担任教師と温泉旅行

麻婆

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浴衣姿はサイコー

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「ふあ~」

 つけっぱなしのテレビを見るともなく眺めながら、耕平は緩みきった顔をしていた。

「こんなに幸せでいいのか、俺……」

 先程までの情交を反芻すると、どうしてもにやけてしまう。

 地元を離れることによって、ここまで開放的になれるとは思っていなかった。たまには人目を気にすることなくイチャイチャしたいな~、くらいの気持ちだったのだが、本当に来て良かった、と心の底から思う。

「先生があそこまで乱れてくれるとは思わなかったよな……」

 もともと渚は性的なことに関してはかなり奥手というか、淡白である。

 初めて結ばれた時は、処女でこそなかったが経験値、知識共に低レベルで、童貞だった耕平がリードしたくらいだった。

 それから半年ほどかけて、やっと受身一方ではなくなってきていたところで迎えた今回の旅行。旅の間に新しい扉の一枚でも開けたらいいな、程度に考えていたのだが、初日にして目標は大幅にクリアできたようだ。

「…にしても、長風呂だな……」

 ことが済んだ後、二人はそれぞれ宿の大浴場で汗を流すことにした。

 部屋付きの露天風呂があったので、耕平はそこに入るつもりで渚にもそう言ったのだが、まだ明るくて恥ずかしいし、大きいお風呂にも入りたいということで、ばらばらで風呂へ向かったのだった。

 耕平は身体を洗ったら申し訳程度に湯につかって、早々に上がって来たのだが、一時間以上経っても渚はいまだに上がって来ない。

「のぼせて倒れたりしてねえよな…」

 そんな心配が浮かんだあたりで、ようやく渚は戻ってきた。

「いいお湯だったね~」

 そう言いながら部屋に入ってきた渚を一目見て、耕平はぽかんと口を開けた。

 浴衣。

 こういった日本旅館では定番のコスチュームである。だから、衣装自体に目新しさがあるわけではない。ただ、渚の浴衣姿を見るのが初めてだったのだ。

(いい)

 その一語に尽きた。

 もともとスタイルのよい渚に浴衣はとてもよく似合っていた。新たな魅力再発見、といったところだ。

 全体的には「清楚」なイメージなのだが、風呂上がりで髪をアップに纏めているために「艶」がそこに加味されて、美しさのランキングをワールドクラスへと押し上げていた。

(浴衣ってーと夏祭りの女子高生ってイメージがあったけど、認識を改めなきゃいけねえな。温泉宿の女教師の方が一枚も二枚も上……いや、至高だ)

 何やらオヤジ臭漂う思考。脳内は雄弁だが、口からは一言も出ていない。

「……」

「えっ、ちょっと、何よ、その反応……」

 渚の眉が不安げに寄る。渚視点では怖い顔で睨まれているようにしか見えないのだ。

 風呂上がりの自分を鏡に映して、なかなかイケてるんじゃないかと密かな自信を持っていただけに、渚の落胆は大きかった。

「に、似合わない……?」

 泣き出しそうな声に、ようやく耕平は我に返った。

 首の筋がどうにかなりそうな勢いで左右に振って、耕平は立ち上がった。

 向かい合った渚を、上から下までまじまじと見つめる。

「……」

 無言のまま見つめられるのは、正直怖い。とりあえず何か言って欲しかった。

「…め……」

「め?」

「めちゃくちゃきれいだ……」

 言うなり耕平は渚を抱きしめた。

「きゃっ!?」

「先生、きれい、かわいい、最高!!」

 手放しの大絶賛に、渚はようやくほっと一息ついた。

「先生、写真撮らせて、写真」

「え、やだよ、恥ずかしいよ」

「お願い!これだけはどうしても撮らせて」

 耕平は拝み倒す勢いで渚に迫る。

 デレモードの時の渚は、ストレートな押しに弱い。

「…誰にも見せちゃダメだからね」

「約束するよ。ありがとう、先生」

 早速耕平はスマホを取り出して撮影を始めた。

「先生、すごい。マジできれいだ」

 よい写真を撮る秘訣はモデルを褒めることという鉄則に従って、耕平は渚を褒めちぎりながらシャッターをきっていく。

 渚の方も最初こそ恥ずかしがっていたものの、じきにノッてきて、耕平のリクエストに応えるようになった。

「その上掛けみたいなの脱いで、浴衣だけになってくれない?」

 言われたままに渚が丹前を脱ぐと、より色っぽさが増した。すかさずシャッターをきる。

「いいね、先生」

 はにかんだ笑顔が絶妙な角度で撮れて、耕平は思わずガッツポーズをとった。

「じゃあ次は肩をはだけてくれる?」

 つい勢いでやってしまいそうになって、渚は危ういところで踏みとどまった。

「ちっ、バレたか」

「何をやらせようとしてるのよ」

 いつもなら怖い睨みも、今日は怖くない。

「あわよくば、行けるところまで行こうかと」

 欲望を正直に告げられて、渚は苦笑した。

「ダメだからね。もうすぐ夕飯が運ばれてくるわ」

「う~」

「怖い顔してもダメよ。時間はいっぱいあるんだから、邪魔の入らない時に楽しみましょ」

 ここで無理強いして機嫌を損ねられたりしたら元も子もなくなってしまう。不承不承ではあるものの、耕平も納得して、おとなしくなった。

 もっとも、頭の中は、邪魔が入らなくなった時に渚と楽しむ、あんなことやこんなことでいっぱいだったのだが……
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