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2話「レストラン・バッケン」
しおりを挟む王都の一等地にあるレストラン「バッケン」は僕の行きつけの店だ。
本当なら予約が必要な店だが、候爵令息である僕のような超VIPは予約なしで入れる。
しかも個室で特別なサービスを受けられる。
「バッケン」の経営者がエアハルト伯爵なのは気になるが、まぁいっか。
ブルーナとの婚約を破棄されたぐらいで出禁にはならないだろう。
なにせ僕は高位貴族の息子で「バッケン」のお得意様なのだから!
意気揚々と扉を開け、ウェイターに個室に案内するように伝えた。
ウェイターは「少々お待ちください」と言って下がっていった。
なんだ? なぜ待たせるんだ?
この僕を誰だと思っているんだ?
しばらく待っていると支配人がやってきて、
「申し訳ございませんヴェルナー侯爵令息。
エアハルト伯爵から貴方様をお通しするなと命じられております」
そう言われた。
まさか侯爵令息であるこの僕が、たかがレストランで門前払いされるとは思わなかった。
「僕はヴェルナー侯爵家の嫡男だそ!」
高級レストランの支配人とはいえ平民!
平民のくせに貴族である僕を門前払いするとは生意気な!
「どうしてもとおっしゃる場合、代金を前払いして頂くようにエアハルト伯爵から命じられております」
「前払いだと?
分かった。払ってやる。釣りはいらない取っておけ」
僕は財布から銀貨一枚を取り出し支配人に渡した。
この店は一等地に建っているが値段はリーズナブルなのだ。
友人や浮気相手を誘って何度も来たことがある。
友人の分も含め、毎回食事代は僕が支払っていた。
数人で飲み食いしても銀貨二、三枚で済んでいたんだ。
一人分の料金としては銀貨一枚で十分のはず。
「失礼ですがヴェルナー侯爵令息、これでは水一杯お出しできません」
支配人に失笑された。
「えっ?」
支配人の言葉に僕は虚をつかれた。
「当店での一人前の料金は最低金貨三枚は支払って頂きませんと。
いやヴェルナー侯爵令息は大食漢なので金貨三枚では足りないかもしれません。
金貨六枚は出していただきたいです」
「一人分の料金が金貨三枚だと!!
今までの三十倍じゃないか!
しかも僕は大食漢だから金貨六枚は払えだと?!
ブルーナとの婚約が破棄された途端にぼったくるつもりか!」
酷い店だ! 許せん!
「ぼったくりではありません。
正規のお値段を申し上げたまでです。
今まではヴェルナー侯爵令息がブルーナお嬢様の婚約者だっので格安で提供していたのです」
「なにっ!」
「ブルーナお嬢様がヴェルナー侯爵令息を当店に連れて来られたとき、ヴェルナー侯爵令息は『ここは僕が払う』と気前よくおっしゃいました」
覚えている確か三年前、この店が開店したときだ。
「そのときヴェルナー侯爵令息から出されたのがたったの銀貨二枚。
ヴェルナー侯爵令息は高級レストランの相場も知らないのかと従業員一同失笑しました。
ブルーナお嬢様は『ヴェルナー侯爵令息に恥を欠かせてはいけません』とおっしゃり、わたくし共に銀貨二枚で支払いを済ませるように命じたのです。
あのときの食事代は二人分で金貨八枚はしたのですよ」
「そうだったのか……」
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