上 下
7 / 9

7

しおりを挟む
その週の土曜日。またお日様も上りきっていない涼しい時間帯に、私はカトリーヌとカフェに来ていた。もちろん、フレデリックから髪飾りをもらった経緯を聞くためだ。

目の前に運ばれてきたのは、ピンク色のクリームが塗られ、真っ赤な苺が載ったケーキ。たくさんあるケーキの中から2人で選んだ。

「美味しそうだね、リラちゃん。」
「そうだね。早くいただこう!」

カトリーヌの言葉に同意して、私は早速フォークを持つ。

口に入れるとまずは甘い香り、それから程よい酸味が口の中に広がった。

「カトリーヌ、これ美味しい!」
「でしょう?ここ私のおばあちゃまのお友達が始められた喫茶店で、とても評判なのよ。」

今日の待ち合わせ場所はカトリーヌが決めた。さすが、カトリーヌ。センスが良い。

「それで、早速なんだけど、フレデリックとは今どうなの?」
「うん、実はね。昨日告白されたんだ。」

カトリーヌがフレデリックから服を借りたのが今週の火曜日のこと。あまりにも急展開すぎやしないか。

「え。ちょっと早すぎない?」
「うん、私もびっくりしたんだけど、彼は入学したときからずっと気になってたんだって。」
「そうなの?」
「うん。4月にアンサンブルの授業の時、フレデリックと私と、もう1人のショームパートの子とドゥルシアンパートの子で四重奏をしたんだけど、その時に告白しようと思ったって。」
「へぇー!」

確かにアンサンブルの発表会で、フレデリックがやたらとカトリーヌのことを見ていたのが気にはなったが、他の子にも目配せをしていたし、4人の息を合わせるためかなと無理矢理自分を納得させたのを思い出す。

「ねぇ。水曜日につけてた髪飾りあったでしょ?あれはフレデリックにもらったの?」
「ああ。あれはフレデリックにもらったというより、フレデリックのお姉さんにもらったの。」
「え!!家族に紹介されたの?」

私は驚いた声を出したが、カトリーヌは首を振る。

「違うよ。学校の近くの郵便局の前にあるドゥネーブっていうアクセサリーショップ知らない?」
「知ってる!可愛いお店だよね。」
「あそこのお店をやってるのがフレデリックのお姉さんなんだって。」

初耳だ。ドゥネーブといえば、可愛い物好きなら誰でも憧れる、可愛いがつまったお店だ。

「2人でそこに行って、お姉さんがいらしたから、お話ししてたら、この髪飾りをもらえたの。」

よく見てみると、銀色の糸の縫い目が印象的な黒くて上品な髪飾りだ。

「今日、午後からデートなんだ。付き合って初めてのデートだからこれ付けて来た。」

小さなケーキを一個しか食べていないのに、何だかもうお腹いっぱいだ。
しおりを挟む

処理中です...