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さくら1st写真集 編
さくら1st写真集編 4〜幻の読んでみた動画 後編〜
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遥香『ではこれから、さくちゃんの写真集を見ていきたいと思いまーす。表紙と裏表紙は少し前に見せてもらってたんですけど、中身を見るのはこれが初めてです!えへへ、楽しみだなぁ』
私の写真集を両手に持ったかっきーが、カメラに向かって喋っている。
太陽みたいな笑顔に、白い歯が眩しい。
(私の写真集をこれから読むっていうだけで、こんな顔になってくれるんだ)
和三盆を舌に付けた通常版表紙もしっかりカメラに映してくれた後、中身を読み進めていく。
『かわいいねぇ』『あー、うんうん!さくちゃんのこの表情好き!』『やっぱりスタイルが抜群に良いですよね~』といった様子で、テンション高めでとにかく褒めちぎってくれるかっきー。
まさに、『写真集を読んでみた動画』のイメージ通りだ。
ただ、ページを読み進めていくと、なぜかかっきーの口数が減っていった。
代わりに『おぉ~…』とか『あぁ~…』とか、呻いてるみたいな声が漏れ始める。
(かっきー…すごく真剣に読んでくれてる…)
1ページずつ、じっくり見てくれている。恥ずかしさを感じつつも、私は嬉しかった。
でも、この動画のコンセプトは『発売前の写真集を読んでみたメンバーのリアクションや感想を見てもらう』だった。
カメラの死角から、見かねてマネージャーさんがカンペを出したらしい。
遥香『あっ、すみません!そうですよね、もっと写真集の魅力を伝えないとですね…』
たぶん「もう少し具体的な感想を」とか「写真集の中身をもっと伝えて」とか、そんな指示が出たんだろう。
そこからは、写真集で私が着た衣装や髪型に関するコメントが増えていった。
でもそれも一時的なもので、かっきーがまた写真集に没頭していくのが見ていて分かる。
口数が減ってきたし、それに、かっきーの目が…
なんていうんだろう。
私は、いや、私だけはあの目を知ってる気がする。
あの目をしたかっきーの前に、もし私が立ったら。
たぶん、だけど。
ベッドに押し倒されて、そのままどうされちゃうか分からない…
そんな目をしていた。
ということは、そろそろ水着姿や下着姿のページに差し掛かった頃だろうか。
(かっきーに見られてると思うと…なんか、身体が…)
熱量を持ったかっきーの視線で、身体が熱くなっていくみたいだ。
ちょうど同じタイミングで、動画の中のかっきーも様子が変わっていった。
顔が火照ったように赤みを帯びて、『これは…うぅ~…』『…あぁ…さくちゃん…こんな…あぁ~…』などと漏らしている。もはやカメラが回っていることすら忘れているようだった。
(もぅ、かっきー…またマネージャーさんに注意されちゃうよ…?)
そんな心配をしていた矢先だった。
マネ『…ん?…ちょっ…!かっきー!!?』
遥香『はいっ?!』
マネージャーさんの慌てたような声に反応して、かっきーは我に返ったらしい。
手元の写真集を食い入るように見ていた顔を上げると、鼻から1本の赤い筋が伸びていた。
(えっ…?…え?!!かっきー…そんな…漫画みたいなこと…)
「興奮すると鼻血が出るというのは漫画でよく見られる表現だが、実際にはありえない」。
たしかそんな話を読んだことがあるけど、何事にも例外はあるってことらしい。
マネージャーさんがボックスティッシュを持ってかっきーに駆け寄っていく。
自分が鼻血を出しているとようやく気付いたかっきーは、なぜか写真集を両手で持ったまま高く掲げている。
マネ『ほらかっきー、血拭くからこっち向いて……って、なんでさっきからバンザイしてるの?』
遥香『えっ、だって…私の鼻血でさくちゃんを汚すわけには……あっ、もし汚しちゃってたら私これ買い取りますから!どっちみち買うつもりだったので!!』
マネ『あーもう、そんな大きい声出したらまた興奮して血が止まらないでしょ!ちょっと落ち着いて!ほら、写真集は一旦こっちで預かるから』
持っていた写真集がスタッフさんへ渡ったところで、映像は終わっていた。メンバーが鼻血を出すような映像はさすがにメイキングにも使えないから、スタッフさんが録画を止めたんだろう。
タブレットの画面には、宝物を取り上げられた子供のように名残惜しそうに写真集を見つめるかっきーが映っていた。
~続く~
私の写真集を両手に持ったかっきーが、カメラに向かって喋っている。
太陽みたいな笑顔に、白い歯が眩しい。
(私の写真集をこれから読むっていうだけで、こんな顔になってくれるんだ)
和三盆を舌に付けた通常版表紙もしっかりカメラに映してくれた後、中身を読み進めていく。
『かわいいねぇ』『あー、うんうん!さくちゃんのこの表情好き!』『やっぱりスタイルが抜群に良いですよね~』といった様子で、テンション高めでとにかく褒めちぎってくれるかっきー。
まさに、『写真集を読んでみた動画』のイメージ通りだ。
ただ、ページを読み進めていくと、なぜかかっきーの口数が減っていった。
代わりに『おぉ~…』とか『あぁ~…』とか、呻いてるみたいな声が漏れ始める。
(かっきー…すごく真剣に読んでくれてる…)
1ページずつ、じっくり見てくれている。恥ずかしさを感じつつも、私は嬉しかった。
でも、この動画のコンセプトは『発売前の写真集を読んでみたメンバーのリアクションや感想を見てもらう』だった。
カメラの死角から、見かねてマネージャーさんがカンペを出したらしい。
遥香『あっ、すみません!そうですよね、もっと写真集の魅力を伝えないとですね…』
たぶん「もう少し具体的な感想を」とか「写真集の中身をもっと伝えて」とか、そんな指示が出たんだろう。
そこからは、写真集で私が着た衣装や髪型に関するコメントが増えていった。
でもそれも一時的なもので、かっきーがまた写真集に没頭していくのが見ていて分かる。
口数が減ってきたし、それに、かっきーの目が…
なんていうんだろう。
私は、いや、私だけはあの目を知ってる気がする。
あの目をしたかっきーの前に、もし私が立ったら。
たぶん、だけど。
ベッドに押し倒されて、そのままどうされちゃうか分からない…
そんな目をしていた。
ということは、そろそろ水着姿や下着姿のページに差し掛かった頃だろうか。
(かっきーに見られてると思うと…なんか、身体が…)
熱量を持ったかっきーの視線で、身体が熱くなっていくみたいだ。
ちょうど同じタイミングで、動画の中のかっきーも様子が変わっていった。
顔が火照ったように赤みを帯びて、『これは…うぅ~…』『…あぁ…さくちゃん…こんな…あぁ~…』などと漏らしている。もはやカメラが回っていることすら忘れているようだった。
(もぅ、かっきー…またマネージャーさんに注意されちゃうよ…?)
そんな心配をしていた矢先だった。
マネ『…ん?…ちょっ…!かっきー!!?』
遥香『はいっ?!』
マネージャーさんの慌てたような声に反応して、かっきーは我に返ったらしい。
手元の写真集を食い入るように見ていた顔を上げると、鼻から1本の赤い筋が伸びていた。
(えっ…?…え?!!かっきー…そんな…漫画みたいなこと…)
「興奮すると鼻血が出るというのは漫画でよく見られる表現だが、実際にはありえない」。
たしかそんな話を読んだことがあるけど、何事にも例外はあるってことらしい。
マネージャーさんがボックスティッシュを持ってかっきーに駆け寄っていく。
自分が鼻血を出しているとようやく気付いたかっきーは、なぜか写真集を両手で持ったまま高く掲げている。
マネ『ほらかっきー、血拭くからこっち向いて……って、なんでさっきからバンザイしてるの?』
遥香『えっ、だって…私の鼻血でさくちゃんを汚すわけには……あっ、もし汚しちゃってたら私これ買い取りますから!どっちみち買うつもりだったので!!』
マネ『あーもう、そんな大きい声出したらまた興奮して血が止まらないでしょ!ちょっと落ち着いて!ほら、写真集は一旦こっちで預かるから』
持っていた写真集がスタッフさんへ渡ったところで、映像は終わっていた。メンバーが鼻血を出すような映像はさすがにメイキングにも使えないから、スタッフさんが録画を止めたんだろう。
タブレットの画面には、宝物を取り上げられた子供のように名残惜しそうに写真集を見つめるかっきーが映っていた。
~続く~
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