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046 盗賊さん、顛末を聞かされる。
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結局、なにもわからない状態のままで領主と顔を合わせることになったボクは、ラビィに執務室と思われる場所に案内された。
「お父様、錬金術師のヒイロ様をお連れしました」
「入ってくれ」
中からどこか疲れたような声で返答があった。
「失礼します」
先に入ったラビィに促され、部屋の中に入る。招き入れられた部屋はなかなかに広く、手前に応接セットらしきローテブルとソファがあり、その奥には大きな執務机があった。執務机に着いていたのは、翳りのある表情をしたパパと同年代くらいの金髪男性だった。
「そちらのソファにかけてくれ」
ボクとラビィがソファに着くと領主と思われる男性は、手元の書類作業を切り上げて対面のソファに腰を下ろした。
「まずは招きに応じてくれたこと、感謝する」
「感謝されるほどのことではありませんよ」
「そんなことはないさ。あなたは自覚しておられないだろうが、こちらはいろいろと助けられているのでね」
そう言った領主は上着のポケットからなにやら取り出し、それを操作した。すると少しの間を置いて部屋の扉がノックされた。
「旦那様、お呼びでしょうか」
「入ってくれ」
領主に許可を出され部屋に入って来たのは、これといって特徴のない中肉中背の茶髪執事だった。だけれどその顔には既視感のようなものがあった。彼はボクの姿を目にすると、こちらに歩み寄ってボクに対して深々と頭を下げた。
「ヒイロ様、先日は危険なところをお助けいただきありがとうございました」
彼の言葉がなにを指しているのかわからなかったボクは、首を傾げた。
「申し訳ありません。ボクにはなんのことを指しているのかわかりかねます」
はっきりと覚えていないことを告げたけれど、男性は別段気分を害したような様子はなかった。
「仕方ありません。同じ馬車に同乗していましたが、あまり言葉を交わしておりませんので」
その言葉でボクは彼が誰であるのか、記憶の底から引っ張り出すことが出来た。
「あのときは中級ポーションを提供していただき助かりました」
「いえ、人命がかかっているというのに、私はあれを出し渋ってしまいました」
「仕方ありませんよ。私的に運んでいたものではなかったのでしょう」
そう返しながらボクは領主に視線を送った。すると彼はちいさく頷いた。そのやり取りを見て取った執事の男性は、ボクに一礼して役目は済んだとばかりに領主の背後に移動して控えた。
「あぁ、あれは私が彼に指示して密輸させていた品だよ」
「理由をお聞きしても」
「レッドグレイヴのポーションを解析させるためさ。我が領唯一の錬金術師が他界し、その正確な製法が失われてしまった以上は、他領から技術供与してもらうか、レシピを独自開発するしかなかったのだ。残念ながらレッドグレイヴからの支援は受けられなかったので、こういった手段を取らざるを得なかったが」
パパがボクの追放先としてバーガンディを薦めたのは、それが理由だっりするのかな。初級錬金術師程度の実力しかないボクでも、領主の後ろ盾を得られる可能性が高かったから。
「薬師ギルドにひとり錬金術師が所属していると聞いたのですが」
「それに関しては錬金術師を騙った薬師だと裏は取れている」
「でしたら薬師ギルドの直営店に並んでいるポーションのこともご存知で?」
「あぁ、承知している。衛兵隊の一部が入場者から没収したポーションを薬師ギルドに横流ししていることもな」
「それは薬師ギルドの人間が、独自にポーション作製技術を生み出すことを見越してのことですか」
「そうなってくれると望ましかったのだが、どうやらレッドグレイヴ産のポーションを薄めただけの品を売り捌いているだけのようだな」
下級ポーションしかなかったのも、それが原因かな。中級以上のポーションは、2種類以上のスキルがバランスよく溶け込んでいるから混ぜ物をするとまともに効果を発揮しなくなるからね。
「そのようですね。それと強盗騎士に関してですが、その中にポーションの密輸に関わっていた人物は」
「そこまでわかっているのだな。それに関しては大丈夫だと言いたいが、没収したポーションの横流しを黙認していたことが、今回の結果を招いてしまったようだな。衛兵隊の中に強盗騎士と通じている者がいた」
「特定は済んでいるのですか」
「あなたが強盗騎士の大半を捕縛してくれたことで、特定は簡単だったよ。彼らの根城も既に判明しているし、明日には全て片付く手筈だ」
ボクは隣のラビィにちらりと視線を向けると、肩肘張って座っていた彼女は、力が抜けたように姿勢を崩していた。こんな話を聞かされたら、ヒーローとやらに憧れを抱いているラビィは、ひとりで勝手にやらかしそうな気しかなかった。この一件に関係のないラビィを同席させたのは、どこかで中途半端に話を聞かれるくらいなら、はっきりと近日中に解決予定だと伝えるためだったのかもしれない。
「そうですか。それではボクをここに呼んだ理由をそろそろお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
既に解決したらしい諸々の事に関わる必要はなさそうなので、ボクは本題を聞くべくこちらから切り出した。
「もう察しは付いているだろうとは思うが、あなたには錬金術師として技術指導をしていただきたいのだ」
どうやらそれがボクを領主邸に呼んだ理由のようだった。
「お父様、錬金術師のヒイロ様をお連れしました」
「入ってくれ」
中からどこか疲れたような声で返答があった。
「失礼します」
先に入ったラビィに促され、部屋の中に入る。招き入れられた部屋はなかなかに広く、手前に応接セットらしきローテブルとソファがあり、その奥には大きな執務机があった。執務机に着いていたのは、翳りのある表情をしたパパと同年代くらいの金髪男性だった。
「そちらのソファにかけてくれ」
ボクとラビィがソファに着くと領主と思われる男性は、手元の書類作業を切り上げて対面のソファに腰を下ろした。
「まずは招きに応じてくれたこと、感謝する」
「感謝されるほどのことではありませんよ」
「そんなことはないさ。あなたは自覚しておられないだろうが、こちらはいろいろと助けられているのでね」
そう言った領主は上着のポケットからなにやら取り出し、それを操作した。すると少しの間を置いて部屋の扉がノックされた。
「旦那様、お呼びでしょうか」
「入ってくれ」
領主に許可を出され部屋に入って来たのは、これといって特徴のない中肉中背の茶髪執事だった。だけれどその顔には既視感のようなものがあった。彼はボクの姿を目にすると、こちらに歩み寄ってボクに対して深々と頭を下げた。
「ヒイロ様、先日は危険なところをお助けいただきありがとうございました」
彼の言葉がなにを指しているのかわからなかったボクは、首を傾げた。
「申し訳ありません。ボクにはなんのことを指しているのかわかりかねます」
はっきりと覚えていないことを告げたけれど、男性は別段気分を害したような様子はなかった。
「仕方ありません。同じ馬車に同乗していましたが、あまり言葉を交わしておりませんので」
その言葉でボクは彼が誰であるのか、記憶の底から引っ張り出すことが出来た。
「あのときは中級ポーションを提供していただき助かりました」
「いえ、人命がかかっているというのに、私はあれを出し渋ってしまいました」
「仕方ありませんよ。私的に運んでいたものではなかったのでしょう」
そう返しながらボクは領主に視線を送った。すると彼はちいさく頷いた。そのやり取りを見て取った執事の男性は、ボクに一礼して役目は済んだとばかりに領主の背後に移動して控えた。
「あぁ、あれは私が彼に指示して密輸させていた品だよ」
「理由をお聞きしても」
「レッドグレイヴのポーションを解析させるためさ。我が領唯一の錬金術師が他界し、その正確な製法が失われてしまった以上は、他領から技術供与してもらうか、レシピを独自開発するしかなかったのだ。残念ながらレッドグレイヴからの支援は受けられなかったので、こういった手段を取らざるを得なかったが」
パパがボクの追放先としてバーガンディを薦めたのは、それが理由だっりするのかな。初級錬金術師程度の実力しかないボクでも、領主の後ろ盾を得られる可能性が高かったから。
「薬師ギルドにひとり錬金術師が所属していると聞いたのですが」
「それに関しては錬金術師を騙った薬師だと裏は取れている」
「でしたら薬師ギルドの直営店に並んでいるポーションのこともご存知で?」
「あぁ、承知している。衛兵隊の一部が入場者から没収したポーションを薬師ギルドに横流ししていることもな」
「それは薬師ギルドの人間が、独自にポーション作製技術を生み出すことを見越してのことですか」
「そうなってくれると望ましかったのだが、どうやらレッドグレイヴ産のポーションを薄めただけの品を売り捌いているだけのようだな」
下級ポーションしかなかったのも、それが原因かな。中級以上のポーションは、2種類以上のスキルがバランスよく溶け込んでいるから混ぜ物をするとまともに効果を発揮しなくなるからね。
「そのようですね。それと強盗騎士に関してですが、その中にポーションの密輸に関わっていた人物は」
「そこまでわかっているのだな。それに関しては大丈夫だと言いたいが、没収したポーションの横流しを黙認していたことが、今回の結果を招いてしまったようだな。衛兵隊の中に強盗騎士と通じている者がいた」
「特定は済んでいるのですか」
「あなたが強盗騎士の大半を捕縛してくれたことで、特定は簡単だったよ。彼らの根城も既に判明しているし、明日には全て片付く手筈だ」
ボクは隣のラビィにちらりと視線を向けると、肩肘張って座っていた彼女は、力が抜けたように姿勢を崩していた。こんな話を聞かされたら、ヒーローとやらに憧れを抱いているラビィは、ひとりで勝手にやらかしそうな気しかなかった。この一件に関係のないラビィを同席させたのは、どこかで中途半端に話を聞かれるくらいなら、はっきりと近日中に解決予定だと伝えるためだったのかもしれない。
「そうですか。それではボクをここに呼んだ理由をそろそろお聞かせいただいてもよろしいでしょうか」
既に解決したらしい諸々の事に関わる必要はなさそうなので、ボクは本題を聞くべくこちらから切り出した。
「もう察しは付いているだろうとは思うが、あなたには錬金術師として技術指導をしていただきたいのだ」
どうやらそれがボクを領主邸に呼んだ理由のようだった。
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