんの写真集の魅力を少しでも広めたいって思って…」
「そんな、気にしないで。かっきーがそう思ってくれるだけで十分嬉しいし。それに、和ちゃんと一緒に表紙の動画には出てくれてるじゃん」
「う~ん、そうだけど…」
8月には表紙を見てリアクションする動画が公開されていたし、数日前には裏表紙にコメントしてくれるロングバージョンも追加されていたのを見たばかりだ。
「そうそう、そういえばあの動画のかっきー、和ちゃん相手にドヤ顔してて面白かった」
「うわ~、あれは恥ずかしいからさくちゃんにはあんまり見ないでほしいかも…」
「あと、ロングバージョンのほうの『ポニーテールが荒ぶっちゃう』ってなぁに?表現が独特過ぎるよ。ふふふ」
「ええー?私、そんなこと言ってた?っていうかさくちゃん、めっちゃ細かいところまで見てくれてるんだね」
「えへへ。だって、かっきーがコメントしてくれてるのが嬉しくて。何回か見ちゃった。だから、もう十分嬉しいの。かっきーにはたくさん嬉しいをもらってるから」
「さくちゃん、ありがとう…そう言ってもらえると少し楽になるよ……写真集、ほんとに素敵だったよ。感想、また直接伝えるからね」
「ありがと。かっきーも、無理しないでちゃんと休んでね」
「うん、そうする」
(よかった…少し元気になってくれたみたい)
あんまり長電話すると、かっきーを疲れさせてしまう。
そろそろ通話を切ろうとしたけど、その前に-ー
「あ、かっきー……えっと…」
「ん?どうしたの?」
「………だいすき…だよ?」
「…っ……!」
かっきーが息を飲む音だけ聞こえてきた。
いつもなら、電話で滅多にこんなこと言わないけど。久しぶりにかっきーの声を聴いたからかな。
私の気持ちを、いま伝えておきたい。そう思ったら、自然と口が動いた。
「わたしも…さくちゃん、だいすき……お休みが終わったら、またお泊まりしに行ってもいい?」
「うん、あたりまえじゃん。かっきーのお泊まりセット、うちにずっと置いてあるんだから」
今度こそおやすみをして、通話を切る。
久しぶりにかっきーの声を聞いて、想いを伝え合って。
胸の奥に、きゅぅっと込み上げてくるものを感じる。
(あぁ…かっきー……好き…大好き)
今夜は、かっきーを想いながらよく眠れそうだ。
寝る準備は済ませていた私は、そのまま部屋の電気を消す。
眠りに落ちていく中、かっきーの話の中でなぜか一つだけ気になったことを思い出していた。
(そういえば、今日の撮影で起きたトラブルって、なにがあったんだろう…?NGを出したくらいじゃ中止にはならないと思うけど……でも、まぁいいか、かっきーに、何事もなかった、なら……)
気になったとはいえ、眠りを妨げるほど引っかかったわけじゃない。
かっきーの声をもう一度思い出すと、私は穏やかな気持ちのまま眠りについた。
~続く~
体調が万全とはいえない中でツアーを乗り切ることになり、無理していたんだと思う。
だから、かっきーの休養発表に私は少し安心していた。
かっきーの真面目な性格からして、仕事のことを完全に忘れるなんて出来ないかもしれない。
それでも、ゆっくりと身体を休めてほしいと心から願っていた。
かっきーは「お休み中でも、さくちゃんはいつでも連絡して」って言ってくれたけど、どうしても遠慮してしまう。
私は私で「お休み中になにかあればすぐ行くから、遠慮しないでね」と言ってあったけど、かっきーも同じように遠慮しがちなのは分かっていた。
きっと「さくちゃんは写真集のPRで忙しいだろうし」とか「私のお休みに付き合わせるのもわるいかな」とか、考えてるんだろうな。
そんな理由から、私たちが連絡を取る頻度は少しだけ減ってしまっていた。でも、たまにはこういう期間があってもいいと思う。
だから、夜に部屋でくつろいでいた時にかっきーからいきなり着信があったのは正直びっくりした。
遥香「さくちゃん、いきなりごめんね…私、さくちゃんに謝らなきゃいけないことがあって…」
電話のかっきーは、今にも泣き出しそうな声をしていた。
さくら「かっきー、どうしたの?!」
電話でかっきーのこんな声を聞いたのは、付き合ってから初めてかもしれない。
なにがあったんだろう…
「えっと…今日ね、ちょっとだけ会社に行く用事があって。そこで、さくちゃんの写真集を見せてもらうことになったの」
そういえば、もう本になった形の写真集が出来ているんだった。スタッフさんやメンバーが読めるように、会社には何冊か置いてあるんだろう。
(かっきーが、私の写真集を読んでくれたんだ…)
どんな感想を持ってくれたか気になって、ドキッとする。ただ、いまは落ち着いてかっきーの話を聞くために、平静を装ってみる。
「かっきー、もう読んでくれたの?ありがとう」
「ううん、私こそ読ませてもらってありがとうだよ。それで、読んでる様子を撮影してもらえることになったんだけど…私、ちょっとミスしちゃったっていうか、やらかしちゃったっていうか…うぅ~……」
よっぽど言いにくいことなのかな。
言葉を詰まらせてしまうかっきーを落ち着かせながら少しずつ話をしてもらうと、頭の中で内容を整理していく。
どうやら、
写真集を初めて読んだリアクションを撮ってもらっていたけど、ちょっとしたトラブルがあって今日の撮影は中止になった、ってことらしい。かっきーが言う"ミス"は具体的には訊かなかったけど、NGでも出してしまったんだろう。
挽回するためにかっきー自身は日を改めて撮り直すよう希望したけど、マネージャー陣で検討した結果、残念ながら撮影自体が見送られることに決まって。
ついさっき、マネージャーさんからかっきーへ撮影中止の連絡が入ったみたい。
途中まで撮影していた動画は、テレビ局でたまに聞く"お蔵入り"というやつになるんだろう。
撮影中止の判断が下されたのは、きっとかっきーの体調を最優先に考えた結果だと思う。そもそも休養中のメンバーを撮影するのもどうかなと思うし。
それに、たぶんああいう動画は初めて読んだリアクションを撮りたいはずだから。撮り直しが出来ないのは、しょうがないのかもしれない。
(何かトラブルに巻き込まれたのかと思ったけど、そういうわけじゃないんだ…よかった…)
かっきーはかなり落ち込んでいるみたいだったけど、状況を理解して私は安心した。
それに、話を聞く限りかっきーが責任を感じる必要はない。きっと誰のせいでもないはず。
「私の写真集が出た時、さくちゃんには読んでみた動画に出てもらったし、そのお返しがしたかったの。さくちゃんの写真集の魅力を少しでも広めたいって思って…」
「そんな、気にしないで。かっきーがそう思ってくれるだけで十分嬉しいし。それに、和ちゃんと一緒に表紙の動画には出てくれてるじゃん」
「う~ん、そうだけど…」
8月には表紙を見てリアクションする動画が公開されていたし、数日前には裏表紙にコメントしてくれるロングバージョンも追加されていたのを見たばかりだ。
「そうそう、そういえばあの動画のかっきー、和ちゃん相手にドヤ顔してて面白かった」
「うわ~、あれは恥ずかしいからさくちゃんにはあんまり見ないでほしいかも…」
「あと、ロングバージョンのほうの『ポニーテールが荒ぶっちゃう』ってなぁに?表現が独特過ぎるよ。ふふふ」
「ええー?私、そんなこと言ってた?っていうかさくちゃん、めっちゃ細かいところまで見てくれてるんだね」
「えへへ。だって、かっきーがコメントしてくれてるのが嬉しくて。何回か見ちゃった。だから、もう十分嬉しいの。かっきーにはたくさん嬉しいをもらってるから」
「さくちゃん、ありがとう…そう言ってもらえると少し楽になるよ……写真集、ほんとに素敵だったよ。感想、また直接伝えるからね」
「ありがと。かっきーも、無理しないでちゃんと休んでね」
「うん、そうする」
(よかった…少し元気になってくれたみたい)
あんまり長電話すると、かっきーを疲れさせてしまう。
そろそろ通話を切ろうとしたけど、その前に-ー
「あ、かっきー……えっと…」
「ん?どうしたの?」
「………だいすき…だよ?」
「…っ……!」
かっきーが息を飲む音だけ聞こえてきた。
いつもなら、電話で滅多にこんなこと言わないけど。久しぶりにかっきーの声を聴いたからかな。
私の気持ちを、いま伝えておきたい。そう思ったら、自然と口が動いた。
「わたしも…さくちゃん、だいすき……お休みが終わったら、またお泊まりしに行ってもいい?」
「うん、あたりまえじゃん。かっきーのお泊まりセット、うちにずっと置いてあるんだから」
今度こそおやすみをして、通話を切る。
久しぶりにかっきーの声を聞いて、想いを伝え合って。
胸の奥に、きゅぅっと込み上げてくるものを感じる。
(あぁ…かっきー……好き…大好き)
今夜は、かっきーを想いながらよく眠れそうだ。
寝る準備は済ませていた私は、そのまま部屋の電気を消す。
眠りに落ちていく中、かっきーの話の中でなぜか一つだけ気になったことを思い出していた。
(そういえば、今日の撮影で起きたトラブルって、なにがあったんだろう…?NGを出したくらいじゃ中止にはならないと思うけど……でも、まぁいいか、かっきーに、何事もなかった、なら……)
気になったとはいえ、眠りを妨げるほど引っかかったわけじゃない。
かっきーの声をもう一度思い出すと、私は穏やかな気持ちのまま眠りについた。
~続く~
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