担任教師と温泉旅行

麻婆

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二人の始まり 3

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 お互いの最寄駅から五つほど離れた、大きくも小さくもない駅。用心に用心を重ねて、駅前から少し離れたコンビニ前で耕平は渚を待っていた。

 待ち合わせ時間のきっかり五分前、コンビニの駐車場にエンジ色の軽自動車が入ってきた。サングラスをかけた渚を運転席に認めて、耕平は素早く車に乗り込んだ。

 車がスタートしてしばらくの間車内に会話はなかったが、十分ほど経ったところでどちらからともなく大きく息をついた。

「あ~、緊張した……」

「結構どきどきしたね」

「待ってる時に知ってるヤツに会ったらどうしようって、そればっかり考えてたよ」

「ちなみに、どうするつもりだったの?」

「上手い嘘なんてつけないから、ダッシュで逃げるつもりでいた」

「余計に怪しくない?」

「一緒のとこさえ見られなければ大丈夫でしょ」

 耕平は笑って言ったが、渚的には少々心苦しかった。

「…ごめんね?」

「告ったのは俺だよ」

 耕平は迷いのない表情で言った。

「先生とこうやってつきあえるんだったら、これくらいなんでもないよ」

 そこに無理をしている様子はなかったので、渚は胸を撫で下ろした。

「それにさ、少しくらいなら、不便があった方が、逢えた時間を大事にできるような気がするんだよね」

「…そうね。そうかもしれないわね」

「だからさ、この件に関しては、お互い気にしないってことでいこうよ」

「うん。わかった」

 簡単に割り切るのは難しいが、モヤモヤを抱え込んだままは絶対によくない。それがわかるから、渚は素直に頷いた。

「さて、どうしよっか?  まっすぐ行っちゃう?  それとも、どこか寄ってく?」

「…すぐに行きたい」

 躊躇う様子はあったが、耕平はきっぱり言った。

(そりゃそうよね)

 苦笑して、渚は車を目的地へと走らせた。

(高速道路のインター近くって、そういうホテルが多いって聞いたことがあるんだけど……)

 そんな不確かな情報だけを頼りに車を走らせたのだが、首尾よく一軒のファッションホテルに乗り入れることができた。

 午前中だというのに、駐車場には他にも何台かの車が停まっていた。

(こんな時間でも人っているんだ……)

 自分たちのことは棚に上げて、耕平は変な感心をした。

(とは言っても、俺たちみたいな関係って、そうはいないよな)

 そう思ったら、自分たちは人目を忍ばなければならないことを思い出した。

「行こう」

 耕平は渚の手を引いた。

 幸い、他の利用者とかち合うようなこともなく、二人は選んだ部屋に入った。

「ふう」

 揃って大きく息をつくと、何だかおかしくなって吹き出してしまった。

 改めて部屋を見回す。ちょっとした調度品はあるものの、基本的には大きなベッドだけのーー要はセックスするためだけの部屋である。

「……」

 耕平が、音がするくらい大きく生唾を飲み込んだ。

「先にシャワー浴びてきたら。その後、あたしも浴びるから」

 何気なさを装って、渚は言った。

「あ、う、うん……」

 ど緊張丸出しの耕平がバスルームに消えていく。

 扉の閉まる音を確認してから、渚はベッドに腰を下ろした。

「…ふうぅぅ~っ……」

 先程よりも数倍深いため息をつく。

 緊張しているのは耕平だけではないのだ。立場を考えれば、むしろ渚の方が思うところは強かったかもしれない。

(今更だけど、とんでもないわよね……)

 自分にこんな大胆なことができるとは思わなかった。自分の人生にこんな冒険的要素が入り込んでくるなんて、それこそ3ヶ月前までは夢にも思わなかった。

(でも、後悔しないって決めたから)

 改めてそう思ったところで耕平がバスルームから出てきた。腰にバスタオルを巻いただけで、上半身は細身の身体が露になっている。

「じゃああたしも入ってくるね」

 なるべく耕平を直視しないようにしながら渚はバスルームに向かう。

 一応家を出る前にもシャワーを浴びてきてあったので、ざっと流す程度にしておく。あんまり待たせるのも悪いかな、と思ったのだ。

 バスタオルを身体に巻く。下着は着けなかった。

 バスルームを出るとすぐに、ベッドに腰かけた耕平から熱い視線が飛んできた。バスタオル一枚だったことに驚いたようだったが、その視線は更に熱を帯びた。

「…せ、先生……」

「そんなに緊張しないでも大丈夫。どこにも逃げたりしないから」

 冗談めかして言うと、耕平は固いながらも笑顔を見せた。

「いい思い出にしようね」

 渚は耕平の隣に腰を下ろした。

 顔が近づき、唇が重なる。

 初めての時よりは余裕ができて、耕平は渚の唇の柔らかさを堪能できた。

 ゆっくり顔が離れる。

「先生、好きだ」

「あたしも、好きよ」

 もう一度重なる唇。さっきよりも少しだけ濃厚なキス。

 顔を離して、目を開ける。お互いに至近距離で見つめ合うのはまだ照れくさい。

 次のステップに進むタイミングなのだが、経験のない耕平は上手く流れを掴めずにいる。

「…タオル…はずして、くれる?」

 自分からそんなことを言い出すのは非常に恥ずかしかったのだが、何とかリードしてあげなくちゃ、の一心で頑張った。

「い、いいの?」

 嬉しいのは間違いない。でも、その中に上手くできるかどうかという不安が見え隠れしている。

 だから、渚は優しく微笑んだ。

「お願い」

 それから冗談っぽくつけ足す。

「…もし見たくないならあれだけど……」

 耕平は首をブンブン振った。

 それだけは絶対にない。今でさえ剥き出しになっている両肩を見るだけで心臓が破裂しそうに高鳴るのだ。タオルに隠された部分を想像すると、本当に破裂してしまうのではと怖くなる。

 恐る恐るタオルの合わせめに手を伸ばす。

 脱がされる渚は静かに見守っている。身体に力が入ってしまうのは致し方ないところだろう。

 合わせめがほどける。

 はらりと落ちたタオルの下から現れた乳房の美しさに、耕平は息を呑んだ。

 恥ずかしさを懸命に堪えた渚が手で隠すのを我慢してくれたので、その絶景はあますところなく耕平の記憶領域に焼きついた。

「……」

 耕平はひたすら間近の乳房を見つめる。

 その形、色とも想像を遥かに超える美しさで耕平を心の底から魅了した。

 そしてもうひとつ、想像していなかった要素が耕平の興奮を煽り立てていた。

「…いい匂いがする……」

「バカ」

 さすがに羞恥の限界を超えてしまい、渚は自分の身体をかき抱いた。

「あーー」

 魅惑の源泉を隠されてしまった耕平は落胆の声をあげた。

「もう、恥ずかしいんだからね」

「…ごめんなさい……」

 耕平は小さくなって謝った。

 あまりにへこんだ様子に、渚はちょっと焦った。初体験とはとかくデリケートなものである。ちょっとした行き違いでダメになってしまうこともある。が、それではあまりに悲しすぎる。

「怒ってるわけじゃないからねーーほら」

 渚は耕平の手を取って、自分の裸の胸にさわらせた。

「あーー」

 突如として掌に湧いた天上の感触に、耕平は言葉を失い、固まってしまう。

 それでも本能なのだろう。より素晴らしい感触を求めるように乳房に重なった右手が動く。

「…んっ……」

 技巧はまったくなかったが、好きな男にさわられて何も感じないわけがない。渚は漏れそうになる声を必死に堪えた。いきなり嬌声をあげるのははしたないと思ったのだ。

「…せ、先生…すごいよ……」

 一度動き始めた手は止まらない。柔らかさと弾力が絶妙のバランスを保った奇跡の触感は、耕平を完璧に虜にしていた。

「…んっ……ん……ふっ……」

 夢中になった耕平の愛撫には熱がこもり、渚の肌をとろけさせた。

「…はっ、はあっ、はあっ……」

 耕平の息も荒い。

 ふと、耕平は掌の感触に変化があることに気づいた。今までなかったこりこりしたものが生まれている。

 不思議に思って、手を外して確めてみると、淡く色づいた魅惑のポッチが、存在感を主張していた。

「ーーうわあ」

「いやっ……」

 耕平の感嘆に対して、渚は羞恥の悲鳴をあげる。自分の昂りを如実に突きつけられ、いたたまれない気持ちになる。

 隠そうとした渚だったが、それより早く耕平の指が乳首をつまんでいた。

「あうっ」

 身体全体が、ビクッと大きく跳ねた。

 想像よりも大きな反応に少し驚いた耕平だったが、すぐに愛撫を再開する。乳房だけを弄るよりも顕著な反応が嬉しくて、夢中で弄りまわす。

「…ん、んっ……あ……んっ……」

 ただでさえ敏感な乳首を遠慮なしに弄りまわされたら、声を堪えることなどできるはずがない。渚は喉をさらけ出すように喘いだ。

 そんな渚の反応は、童貞特有の心配症に囚われていた耕平に大きな自信を与えた。

「…先生…おっぱい、吸ってもいい?」

「いちいち訊かなくても、好きなようにしていいよ」

 そう言う渚の笑顔は、耕平にとっては女神のそれだった。

 勇気をもらった耕平は、顔を乳房に近づける。

 さっき嗜められたので口には出さないが、甘い体臭を胸一杯に吸い込む。とても幸せな気分になる。

 そうしながら、尖った乳首をそっと口に含む。

「…ああ……」

 渚は深くて甘い息をついた。

(おっぱい吸われるのなんて何年ぶりだろう……)

 元々経験値は年齢に比して相当低い渚である。学生時代に一人とつきあったことがあるだけで、教職に就いてからは彼氏自体がいなかった。だから、性行為そのものが数年ぶりの話である。

 乳首を発信地にして、甘い痺れが身体中に広がっていく。

「…ああ……あっ……」

 悩ましげな声が耕平をより夢中にさせる。がむしゃらに乳首を吸いたて、舌をやみくもに動かしまくる。

 稚拙な愛撫であったが、性悦そのものがご無沙汰だった渚には十分すぎる快感だった。

「…先生、先生っ……」

 夢中になりすぎている耕平は、おっぱいから離れることなど思いもよらないらしい。ひたすらむしゃぶりついている。

 耕平にしてみれば愛しい女性の最も魅力的な場所である。飽きることなどあるはずがなかったし、他の場所に目を向ける余裕もなかったのだ。

(…ああ…もう……)

 既に自分の準備は整っている。ただ胸を吸われているだけの現状はなかなかにつらいものがあった。

 端的に言えば、下にも触れて欲しかった。

 太股を擦り合わせてもじもじしても、耕平に気づく様子はない。

 このままでは生殺しの拷問だ。

「…お、奥原くん……」

 あまりにも切なげな声が、胸に眩んで我を忘れた耕平の意識を現実へと引き戻した。

 耕平が顔を上げると、渚が今までに見たことのないような顔をしていた。

 普段の凛とした表情とは真逆の蕩けきった表情は、ただ欲情に染まっているだけでなく、その欲情を相手に伝染させた。

「…せ、先生……」

 ごくり、と耕平は生唾を呑み込んだ。

 それまでも十分に漲っていた剛直が、伝染した欲情により更に気張った。

 その拍子に腰に巻いたバスタオルが落ち、耕平の逸物が露になった。

「え……?」

 逸物を目にした渚の狂熱が、一瞬で覚めた。
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