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004 盗賊さん、ポーションをつくる。
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突進してくる野盗目掛けて、ボクは手にしたショートソードを横投げに投擲した。
野盗はボクへの対抗心からか、ぐるんぐるんと回転しながら風を切って飛ぶショートソードを避けようとはせず、叩き落とそうと腕を振り上げた。迫るショートソードとの距離感を測りながら、タイミングを見計らって野盗は腕を振り下ろす。それに合わせるようにしてボクは野盗の持つショートソードを奪取スキルで奪った。
野盗の顔は驚愕に歪み、直後に左側頭部にショートソードの刀身が喰い込み、刃が眼球に届いた辺りで絶命して走っていた勢いのままに転がるようにして地面に倒れ伏した。
その様子を見せつけられた野盗達は、ボクを真似てか手にしたショートソードを投げ放って来た。野盗達は投擲系の技能を有していないのか、ほとんどの物は的外れだった。ただ1本だけ狙い違わず、ボクの元に届きそうだったので、激昂した野盗から奪ったショートソードを投擲して撃ち落とした。
武器を失った野盗達は、じりじりと後退る。もう彼らにボクと戦闘を継続する意思は見受けられなかった。
それでも油断することなく、野盗にショートソードを回収させないよう、あちこちに落下した刃物複数に対して、天職を与えられた際に得た感覚に任せてスキルを発動しようとした。
だけど、なぜか不発に終わった。
原因がわからなかったので、ボクは天職の感覚任せではなく、自身の魔力操作でスキルの発動時の魔力の流れを再現することにした。
額中央から極細の魔力の糸を伸ばして複数のショートソード繋ぎ、そこからボクの手元へと手繰り寄せる。手元で複数のショートソードの形を魔力で再現している最中に、スキルが完了したときと同じ感覚を得た。
半端なスキルの発動に違和感を覚えて手元を見ると、複数のショートソードが入り混じるようにして、一塊の物体に成り果てていた。
錬金術の合成スキルが失敗したときのような不可思議な現象に、興味を唆られながらもそれは一旦置いておく。とりあえず野盗の武器を使えなくするという当初の目的は達した。
今ならボクの言葉も届くだろうと判断し、彼らに呼びかける。
「投降して下さい。これ以上は無駄に犠牲を出すだけだとあなた達にもわかるでしょう」
そう野盗達に呼びかけると彼らは仲間同士で視線を交わし合うばかりで、最後の決断を人任せにしようとしているようだった。
すると馬車付近に居残っていたふたりの野盗のうちのひとりがなにやら喚いた。そちらに視線を向けると、ぐったりとした女性を無理やり立たせるようにして襟元を掴み、ショートソードの刃を女性の首元に押し当てていた。もうひとりの野盗は彼を嗜めようとしていたが、喚く野盗に蹴り飛ばされ、腹部を刺し貫かれていた。
腹を押さえて呻く仲間を放置して、人質を取ったつもりの野盗は、ボクに対して喚き散らししていたが、それを無視してボクはウエストポーチからナイフを引き抜き、躊躇うことなく投擲した。
腰が抜けているのか自力で立つことも出来ない女性を盾にしようとした野盗だったが、頭部を狙って投擲されたナイフを防ぐ盾にはならないと気付いたのか、女性を突き飛ばす。ボクは念のため発動待機しておいた奪取スキルで、こちらに背を向けて逃走しようとする野盗のショートソードを奪った。
とどめを刺すべく追撃してもよかったが、今は優先すべきことがあると逃げ出した野盗は捨て置くことにした。
無抵抗となった残りの野盗達を、馬車で戦闘の動向を息を殺して見守っていた男性陣に、拘束するようお願いした。
無言でこくこくと頷き快く了承してくれた彼らにその場を任せ、ボクは最初に襲撃された馬車の元へと駆けた。
人質にされて腰砕けになった女性は、衣服を血で濡らして地面にへたり込み、虚な目をしていた。ぱっと見た限り、彼女自身には外傷はない。彼女の様子から馬車の中に重傷を負った者がいると判断して覗き込む。乗客のほぼ全てが無残な骸に成り果てていたが、その中にひとりだけまだ息のある者がいた。
かろうじて生存していた男性は、ばっさりと袈裟斬りにされ、血塗れで床に転がっていた。彼は息も絶え絶えといった様子だったが、まだ意識はあったらしく、ボクに何事か訴えかけようとした。
それを聞いてやっている余裕はないとボクはウエストポーチから自作の中級ポーションを2本取り出し、彼にふりかける。本職の錬金術師が作った物ではない劣化品とはいえ、多少は治療するための時間を稼げるだろう。ポーションをふりかけられた男は、痛みに呻いた。
「後続の馬車に上級ポーション持ちがいないか聞いてくる。それまでしばしの間、耐えてくれ」
それだけ言い残したボクは、ボクが乗車していた馬車に駆け戻り、上級ポーションの有無を訊ねた。それに対して返って来たのは残念なものだった。
それでも劣化品ではない中級ポーションをひとつ提供してもらえた。それを手にして致命傷の男と元に戻り、それを飲ませると少しは彼の延命に貢献した。だが、彼の傷はあまりにも深く、血を失い過ぎていた。
ポーションによって治癒能力を高めるのに必要な血中の魔素が彼には不足しており、ポーションが十全に効果を発揮していなかった。
ポーション自体に多量の魔素が含まれている上級ポーションならどうにかなっただろうがと考え、ボクはひとつ閃いた。
それを実行すべく、ウエストポーチから下級ポーションの材料として一般的な薬草を1束を取り出した。そして空のポーション瓶を片手に、薬草と空気中の水分と魔素に対して奪取スキルを発動し、瓶の中へと引き寄せた。するとそれらは空の瓶の中で混ざり合い、ぼんやりと発光する蛍光色の液体が生成された。
はっきりと目に見えるほどに大量の魔素が含まれているのがわかる。これなら助けられるかも知れないと男にそれを飲ませた。
すると変化は劇的だった。瞬く間に彼の傷は塞がり、完治していた。
野盗はボクへの対抗心からか、ぐるんぐるんと回転しながら風を切って飛ぶショートソードを避けようとはせず、叩き落とそうと腕を振り上げた。迫るショートソードとの距離感を測りながら、タイミングを見計らって野盗は腕を振り下ろす。それに合わせるようにしてボクは野盗の持つショートソードを奪取スキルで奪った。
野盗の顔は驚愕に歪み、直後に左側頭部にショートソードの刀身が喰い込み、刃が眼球に届いた辺りで絶命して走っていた勢いのままに転がるようにして地面に倒れ伏した。
その様子を見せつけられた野盗達は、ボクを真似てか手にしたショートソードを投げ放って来た。野盗達は投擲系の技能を有していないのか、ほとんどの物は的外れだった。ただ1本だけ狙い違わず、ボクの元に届きそうだったので、激昂した野盗から奪ったショートソードを投擲して撃ち落とした。
武器を失った野盗達は、じりじりと後退る。もう彼らにボクと戦闘を継続する意思は見受けられなかった。
それでも油断することなく、野盗にショートソードを回収させないよう、あちこちに落下した刃物複数に対して、天職を与えられた際に得た感覚に任せてスキルを発動しようとした。
だけど、なぜか不発に終わった。
原因がわからなかったので、ボクは天職の感覚任せではなく、自身の魔力操作でスキルの発動時の魔力の流れを再現することにした。
額中央から極細の魔力の糸を伸ばして複数のショートソード繋ぎ、そこからボクの手元へと手繰り寄せる。手元で複数のショートソードの形を魔力で再現している最中に、スキルが完了したときと同じ感覚を得た。
半端なスキルの発動に違和感を覚えて手元を見ると、複数のショートソードが入り混じるようにして、一塊の物体に成り果てていた。
錬金術の合成スキルが失敗したときのような不可思議な現象に、興味を唆られながらもそれは一旦置いておく。とりあえず野盗の武器を使えなくするという当初の目的は達した。
今ならボクの言葉も届くだろうと判断し、彼らに呼びかける。
「投降して下さい。これ以上は無駄に犠牲を出すだけだとあなた達にもわかるでしょう」
そう野盗達に呼びかけると彼らは仲間同士で視線を交わし合うばかりで、最後の決断を人任せにしようとしているようだった。
すると馬車付近に居残っていたふたりの野盗のうちのひとりがなにやら喚いた。そちらに視線を向けると、ぐったりとした女性を無理やり立たせるようにして襟元を掴み、ショートソードの刃を女性の首元に押し当てていた。もうひとりの野盗は彼を嗜めようとしていたが、喚く野盗に蹴り飛ばされ、腹部を刺し貫かれていた。
腹を押さえて呻く仲間を放置して、人質を取ったつもりの野盗は、ボクに対して喚き散らししていたが、それを無視してボクはウエストポーチからナイフを引き抜き、躊躇うことなく投擲した。
腰が抜けているのか自力で立つことも出来ない女性を盾にしようとした野盗だったが、頭部を狙って投擲されたナイフを防ぐ盾にはならないと気付いたのか、女性を突き飛ばす。ボクは念のため発動待機しておいた奪取スキルで、こちらに背を向けて逃走しようとする野盗のショートソードを奪った。
とどめを刺すべく追撃してもよかったが、今は優先すべきことがあると逃げ出した野盗は捨て置くことにした。
無抵抗となった残りの野盗達を、馬車で戦闘の動向を息を殺して見守っていた男性陣に、拘束するようお願いした。
無言でこくこくと頷き快く了承してくれた彼らにその場を任せ、ボクは最初に襲撃された馬車の元へと駆けた。
人質にされて腰砕けになった女性は、衣服を血で濡らして地面にへたり込み、虚な目をしていた。ぱっと見た限り、彼女自身には外傷はない。彼女の様子から馬車の中に重傷を負った者がいると判断して覗き込む。乗客のほぼ全てが無残な骸に成り果てていたが、その中にひとりだけまだ息のある者がいた。
かろうじて生存していた男性は、ばっさりと袈裟斬りにされ、血塗れで床に転がっていた。彼は息も絶え絶えといった様子だったが、まだ意識はあったらしく、ボクに何事か訴えかけようとした。
それを聞いてやっている余裕はないとボクはウエストポーチから自作の中級ポーションを2本取り出し、彼にふりかける。本職の錬金術師が作った物ではない劣化品とはいえ、多少は治療するための時間を稼げるだろう。ポーションをふりかけられた男は、痛みに呻いた。
「後続の馬車に上級ポーション持ちがいないか聞いてくる。それまでしばしの間、耐えてくれ」
それだけ言い残したボクは、ボクが乗車していた馬車に駆け戻り、上級ポーションの有無を訊ねた。それに対して返って来たのは残念なものだった。
それでも劣化品ではない中級ポーションをひとつ提供してもらえた。それを手にして致命傷の男と元に戻り、それを飲ませると少しは彼の延命に貢献した。だが、彼の傷はあまりにも深く、血を失い過ぎていた。
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それを実行すべく、ウエストポーチから下級ポーションの材料として一般的な薬草を1束を取り出した。そして空のポーション瓶を片手に、薬草と空気中の水分と魔素に対して奪取スキルを発動し、瓶の中へと引き寄せた。するとそれらは空の瓶の中で混ざり合い、ぼんやりと発光する蛍光色の液体が生成された。
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