担任教師と温泉旅行

麻婆

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寒い時はやっぱり……

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 お昼を食べた後少しだけ外をぶらついて、二人は早々に宿へと戻ってきた。見所がそれほど多くなかったのもあるが、何よりもまず寒かったのだ。

「さすが信州。寒さ半端ねえや」

「ホントねー」

「身体あっためるにはやっぱり温泉だよね」

 言いながら、耕平はさっさと服を脱ぎ始める。

「少しゆっくりしようよ」

「お湯につかるのが一番ゆっくりできるじゃん」

 渚は耕平をジト目で見て、首を振った。

「きっとすぐに食べられちゃうもん」

「…う~ん…否定できない……」

「ほら」

 もっとも、これだけ求められることが嬉しくないわけではない。女として誇らしい気持ちも少なからずある。

 その時、窓の外に目をやった耕平が大きな声をあげた。

「雪降ってきた!」

「え!?」

 窓辺に寄った渚の目にも舞い落ちる雪が映った。

「きれいね……」

 雪を見慣れない二人には大層ロマンチックな風景に見える。

「雪の露天風呂なんて二度とチャンスないかもよ。ほら、行こう行こう」

 背中を押されるがまま、渚も脱衣所へ向かったのだった。



 舞い落ちる雪を掌で受けると、すぐに儚く溶けていく。耕平と隣りあってお湯に浸かりながら渚は飽きることなくその様子を眺めていた。

 雪は刻一刻と強さを増していて、うっすら白くなった場所も見受けられる。

「このまま積もるのかな?」

「帰れなくなるくらい積もったりして」

「余計なフラグは立てちゃダメ」

 渚は耕平の唇に指を当てた。

「ぱくっ」

 耕平はその指を咥えこんだ。

「きゃっ!?」

 慌てて引き抜こうとした渚だったが、耕平の吸引力に敗れ、ねぶられてしまう。

「ああん、何してるのよお」

「美味しい」

「やめなさいってば」

 耕平の口から指を引き抜いて、渚は距離をとろうとした。

「ごめん、ごめん。もうしない」

 肩を抱き寄せる。少し唇を尖らせながらも、渚は素直に身を寄せた。

「なんとなく、これ以上進みにくいなぁ……」

 雰囲気は大事である。それをおろそかにするとろくなことにはならない。

 だから耕平は無理にそれ以上のことはしなかった。ただ黙って渚の肩を抱いていた。

 しばし沈黙の時が流れる。

 それはお互いにとって不快な時間ではなかった。耕平は渚の温もりと柔らかさを、渚は耕平の温もりと逞しさを、それぞれ感じながら雪景色を眺めていた。

「ーー来てよかったね」

「だね」

「耕平くんとこういう旅行に行けるのはもっと先だと思ってた」

「俺もそう思ってた。茜さんには大感謝だな」

「でも、最初にこんないいとこ経験しちゃうと、次が怖いかも…」

「あー、それはあるかも」

 耕平は苦笑した。

「ーーでも、俺は渚が一緒ならボロい民宿とかでも全然構わないよ」

「耕平くん……」

「でもあれか、あんまりボロいと、声を抑えるのが大変か」

「ばか」

 渚は耕平の腕をつねった。

「嬉しいんだぜ。声が出るってことは、悦んでくれてるってことだろ。男として自信になる」

「そうなの?」

「そうなの」

「でも、恥ずかしいんだよ。その時は夢中になっちゃってるからいいんだけど、後でいたたまれない気分になるんだから……」

「そうなの?」

「そうなの」

「じゃあ普段は声出るの我慢してるの?」

「我慢っていうか…う~ん…やっぱり我慢になるのかなぁ?」

「恥ずかしいってのはわからなくもないから無理強いはできないんだけど、できればあんまり我慢はしないで欲しいかな」

「う~ん……」

「まあ我慢に我慢を重ねた果てにもれる声ってのが一番そそるのは間違いないから、俺が頑張ればいいのか」

「…そんなに頑張らなくていいよぉ……」

「いいや、頑張る。頑張って渚の身体を俺専用にするんだ」

「………っ…る……」

 渚の呟きは小さすぎて耕平には届かなかった。

「え?  何?」

「…もうなってるよ……」

 消え入りそうな言葉だったが、耕平には胸を撃ち抜く銃声が聞こえたような気がした。

「あー、もう渚はホントに可愛い!」

 歳上の、しかも担任教師に言う言葉ではなかったが、今の二人はただの男と女だった。

 向かい合うポジションをとって、耕平は胡座をかいた上に渚を座らせた。

 二人の顔は自然に近づき、唇が重なる。柔らかくもぷりっとした弾力を楽しみながら、耕平は渚の背に手をまわし、密着度を高めるように抱き寄せた。

「…んっ…ん……」

 呼吸困難に陥りそうな勢いで互いの唇、舌、口蓋を貪り合う。

 絡み合った舌から蕩けるような官能が全身に広がっていく。

「ああ……」

 いったん離れた唇から甘熱な吐息がもれる。

 吐息に誘われるように耕平が渚を追い、再び唇を塞ぐ。

「…んっ……ふうっ……あ……」

 天上の音楽よりも耳に心地よい渚の喘ぎ声に、耕平の欲情は天井知らずに高まっていく。

「あーー」

 下腹部をゴツゴツつついてくる固いモノに気づいて、渚は声をあげた。

(昨日からあんなにたくさんしてるのに…ホントに元気、っていうか、元気すぎるわよ)

 頼もしいんだか恐ろしいんだか、渚的には非常に複雑だった。

 それでも何度かつつかれていると、そこから熱が身体中に広がっていく。

「ああ……」

 際限がなくなってしまっているのは耕平だけではない。きっと自分もだ。じんわりした熱に全身が冒されていくのを感じながら、渚は思った。

「…はあ…はあ、はあ……」

 息が荒くなる。

 熱が高まる。

(ダメ、我慢するの…我慢しなきゃダメなんだから……)

 秘所が疼く。お湯の中でなければ、太股までびっしょり濡れてしまっているのが丸わかりだったろう。

(欲しい……)

 愛欲の水位は高まる一方で、既に決壊寸前のレベルに達していた。

 しかし、渚は自分から「挿入れて欲しい」とは言えずにいた。死ぬほど恥ずかしいのだ。どうしようもなく盛り上がった時に言ってしまったことはあったが、事後には舌を噛みきりたくなった。ましてや今はまだ正気を保っている。言えるわけがない。

 いつもなら我慢の利かない耕平が早々に求めてくるため、渚がここまで追い込まれることはない。しかし、キスに夢中になっている耕平は、それ以上のことをしてくる気配すらなかった。

(…どうなってるのよぉ……)

 熱すぎるキスを続けながら、渚は泣きたい気分になった。

 実はこの時、耕平の方も挿入れたくて挿入れたくてしょうがない、欲情の焔に炙られて干からびそうになっていたのに、それを必死に我慢していたのだ。それというのも、こんなのべつまくなしにやりたがっていたら渚に嫌がられてしまうのではないかと、耕平なりに考えたのだ。それが渚をとことんまで焦らす結果になってしまったのだから皮肉である。

 挿入欲をごまかそうと、耕平は更にキスに没頭していく。

 渚は焦らされ、追い込まれていく。

 先に音を上げたのはーー渚だった。

 唇を離した渚は、潤みきった瞳で耕平を見つめた。

「…挿入れて、いい……?」

「え?」

 あり得ない言葉を聞いた、というように耕平は目を丸くした。

「…欲しいの……耕平くんが、欲しいの……いい?」

「!?」

 いまだかつてない興奮が脳天を突き抜け、耕平は危うく鼻血を吹くところだった。

 耕平がびっくりして固まっていると、泣きそうになりながら渚は剛直に手を添えた。

「…もう…挿入れちゃうからね……」

 挿入の感触を楽しむように、ゆっくり腰を下ろしていく。

「…あ…ああ……」

 自分から跨がっていくのは渚にとって初めての経験だった。見た目のインパクトは凄まじく、徐々に深くなっていく結合部を見ているだけでイキそうになってしまった。

 一方で耕平は感激に打ち震えていた。あの恥ずかしがりやでマグロのようだった渚がここまで積極的になってくれたという事実は、男としての自尊心を大いに満足させるものだったのだ。

 渚がぺたんと尻を着き、二人は完全に結合した。

「ふああーー」

「おお……」

 二人は固く抱き合った。というよりも、しがみつき合うという方が正しそうな必死さがあった。

「…素敵……」

「…最高だ……」

 繋がり、抱き合ったまま、二人はしばらく身じろぎもしなかった。

 少しでも動いたら壊れてしまう、と本気で思わせる圧倒的な充溢感が二人を満たしていた。

 ややあって少し落ち着いたところで耕平が苦笑混じりに言った。

「どんどんキツくなってきてない?」

「そっちも膨らんできてるよ」

「なんだか怖いな」

「怖い?」

「昨日もそうだったけど、する度に良くなっていくじゃん。昨日はこれ以上気持ちよくなることなんて絶対ないって思ったけど、今の方がもっといいし、このままだとどこまでいっちまうのか、それが怖い」

「確かに」

 それは渚自身も実感していたことだったので、素直に頷いた。

「でもやめる気にはならねえし」

 そんなことになったら、お互いに収まりがつかなくなってしまう。

「ーーそろそろ動くよ」

 渚が頷くのを見て、耕平は律動を開始した。

「んっ…ん……あっ……」

 控えめな喘ぎ声が耕平の耳をくすぐる。

 しがみつく腕に力がこもり、上気した身体がほんのり色づく。

「はあっ」

 のけぞった首筋に舌を這わせると、切なげなため息がもれる。

「ーー今度は渚が動いてみて」

「え?  どうすればいいの?」

「渚が気持ちいいように好きに動いてみてよ」

 と言われても、なかなか動けるものでもない。

「…恥ずかしいよぉ……」

「大丈夫。俺しかいないだろ」

「……」

 拗ねたような表情で、ぎこちなく腰を振り始める。

「あ…ああ……」

 いつもとは違う感覚に、甘声にも戸惑いが混ざる。

 どこか遠慮がちだった腰の動きも、すぐにコツをつかんだようで、滑らかなものになってくる。

「あっ…あ……んっ…あっ、あっ……」

 悦ぶ声にもリズムが出てくる。

(これ、いいかも……)

 自分のペースで悦の深さ、早さをコントロールできる点が気に入った。耕平の激しさに巻き込まれるのも素敵だが、これはこれで悪くない。

 恥ずかしがっていた当初の姿はどこへやら、渚は夢中になって腰を振った。

 耕平の方も渚の動きがこなれてくるにつれ、急速に高まってきた。

「渚、キスしよう」

 渚に否やがあるはずがない。嬉しそうに耕平の唇に吸い付いた。舌を絡ませ、唾液を交換する。

「あんっ、素敵よ、耕平くん」

「もっとキスしよう」

 浅深織り交ぜて互いの唇を貪り合う。

「渚の唇、美味しいよ」

「嬉しい。もっとして」

 上と下、両方で繋がった二人は、どこまで深く交じり合えるのか挑戦する勢いで抱きしめあった。

「ああっ」

「渚、なぎさっ」

「耕平くん、好きっ、大好きっ」

「愛してるよっ」

「あたしもっ」

 言葉で高めあい、二人は昇りつめていく。

「あ、あっ…ああっ……」

 耕平も下からの突き上げを始め、すぐに動きをシンクロさせる。

「きゃあんっ」

 ひとりの動きでは到達できない最奥を突かれて、渚は甲高い嬌声をあげた。

「ああんっ…あっ、い、イク、イッちゃう……」

「くうっ、お、俺もだ」

 耕平も限界に達した。ここに及んで我慢することもなく、全てを渚の中にぶちまけた。
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