担任教師と温泉旅行

麻婆

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二人の始まり 4

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「何あれ、あたし、あんなの知らない……」

 バスタオルの下から現れた耕平の逸物は、渚の知っている現実だけでなく、想像さえも遥かに超えたものだった。

「…大っきい……」

「え?」

 隠そうとした手が途中で止まる。

 男にとっては基本「大きい」は褒め言葉である。対象が何であれ、言われて悪い気はしない。ましてや褒められたモノがモノだけに、耕平は大いに自信をもった。

 その一方で、渚はパニックに陥っていた。

(む、無理よ。絶対無理。あんなに大きいの、入るわけない) 

 渚の目には耕平の逸物は凶器にしか映らなかった。

(あんなに大きくない元彼のだって死ぬほど痛かったのに、あんなの入れられたら、絶対裂けちゃう……)

 これは経験値の低さからくる誤解である。実際のところ、耕平のモノはそこまで大きくはない。大きいか小さいかで言えば大きい方だが、あくまでも常識の範囲内である。元彼が極端に小さかったというオチなのだが、渚にとっては何の解決にもならない事実であった。

「…せ、先生……?」

 すっかり怯えてしまった渚に、耕平は戸惑った。

(…そこまで大きいわけじゃないと思うんだけどなあ……)

 とは言え、こうなってしまうと、最早理屈ではない。それは耕平にもわかった。

(…マジか……ここまできてお預けとか……) 

 心中がっくりと肩を落とす。この落胆、とても言葉で言い表せるものではない。

 無理矢理襲ってしまいたいという邪念が頭をもたげるが、大事に想う相手にそれはできなかった。

「…ごめん、先生。俺は大丈夫だから、無理はしないどこう」

 懸命に平静を装いながら、これ以上怯えさせないようトランクスを身につけた。

「……」

 渚は唇を噛んでうつむいている。

 見ている方がつらくなりそうな様子に耕平は苦笑した。

 こちらもつらいが、恨み言を言うつもりはなかった。渚が自分を責めているのは伝わってきていたので、逆に慰めなきゃという気にもなっていた。もっと言うなら、俺がしっかりしなくちゃ、という気になった。

「先生」

 耕平は可能な限り優しく渚を抱きしめた。

「昨日も言ったけど、俺、これだけでも幸せだよ」

 柔らかくて、温かくて、素肌が触れあっていると、言葉では言い表せないくらい幸せな気分に包まれる。

「せっかくこういうところに来たわけだし、時間までこうしててもいい?」

「あ、う、うん……」

「やった」 

 じゃあさっそくということで、耕平は渚をベッドの中に引っ張りこんだ。できるだけ密着面積が多くなるように抱きしめる。

 身体が密着しているので、当然顔も近くなる。渚の目と鼻の先にある耕平の顔は、この上なく幸せそうだった。

 素朴に疑問を感じた渚はストレートに訊いてみる。

「…怒って、ないの……?」

 耕平の答えはあっけらかんとしていた。

「ないよ。どうして?」

「楽しみにしてたんじゃないの?」

「楽しみにはしてたし、残念って言えば残念だけど、俺たち今日で終わりってわけじゃないしーーあ、でももし次の機会までに死んじまったら化けて出るから、そんときはよろしく」

「もう、バカなこと言って……」

 冗談めかした答えをもらって、少し救われた気分になった。

「でね、ひそかに感動してることがあるんだけど」

「え?」

「ちょっと強くするよ」

 耕平は渚の背にまわした手に力を込めた。胸の密着度が増し、乳房がひしゃげる。

「わかる?」

「…なにーーあ」

 耕平の言わんとすることに、渚も気づいた。



 とくん…とくん…とくん…



 心臓の鼓動が、ふれあった肌を通じて伝わってくる。

 それに気づいた時、身体の中にじんわりと温かいものが広がっていくのを感じた。

「よくない、これ?」

「すっごくいい」

 抱きあう腕にも自然と力が入る。

「奥原くん、結構ドキドキしてるね」

「あたりまえだろ。このシチュで平然となんてしてられるわけがないーー先生だってドキドキしてるよ」

「うん。ときめいちゃった」

 超至近距離で年上であることを疑いたくなるような可憐な笑顔を見せられた耕平は衝動的に渚の唇を奪った。

 渚もそれに応える。

 ややあって唇を離した二人は、照れ照れのハニカミ顔を見合わせた。

「恋人とか夫婦じゃないと、お互いの鼓動を確かめ合うことなんてできないよね。恋人とかでも、がっついてたら気づけないと思うから、今日はこれでよかったんだよね」

 無念さを押し殺して自分に言い聞かせるような響きが混ざっていたのは否めないが、耕平はなけなしの理性を総動員してそう言った。

 と、ここで終われば何となくきれいにまとまったのだが……

「ーー奥原くん!!」

 突然身を起こした渚は、耕平のトランクスを下ろし始めた。

「先生!?」

 本気でおったまげた耕平は隙だらけで、簡単に剥ぎ取られてしまう。

「せ、先生……」

「静かに!   おとなしくしてなさい」

「はい」

 教室でのようにびしっと言われると、反射的に言うことを聞いてしまう。裸なので威厳はなかったが。

 渚は耕平の上で中腰の姿勢をとった。耕平の視点からは非常に卑猥な格好なのだが、渚の鬼気迫る表情が下手な口を挟ませなかった。

「…大丈夫。こんなに大好きな奥原くんのなんだから、怖くない…怖くないわ…怖くないよ」

 どうやら使命感に駆られてしまったらしい。思い詰めた表情で耕平の逸物を睨んでいる。

(え?  ちょ、ちょちょちょちょい待ちーーまさか!?)

 渚が何をしようとしているかを悟って、耕平は焦った。そんなことされたら、下手すりゃ折れる。

「えいっ、女は度胸っ!」

(そこは愛嬌にしてくれーっ)

 心の声は届かず、渚は耕平の逸物の上に勢いよく腰を落とした。

 少しでもズレていたら耕平のモノが折れかねない暴挙だったが、ガチガチの逸物とびしょ濡れの蜜壺は奇跡的な結合を果たした。

 が、そんな繋がり方をすればーー

 耕平の尖端が渚の最奥を貫く。

 他愛なく絶頂した、未熟ながらも熱く潤った媚肉が一切の遠慮、容赦なく経験不足の剛直を締め上げる。

 耐えきれるはずもなく、盛大に射精。

「ぐっ」

「あううっ」

 二人は同時にダメになった。

 挿入から射精まで一秒かかったかどうか。耕平の、一生記憶に残る初体験は文字通り瞬殺されて終わってしまったのであった。

 しかも、これで終わりではなく……

「ーー何で中で出してるの!?」

 ややあって正気に戻った渚に理不尽極まりない説教を受けるに至って、耕平の記念すべき初体験は、黒歴史認定されることになってしまったのであった……



(確かにあれは悪かったわよね……)

 何とはなしに初めての時のことを思い出して、渚は自嘲気味に笑う。

 今でこそ言わないが、しばらくの間耕平は自分の初体験を「犯された」と表現し、渚もそれを否定できなかった過去がある。

(もうああいうことはないとは思うけど……)

 叶うならばあの時に戻ってやり直したいと思うが、言うまでもなく不可能である。

 そのまま思考の泥沼に沈んでいきそうだった渚に、思わぬところから声がかけられた。

「あれ?  渚先生?」

「え?」

 声のした方を見ると、そこには教え子がいた。
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