年金生活者かくもおかしき

株馬きち

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第7話

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エゴバは今日も鬱陶しいぐらいよく口が動く。作業中も間近にいて、充分その動きが目に入るときでも通るたびに「通ります、通ります」と往復で繰り返す。マニュアル通りなのだが、なんどもしつこく繰り返し過ぎる。融通の効かないばあさんだ。
基本的に自分の作業中心で周りの状況を見る能力が無いので、口には出さないけれども他のアルバイトたちは鬱陶しく感じていた。
ホールも調理場も洗い場もてんてこ舞いのときに、「忙しいとこ悪いけど茶碗蒸しの容器次の仕込みせんならんからワンセットお願いしますね」。言い方は丁寧だが今すぐ必要なわけでもないのを高津は分かっていた。用意してもなかなか取りに来ないからだ。そうして、今さして必要でない用意をさせて周りを余計にかき回すのが常であることも高津はなんども見てきた。だから高津は返事だけは即座にするが言われたことをすぐにはしないことにしている。
エゴバは仕事以外の話でも自分のことを聞かれてもいないのに話す。
「この間台湾旅行に行ってきたんよ。楽しかったわ」。〇〇○が話題になる直前の話だ。世間のニュースにも無頓着なエゴバは、台湾のクルーズの話が話題になると「大丈夫やわな。もう帰ってきたからね」と高津に助け舟を求める始末だ。

そんなエゴバもカマキリだけは苦手らしく、年が上のくせに真正面からものが言えない。不満があると高津にそぅと耳打ちしてカマキリの悪口を言っては同意を求める。
「来てまだ15分やのにもうおトイレ行ってるわ。あれはあかんで」とカマキリのことを言う。カマキリはトイレが近いらしく、なぜかいつも出勤して間もないのにトイレへ駆け込む。忙しいとき、なかなかトイレにいけないエゴバにはカマキリが腹立たしく感じられるのだ。
カマキリは何ら遠慮することもなく、まるで忙しいときにわざと抜けて代わりに誰かが穴埋めするのを楽しんでいるかのようだ。
エゴバとカマキリの二人が店長には踏み入れられない聖域らしく、どの店長も社員も彼女らの振る舞いには注意をすることはない。
なにせ二人ともオープン時からのアルバイトで、並のの社員では太刀打ちできない。アルバイトと言っても勤続16年のアルバイトだからだ。

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