高校生のための世界史教室! ヨーロッパ史

秋澤えで

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5 ノルマン人の移動から商業ルネサンスまで

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「やってるかー?」
 「やってないかな。」
 「いや、やれよ。」
 「いや、もう世界史やる気になれない。そもそも世界史とか嫌いだし……。」
 「好き嫌いの問題じゃねぇだろ。」
 「勉強したくないーー!」
 「しろ!」



 「今日はしばらく放っておいたノルマン人についてだな。」
 「今さら八世紀とか……。」
 「仕方ないだろ。俺だってノルマン人とかヴァイキングよりヨーロッパやってる方が楽しいし!」


 「まずノルマン人な。最初こいつはスカンディナヴィア半島からユトランド半島に住んでたゲルマン人の一部、北方ゲルマンって呼ばれてた。八世紀後半からヴァイキングって自称して商業から海賊、略奪手広くやっていた。そしてまず九世紀にノルマン人はスラヴ人地域に侵入してきた。」
 「スラヴ系っていうと東ヨーロッパの方ゲルマン?」

 「ああ、スラヴに侵入してきたのはノルマン人の一部であるルーシ族。ルーシは船の漕ぎ手っていう意味で、ロシアの語源だ。ヴァイキングは底の薄い船を使って川を遡ったりしていたから、ヨーロッパ諸国も対応が追い付かず恐れていた。しかもこの時期は東方からはアヴァール人やマジャール人も侵入してきててんやわんや。862年ルーシ族の首長、リューリクがビザンツ帝国の上、スカンディナヴィア半島のすぐ下にノヴゴロド国を建国した。今で言うベラルーシのあたりだな。それから20年、882年ノヴゴロド公が南下してキエフ公国を建国。キエフは今のウクライナの首都でキエフ公国はロシアの元になった。ただルーシ族は少数だったから次第にスラヴ人と同化した。ここで一応ノルマン、ルーシ族の血は絶える。」
 「ビザンツ帝国の上にキエフ公国、ノヴゴロド国がある状態だね!」


 「次にフランクに侵入していったノルマン人な。911年にノルマン人の首長、ロロがセーヌ川下流にノルマンディー公国を建国した。フランク王国が三つに分裂したのが843年だから、この時の国は西フランク王国だな。建国っつてもパリの辺りのほんの少しだけだ。」


 「次、前回お前が聞いたアングロサクソン七王国、ブリタニアについてだ。」
 「やっと出てきた!」


 「まずはブリタニアの歴史からだ。紀元前一世紀、ブリタニアはローマのカエサルから支配されていた。それから約500年、アングロサクソン人がブリタニアに侵入。449年アングロサクソン七王国、ヘプターキーが成立した。そのあとずいぶん時間がかかったが、829年に七王国のウェセックス王、エグバートがイングランドを統一した。全盛期は848年即位、アルフレッド大王の時だ。法律や政治制度の整備がされた。なおアルフレッド大王はデーン人を数回撃退していた。」
 「デーン人って?今まで出てきてなかったよね?」

 「ああ、デーン人ってのはノルマン人の一部だ。ルーシ族とはまた違うノルマン人。こいつらは八世紀にユトランド半島にデンマーク王国を作った。」
 「デーン人だからデンマークって……安易。」

 「んで1016年、デーン人の王子クヌートがイングランドを征服した。この時にノルウェーも支配。でも1042年、アングロサクソン系のイングランドが復活した。それから1066年、ノルマン人の征服劇、ノルマンコンクェストが始まった。そして同年、ヘースティングズの戦いでノルマンディー公ウィリアムがイングランド軍を撃破。」
 「んん?イングランド王国って?」

 「クヌート王の死後、イングランドは一時的にデンマークから自立して、アングロサクソン系の王が就くイングランド王国として復活したんだ。まあヘースティングズの戦いで速攻潰されたがな。そしてノルマンディー公ウィリアムがウィリアム一世としてノルマン朝を建てた。以後ここイングランドはイギリスと明記される。」
 「へーじゃあデンマークとノルウェーとスウェーデンは同じ民族?」

 「ああ。デンマークが八世紀、ノルウェーが九世紀、スウェーデンが十世紀にノルマン人によって作られた。それからナポリ、シチリア半島を1130年にノルマン系のルッジェーロ二世が支配した。この支配したナポリ、シチリア部分、イタリアのブーツの踵のところに建国されたのが両シチリア王国だ。ここにはノルマン、ビザンツ、イスラームが共存する文化があった。」


 「じゃあ放っておいたノルマン人が片付いたところで、西ヨーロッパの商業に入るぞ。」




ー西ヨーロッパの商業ー


「ゲルマン人の移動の時、その動乱のせいで貨幣の価値は著しく下がった。だがその後の封建社会の安定から徐々に回復していった。ここで重要になるのが農奴の存在だが、日向、荘園には二つの土地の納め方があったよな?」
 「うん!領主直営地と農民保有地!領主直営地は賦役がかかってモチベーションとともに生産量が落ちる。農民保有地は貢納で余剰作物ができるくらいモチベーションが高い!」

 「頭の悪そうな回答ありがとう。だが正解だ。農民保有地で働く農奴は余剰生産物をもの同士で交換しあった。それから定期市に発展してここで貨幣経済が復活した。貨幣が出回るってことはそこを中心に街が成立するってことだ。」
 「なんだかんだ言ってもやっぱ経済を回すのは人数の多い一般市民だもんね。」

 「さらに十字軍のお陰で交通路が発達し、それに伴い地中海貿易が発展つまり遠くまで商売することができる遠隔地商業が発達した。自給自足的な農民中心の封建社会の崩壊。」
 「つまり農民中心から商業の中心の商人の回す社会だね。第四回十字軍の臭い……。」

 「地中海商業圏、北イタリア都市で行われたのが東方貿易、レヴァント貿易だ。ヴェネツィアやジェノヴァの開港都市でイスラームと貿易をしていた。香辛料や絹を輸入して、銀や毛織物を輸出した。内陸都市のフィレンツェ、ミラノでは金融業が栄えた。その代表がメディチ家だな。この急激な経済成長を商業の復活って呼ばれている。」

 「それから突然商業圏として栄えたのが北海バルト海を中心とした北ヨーロッパ商業圏だ。北ドイツ諸都市、ハンザ同盟の都市はリューベック、ハンブルク、ブレーメンで主に回されたのは海産物や穀物、毛皮とか生活用品だった。現在のベルギーやオランダのフランドル地方のガン、ブリュージュでは毛織物の生産が盛んになって、それに伴いイギリスからは羊毛の輸出が栄えた。さらに、そこら中で輸出入が盛んになるってことは、それまでの道のりにある内陸都市も栄える。それが内陸商業圏。地中海商業とドイツ海商業を結ぶ交通路。フランスではシャンパーニュ、定期市で繁栄した。南ドイツではアウクスブルクでは銀の輸出。アウクスブルクのフッガー家は金融業者として有名だ。フィレンツェのメディチ家とアウクスブルクのフッガー家、合わせて覚えとけよ?」

 「はーい。なんかもう、商人の天下だね。せっかく上がった国王の王権が下がりそうだね。」
 「ああまさにだ。商業が発展するということは都市が発展するってことだ。」


ー都市の自由自治権ー

「中世都市は厚い城壁に囲まれ、街道に通じる市門、教会、市を開くための広場があった。」
 「……うん?」
 「いや、教科書にあったから。なんで書いてあるかは知らん。」
 「さいでっか。」


 「中世都市はローマ帝政末期以来の司教座都市、カトリックの教会が置かれた都市な、それは常に領主の保護と支配を受けていたんだが商工業の発達で力をつけた都市は領主支配からの自由と自治を要求し始めた。11-12世紀所々の都市で領主から特許状を得て、自治権を獲得し始めた。この封建領主からの支配を受けない都市を自由都市っていう。イタリアにあるコムーネっていう都市は国王や封建領主から貴族や商人が自治権を獲得して周りの農村や小都市を併合して完全独立したんだ。神聖ローマでは皇帝から自治権を獲得して皇帝に直属して同等の地位が与えられる。神聖ローマでは帝国都市、自由都市という。ドイツには「都市の空気は自由する」という諺がある。」

 「ん?どう言うこと?」

 「農村にすむ農奴でも自由都市で366日以上その自由都市で過ごせば、身分や土地から解放されるんだ。つまり自由都市という空間は人を自由にさせたってことだ。」
 「でもさ、そこら中でその自由都市、帝国都市ができたら領主直営地や農民保有地から農奴がいなくなっちゃって賦役や貢納がなくなって封建領主は困るんじゃない?」

 「そう。だから国王や領主は圧力をかけて自由都市にさせない、行かないようにさせた。だが都市もそれで収まるわけがない。都市同盟を組んだんだ。」
 「都市同盟?」
 「都市同盟はいくつかの都市が集まって圧迫に対抗するためにくんだ同盟だ。有名なのはドイツのリューベックが中心のハンザ同盟と、ミラノ中心のロンバルディア同盟だ。」


 「それと栄えたのがどこの国でも通る都市の組織、ギルドだ。」
 「おおっ!冒険者ギルド!」

 「ゲームのやりすぎだ阿呆!!ギルドってのは商人や手工業者の同業組合のことだ!ヨーロッパでは商人ギルドと同職ギルドのツンフトの二つだ。商人ギルドでは商人の相互扶助と成員間の市場の独占、それから市政を独占していた。同職ギルドのツンフトでは商人ギルドに対抗した。これをツンフト闘争という。その後同職ギルドからも市政に参加するようになった。ただ参加できるのは親方のみ。この二つのギルド内では自由競争の禁止、加盟者以外の商売の禁止をしていた。たしかにそれだと皆平等であるが経済や技術の発展は望めない。」

 「マホメットなくしてシャルルマーニュなし、みたいな?」
 「へぇ、覚えてたか。まさにその状態だ。競争する相手がいるから発展するんだ。」
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