婚約破棄されたので全員殺しますわよ ~素敵な結婚を夢見る最強の淑女、2度目の人生~

とうもろこし

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本編

23 連邦入国とイケメン

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 ラインハルト王国王都から西に向けて出発したリーズレット達。道中で立ち寄った町ではレジスタンスが行った革命の話題で持ち切りだった。

「王族は全員殺されたらしい」

「次は誰が国のトップになるんだ? レジスタンスのリーダーか?」

「西の貴族達が軍を集めて王都奪還に動き始めた」

「王都には赤い悪魔がいるって噂知ってる? 一瞬で王国軍の砦をぶっ壊したらしいぜ」

 と、どの町でも囁かれるのはこの辺り。特に王族が死んだ事で次のトップは誰になるのか、という予想する話題が多かった。

 次点でどこの誰がレジスタンスに所属しようと王都に向かった、などという話題だろうか。

 赤い悪魔の話題はそこまで出ない。恐らく内容がぶっ飛びすぎてて信じ難い……都市伝説的なポジションになっているのかもしれない。

 ともあれ、リーズレットは西を目指す。

 本来であれば女性を国外逃亡させないよう国境沿いには検問やら監視の目が多くあるのだが、西側を支配する貴族達はレジスタンスの対応に追われて国外へ出ようとする者を取り締まる余裕もない。

 悠々と国境を抜けてラインハルト王国から抜け出す事に成功した。

 ラインハルト王国国境を抜けると隣国であるベレイア連邦との間に流れる幅100メートル程度の大河を渡る為の橋がある。

 この大河を渡った先にあるベレイア連邦国境事務所で入国手続きをすれば良いのだが。

「女? 珍しいな」

 橋を渡った先にある国境事務所で、車に乗っているリーズレットの顔を見たベレイア軍人が言い放った最初の一言がこれである。

 ラインハルト王国は女性を国外に逃がさないようにしているので、そちら側から女性が来れば当然の感想かもしれない。

「ラインハルト王国人ではございませんわよ」

 対し、リーズレットは多くを語らずに「違う」とだけ。パスポートの類や入国審査等も緩いこの世界では拒否しつつ、少ない情報を与えれば勝手に相手が解釈してくれる。

「ふぅん。ベレイアの法律は知っているか?」

 リーズレットは軍人が述べるベレイア連邦において重罪にあたるいくつかの犯罪を聞きながら頷いた。

 といっても、ラインハルト王国ほど特殊な法律や思想はない。盗み、殺し、破壊行為は重罪であるというだけ。

 これら3つは重罪であるが、加えて連邦国内において傭兵同士の諍いに国は介入しない。つまりはベレイアの一般人を傷付けたり、一般人からの告発が無い限りは関与しないという事だ。

「なるべく、問題は起こすなよ」

 最後にそう言われ、目の前にあった門が開く。

 リーズレットは保証しかねるために返答はせず、車を発進させた。


-----


 ベレイア連邦に入国してから西を目指して2時間程度。

 やはり周囲の景色はラインハルト王国同様に前時代の建物が崩れた残骸が散らばる荒野が続き、変わり映えのないつまらない景色が広がっていた。

 そんな変化もない道をただひたすらに真っ直ぐ走るだけ。さすがに退屈な気持ちを隠し切れないリーズレットはドアに肘をつきながらボーッと片手運転していた。

 隣にいるサリィも眠そうに目をしょぼしょぼさせていると、看板らしき物を見つける。

「お嬢様、看板があります」

 看板の近くで減速して、内容を見ると町まであと何キロという案内であった。

「さすがに疲れましたわね。今日はこの町で休みましょう」

「はいですぅ~」

 看板の案内通り……といっても複雑な街道などは整備されていないので直進10キロ先としか書いてないが。

 ぼーっと運転しながら町まで辿り着くと、そこは意外と賑わっている中規模な町であった。

 宿屋や雑貨屋、食料品店などは数軒存在しているし、魔導車を盗まれないよう防犯機能付きのパーキングまであるではないか。

 まずはパーキングに停車し、車内の警備をロビィに任せてリーズレットとサリィは外に出る。

「ん~」

 退屈な運転で固まっていた体を伸ばす2人。ふぅ、と息を吐いて町を見渡した。

 ラインハルト王国内とは随分と雰囲気も違う。歪んだ思想が存在しない国だからか、活気のあるメインストリートを行く人々の表情など全てが明るく見えた。

 いや、王国が異常なだけか。

 こちらが正常な町の雰囲気であるが、違和感を感じるのはやはり王国暮らしが長かったせいだろう。

「ついでに換金もしましょう」

「そうですね」

 宝物庫から奪った宝石をいくつかと王国紙幣全てをバッグに詰めて出発。

 赤いドレスを着た美の化身は町行く老若男女にジロジロ見られながら、まずは連邦銀行を目指す。

 大量に奪ったラインハルト王国紙幣をベレイア連邦国内で使用するベレイア紙幣に換金せねば話が始まらない。

 が、ここで問題発生。 

「ラインハルト王国はただいま内戦で不安定となっていますので、現在はお取引停止となっております」

「…………」

 銀行のカウンターにいた女性が淡々と告げる。

 内戦で行く末わからない、ヘタしたら消えるかもしれない国の金など欲しがる国がいるだろうか。特に一度世界が滅んだという経験のあるこの世界では、各国は他国の行く末というものに非常に敏感になっているという理由もあった。

 国内情勢が安定するまでは対象国の紙幣換金を停止するのが世界基準。隣国であるベレイア連邦はいち早く革命の件を嗅ぎつけて取引を停止したというわけだ。

 これがもしも、ラインハルト王国から遠い国だったとしたらまだ取引が行われていたかもしれないが……。

 とにかく、リーズレットの抱える大量のラインハルト王国紙幣はゴミと化したわけである。

 リーズレットは内心でリーリャに対して怒りの炎を燃やした。

 何チンタラやってんだ。だからさっさと王都を更地にして新体勢の宣言しときゃよかったんだ、と。

 確かにそうしていれば、換金レートは低くなったものの取引自体は停止されていなかっただろう。

 リーズレットはここまで大事に抱えて来た紙幣を全てバッグから抜き取って、カウンターに積み上げる。

 担当の女性が「お客様」と声を掛けるが無視。山のように積み上げた紙幣を見せながら、一言申し付けた。

「このゴミ、処分しておいて下さいまし」 

 ラインハルト王国内では5000万以上の価値がある紙幣であるが、ここではゴミに変わりない。だって使えないもの。

 リーズレットはゴミを大事に抱えるような女性ではない。彼女は積み上げた紙幣をカウンターに放置して銀行から立ち去った。

 彼女が立ち去ってから豪快な客が来たもんだと銀行員の中で話題になったのは必然である。

 それはさておき、換金できなかったリーズレットが次に目指したのは町の宝石店。

 そこで宝石を換金しようという考えだ。宝石ならば出土する種類に左右されるものの、紙幣よりは信頼性が高いので換金できないという事は無いだろう。

「500万でどうだい?」

「よろしくてよ」

 これで当面の生活費は確保する事が出来た。 

 まだ宝石は残っているものの、まずはこれだけ。また金が少なくなったら換金しようと決めて次はお待ちかねの食事タイム。

 宝石店の店主にオススメの店を聞いて足を運ぶ。

 入り口がスイングドアになっている木造の建物、酒場と料理屋が一緒になったタイプの店の中にサリィと入った。

 ウエイトレスに席へ案内されて、オススメの料理を注文。待っていると……よくある展開に遭遇する。

「お姉ちゃん、綺麗だねえ」

 酒に酔った大男がリーズレットとサリィの間に割り込んでゲスな笑みを浮かべた。

 こうなるのも仕方がない。なんたってリーズレットは美の化身。サリィも愛らしい容姿の持ち主だ。

 大男は傭兵のようで、女っ気の無い仕事をしているせいか色々なモノが溜まっているのだろう。

「食事の邪魔でしてよ。消えて下さいまし」

 何日も風呂に入ってないせいか、体臭も酷い。口から漂う息も酒臭い。そんな男など興味がない。

 こういった男はリーズレットにとって理想の旦那様候補というよりは殺害リストに載るタイプだ。

「いいじゃねえかよぉ」

 しつこい男にアイアン・レディを抜きかけるが、ここで更に割って入る者が現れた。

「おい、嫌がっているだろう。やめろ」

 男の体を押し退けた人物――サラサラな金髪ヘアーな爽やか系イケメン男子だった。

「大丈夫かい? レディ。すぐに退かすよ」

 イケメンはリーズレットを見て、ニコリと笑うと彼の白い歯がキラッと光った。

「まぁ……!」

 割って入って来た爽やかイケメンの顔を見てポッと頬を染めるリーズレット。

 顔は好み。体は細マッチョ。紳士的な態度。

「テメェ! 邪魔すんじゃねえ!」

「ふん。レディの食事を邪魔しているのは君じゃないか」

 殴りかかる大男のパンチを華麗に躱して、足を引っ掛けて床に倒す。倒れ込んだ大男に剣を向けて失せろと命令するイケメン。

「まぁ……!」

 イケメンでそこそこ強い。リーズレットはイケメンを気に入ってしまった。  

「それでは」

「待って下さいまし! 助けて下さってありがとうございます。お礼に一杯ごちそうさせて下さいませんこと?」

 立ち去ろうとするイケメンを呼び止めるリーズレットの目はハートになっていた。

「お、お嬢様?」

 主の変化にサリィが戸惑うのも無理はない。

 彼女は最強であるが前世からそうだったが、意外とチョロインなのである。
 
 いや、最強故にそうなったのか。

 自分に恐怖せず話しかけてくれる男が好みの容姿をしていたならば、ちょっとでも女性扱いしてくれて大事にしてくれそうな素振りを見ただけで気になってしまう。

 最強故に……横に並び立つ他者がいない者の悲しい現実があった。

「そうかい? では、ごちそうになろうかな」

 呼び止められたイケメンは爽やかな笑みを浮かべながらリーズレットの隣に腰を降ろす。

「こうして近くで見ると、改めて君の美しさがわかるね」

「まぁ! ふふふ」

 ご機嫌なリーズレットは彼のグラスに酌をしたり、酔ったフリをして肩に頭を乗せてみたり。

「レディ、酔っ払ってしまったのかい? そんな君も美しいよ」

「まぁまぁ! うふふ☆」

 チョロイ。隣にいるサリィが無言になるほどチョロイ。自分好みのイケメンに対しては徹底的にチョロくなる姿勢は前世と同じ。

 とにかくボディタッチ多めの猛アピールをしながらイケメンとの楽しいひと時を過ごした。

 今日は解散となったが、次の日もまた食事をしようと約束を取り付けたリーズレットはルンルン気分でスキップしながら宿屋に向かう。

 宿屋のベッド上でゴロゴロ転がりながら、

「さっそく見つけましてよ! 理想の旦那様候補ですわ~!」

 と大興奮である。

 これはチャンスだ。

 できれば国のトップと結婚して将来を約束された最高の生活を送りたいが、前世で結婚できなかったのはきっと高望みしすぎたせいだと彼女は反省したのである。

 今世はわがままを言うまい。

 彼は爽やかイケメンだった。細身であったが服の袖から見える腕には筋肉もついていた。声も甘く、態度も紳士的。

 リーズレットの好みにバッチリ当てはまる好条件だ。身分は目を瞑ろう、と人生2周目のリーズレットは妥協という概念をようやく覚えつつあった。

「明日は手を繋ぐところまで行きたいですわねえ!」

 さっそく旦那様との甘い生活が始まっちゃうかも!? と妄想するが……。

「お嬢様……。むむむ」

 サリィは何かを考えるかのように顎に手を当てていた。

「ちょっとお買い物に出てきますぅ~」

 キャッキャするリーズレットを部屋に残し、サリィは部屋を出て外に向かうのであった。
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