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1章 訳あり冒険者と追放令嬢
第15話 次の街を目指して
しおりを挟むロックラプトル討伐を祝し、ちょっとした贅沢を堪能した翌日。
俺達は次の街へ向かうための準備を始めていた。
「隣街は依然と遺物の発見に沸いてるみたいだぜ」
先日の男性職員に情報を求めると、彼は最新情報を語ってくれた。
曰く、土砂崩れによって露出した洞窟の数は全部で五つ。内、三つが地下へ続く階段を有してた。
そのうちの一か所は本格的な探索が始まり、多数の冒険者が地下に進入。
「階段の下には計三階層の構造になってたって話だ。地下一階は特に何も見つからなかったみたいだが、地下二階から遺物が発見されたらしいぜ」
洞窟地下にて、複数の遺物が次々に発見されているようだ。
「既に十個も遺物が発見されたんだとさ。中には既に発見済みの遺物もあるだろうが、新規の遺物も見つかったって話だ」
現在の探索は地下二階までとなっており、もうすぐ地下三階に着手することになっているとのこと。
加えて、洞窟の残り二か所が未探索。
現地では、まだまだ遺物発見のチャンスがあると冒険者達も張り切っているようだ。
「ただ、遺物があるところには危険もつきものだからな」
彼の言った通り、良い話ばかりではない。
遺物とは誰が作ったのか、どうやって作られたのか、謎に包まれた物体だ。
そして、遺物が発見される遺物遺跡もまた謎に包まれているのである。
建築様式、内部構造や内部に使われている装飾らしき物や文化、使用されている材質、それら全てが人類の歴史とは全く嚙み合わないのである。
現存するどの記録にも登場する痕跡が無く、大昔の人間が持っていた技術からは考えられないほど高い建築技術が窺える。
――前置きが長くなってしまったが、これまで発見されてきた遺物遺跡内部には何らかの脅威が潜んでいることが常だった。
今回発見された遺物遺跡もまた、他の場所と同じように危険が潜んでいたようだ。
「遺物遺跡内にいるのは、人間を溶かす黒いスライムだ」
それは遺物遺跡の天井や壁から湧き出るように出現し、進入してきた冒険者に音も無く襲い掛かるという。
黒いスライムに纏わりつかれた人間は一瞬で溶かされてしまい、肉も骨も残らないんだとか。
「ひ、ひい!」
シエルが怯える声を出すのも仕方ない。
通常種であるスライムよりも数倍、いや数十倍も強力な消化能力を有しているのだろう。
「しかもだ。倒そうにも『核』が無いらしいぜ」
粘液の体を持つスライムには核と呼ばれる人間の心臓にあたる部位があるのだが、遺物遺跡内に出現する黒スライムには核が見当たらない。
「まぁ、これに関しては単に色が黒いせいで見えないだけかもしれないな。あと遺跡の中は暗いし」
単に視認できないだけならいいが、本当に『核』が無いとしたら……。
不死身のスライムか? 最悪じゃないか。
「どう対処しているんだろう?」
「流れてきた話によると、見つかったら全力で逃げるしかねえって話だ。まぁ、武器や防具も溶かしちまうんだからしょうがねえよな」
世界中の森や沼地に生息する通常種のスライムにも『消化能力』を有している。噂の黒スライムには劣るが、確かに金属類を溶かす能力を持っているのだ。
しかし、通常種のスライム達は刺激を与えない限り人間を襲わない。
故にこの世界に生きる人のほとんどがスライムを脅威と感じていないだろう。
だが、黒スライムのように積極的な捕食行動が起きたとしたら、俺達人間はスライムに対して勝利できるのだろうか?
そう考えると、この世界は人類を脅かす敵ばかりなんだと改めて考えさせられる。
「普通、危険な魔物が内部に潜んでいたら封印処理がされるんじゃ?」
遺物遺跡内にいた魔物が外に出て、人類を絶滅させてしまいました……なんて笑えない。
よって、あまりにも危険な生物がいた場合は遺物遺跡の入口に『封印処理』を行う。
物理的にも入口を封じ、更には大魔法使いや賢者にお願いして魔法的な封印も施してもらうのである。
「そうなんだがな。今もまだ探索が続いているってことは大丈夫なんじゃねえの?」
男性職員は「そこまで詳細な話は入っていない」と肩を竦めた。
「次は遺物で一攫千金を狙うのか?」
「まぁ、そんなところだね」
男性職員に頷きを返す。
「道中に関する情報はどうかな?」
「特に問題はねえな。ラプトル騒ぎで森の魔物が移動しているが、街道を邪魔する魔物もいないし」
遺物発見の噂が流れたあと、該当の街を目指して旅する冒険者、商売の匂いを察知して向かう商人の数が多くなった。
人の往来が激増したことにより、むしろ街道に近付く魔物は減っただろう、と。
「そうか。ありがとう」
「おう、またこの街に立ち寄ることがあれば声を掛けてくれよな」
男性職員に礼を言い、俺達は組合を後にした。
「次の街までは安全そうですわね」
「そうだね。徒歩だと二日ほど掛かるから、二日分の食料を調達して出発しようか」
市場で食料を調達し、続けて魔法用品店で中魔石を三つ購入。
前回とほぼ変わらない買い物を昼までに終わらせて、俺達は次の街を目指して出発した。
「また野宿しなければなりませんのね……」
出発早々、シエルはため息を吐き出した。
たぶん、背中が痛くなるのが嫌なんだろう。あとは異界生物を目撃してしまったことも関係しているのかもしれないが。
「慣れだよ、慣れ」
そう言いつつも、俺達はゆっくりとしたペースで街道を行く。
道中、頻繁に目撃できるのは商人の馬車だ。
護衛の冒険者を同乗させた馬車が何度も俺達を追い越して行く。
情報通り、次の街は大賑わいになっているのだろうな。
「ところで、次の街では遺物遺跡を探索しますの?」
シエルは嫌そうな顔を見せながら問う。
組合で黒スライムの話を聞いたせいだろう。
「ん~、どうだろう」
「どうだろうって……。貴方の目的は蒼の聖杯を探すことではなくて?」
彼女はちょこんと首を傾げた。
「うん、確かにそうなんだけどね。蒼の聖杯が保管されている場所があるんだよ」
「保管されている場所? 遺跡ではなく?」
「蒼の聖杯は『聖域』と呼ばれる場所に保管されているんだ」
「聖域……?」
蒼の聖杯は遺物の中でも特別な存在だ。遺跡内部から複数発見される遺物とは訳が違う。
「蒼の聖杯を保管する特別な場所があるらしいんだよ。だから、まずは聖域を探さないとね」
「ふぅん……。その情報は正確ですの? 騙されているんじゃなくて?」
「いや、間違いないと思うよ」
これに関しては正しいと思う。
情報を裏付ける証拠も手に入っているからね。
「街についたら遺跡の情報を確認しよう。聖域に関する情報が得られたらそこへ向かうよ」
「得られなかったら?」
「次の街を目指して旅を再開するのさ」
そうして、俺はこれまで旅を続けてきた。
シエルが旅の仲間として加わってもそこは変わらない。
「あとは、そうだなぁ……。次の街で魔法紙の補充もしたいね」
「魔法紙の補充を? 次の街には高名な魔法使いがおりますの?」
「いや、わからない。こればっかりはタイミングと運かな?」
「んん……?」
彼女は頭の上に疑問符を浮かべながら首を傾げてしまう。
「まぁまぁ。着いてからのお楽しみってことで。今はのんびりと旅を楽しもうよ」
俺達は他愛もない話を続けながら旅を続け、予定通り二日後の夕方に街へ辿り着いた。
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