15 / 18
15話「……こんな未来視は照れます!」
しおりを挟む「『私はハルがいれば何もいらないよ。ハルが大好きだよ。ハルは私とずっと一緒にいてくれるよね?』って、言っただろ?
あれって君から僕へのプロポーズだよな?」
「えっと……」
それは犬のハルに言った言葉で、殿下に言った訳では……。
いや、ハル=殿下だから、ハルに言ったことは殿下に言ったことになるんだけど……。
「僕はその時、『もちろん』って意味を込めて『ワン』って吠えて、フィオナにキスしただろ?」
犬のハルだったからキスを受け入れた訳で、殿下と知っていたらキスしていたかどうかは分からない。
口づけのことを考えたら、殿下の唇に目がいってしまった。
殿下の唇は桃色で、瑞々しくて、柔らかそうで……彼に口づけを迫られたら拒める自信はない。
「へぇ……殿下は犬の姿を利用して……妹にキスしてたんですね」
「娘が……知らない間に、汚されてしまった……」
「あらあら、二人共おませさんね」
黒いオーラを放ち、何故か不機嫌そうな兄、めそめそと泣き出す父、楽しそうな母……部屋の中はカオスだった。
私としても家族の前で犬のハルとキスした話をバラされて、いたたまれない気分だ。
「フィオナは僕の運命の番なんだ! お風呂で君の匂いを嗅いだとき、君しかいないと思ったんだ!」
「お風呂で匂いを嗅いだ……?」
「フィオナは……もうお嫁にいけない体に……!」
「あらあら、まぁまぁ」
兄はさっきより不機嫌だし、父は号泣してるし、母は相変わらずふわふわしてるし……部屋の中はさっきよりカオスと化していた。
「あっ、あれは殿下が犬の姿だったからで……!」
そっか……私、仔犬のハルと一緒にお風呂に入ったんだ……。
ということは……殿下に……全部、見られた……??
私の顔に急速に熱が集まってきた。
私も殿下の全部見ちゃったからおあいこかもしれないけど、あれは事故で、見たくて見たわけではない。
それに、男と女では裸を見られた時に受けるダメージが違う。
家族の前で恥ずかしい秘密を暴露され、私は公開処刑されてる気分だった。
「フィオナは相手が浮気するのが心配なんだろう?
俺の手を握って、未来を見てほしい」
殿下が微笑みを浮かべ、私に手を差し出した。
私は彼の手に触れることをためらった。
今まで嫌な未来を見すぎたせいで、自分に向けられる行為に臆病になってしまったようだ。
私が迷っているのを察した殿下が私の腕を掴んだ。
殿下は私の服の上から腕を掴んだので、皮膚と皮膚の接触がないので、相手の未来は見えない。
殿下は愛おしそうに私を見つめてきた。
「番を見つけた犬族は番以外を愛さない!
約束するよ、絶対に浮気をしないと!
君だけを永遠に愛すると誓うよ!」
殿下……!
彼の真摯な言葉に私の胸がドクンと音を立てる。
「婚約者でも恋人でもない相手に、相手の同意を得ずに触れるのはどうかと思いますよ殿下……」
「娘がわしの目の前でプロポーズされている……!」
「あらあら、まぁまぁ」
家族の言葉で、私は部屋の中の空気が以前よりカオスと化していることに気づいた。
殿下、お気持ちは嬉しいのですがプロポーズするなら場所を選んでください!
家族の目の前で求婚されても……返事に困ってしまいます!
「愛してるフィオナ。
僕を受け入れてほしい」
殿下は私のそんな気持ちなど全く察する気配がなく、ぐいぐい迫ってくる。
このままでは殿下にキスされてしまいそうだ!
「殿下、落ち着いてください……!」
私は彼を制止しようとした。その時、私の手が彼の手に触れてしまった。
その瞬間、殿下との未来が視えた。
『ハル……私、まだ……心の準備が……』
『初夜に、そんなもの待てるわけないだろ』
『ハル、待って……』
『愛してるよ、フィオナ』
未来を視た瞬間、カーと音を立てて私の顔に熱が集まってきた。
私はネグリジェを着ていて、殿下は寝間着姿で、多分場所は寝室で……殿下が私に迫ってきて…………ああーー!! これ以上は言えない!
なんでこんな破廉恥な未来が視えるのよ!
殿下とのラブラブな未来を見せるなら、結婚式とか、パーティーでダンスしてるところとかにしてよ!
「フィオナ、顔が真っ赤だけど何が視えたの?」
家族がいる場所では絶対に言えない未来です! ……とは言えない。
今すぐ走ってこの場から逃げ出したいけど、あいにく私は足を捻挫しているのでそれもできない。
「もしかして、周りに人がいるから話しにくいのかな?
じゃあ今からフィオナの部屋に行こう!」
「えっ?」
抵抗する暇もなく、気がついたら私は殿下にお姫様抱っこされていた。
「ちょっ……! 殿下……!
下ろしてください……!」
「大丈夫、犬の姿でしばらく暮らしていたから、この屋敷の部屋の配置は覚えてるから。
フィオナの部屋まで迷わずにいけるよ」
私はそういう心配をしてるんじゃありません!
家族の前でお姫様抱っこをされるのは、恥ずかしいと言いたいんです!
「殿下、そういう意味で言った訳では……」
「さぁ、行こう!」
私が制止する隙もなく、殿下は私を抱きかかえたまま、応接室を飛び出していった。
「お待ち下さい! 殿下!」
白装束の人が私達の後を追ってくる。
「お座り! 待て!
フィオナにプロポーズの返事を聞くまで、お前達はそこで待機してること!」
殿下が白装束の人達にそう言うと、白装束の人達はその場に座り込んで動かなくなってしまった。
262
あなたにおすすめの小説
英雄の可愛い幼馴染は、彼の真っ黒な本性を知らない
百門一新
恋愛
男の子の恰好で走り回る元気な平民の少女、ティーゼには、見目麗しい完璧な幼馴染がいる。彼は幼少の頃、ティーゼが女の子だと知らず、怪我をしてしまった事で責任を感じている優しすぎる少し年上の幼馴染だ――と、ティーゼ自身はずっと思っていた。
幼馴染が半魔族の王を倒して、英雄として戻って来た。彼が旅に出て戻って来た目的も知らぬまま、ティーゼは心配症な幼馴染離れをしようと考えていたのだが、……ついでとばかりに引き受けた仕事の先で、彼女は、恋に悩む優しい魔王と、ちっとも優しくないその宰相に巻き込まれました。
※「小説家になろう」「ベリーズカフェ」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
治療係ですが、公爵令息様がものすごく懐いて困る~私、男装しているだけで、女性です!~
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
『沈黙の聖女』と呼ばれ蔑まれる私ですが、喋れない代わりに『神々の心の声』が全部聞こえるので、そろそろ神託(と称して暴露)の時間です
白桃
恋愛
言葉を失った聖女候補、アリアンナ。神殿で「役立たず」と虐げられる彼女の唯一の慰めは、神々の(かなり俗っぽい)心の声を聞くことだった。ある日、ライバルにいじめられているところを、真面目な騎士団長ライオスに助けられる。彼もまた、内心ではアリアンナを心配し、惹かれているようで…? 声なき聖女候補と、その心の声(と神々の声)が織りなす、ちょっと不思議で心温まる恋物語が今はじまる。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた
小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。
7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。
ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。
※よくある話で設定はゆるいです。
誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。
神の子扱いされている優しい義兄に気を遣ってたら、なんか執着されていました
下菊みこと
恋愛
突然通り魔に殺されたと思ったら望んでもないのに記憶を持ったまま転生してしまう主人公。転生したは良いが見目が怪しいと実親に捨てられて、代わりにその怪しい見た目から宗教の教徒を名乗る人たちに拾ってもらう。
そこには自分と同い年で、神の子と崇められる兄がいた。
自分ははっきりと神の子なんかじゃないと拒否したので助かったが、兄は大人たちの期待に応えようと頑張っている。
そんな兄に気を遣っていたら、いつのまにやらかなり溺愛、執着されていたお話。
小説家になろう様でも投稿しています。
勝手ながら、タイトルとあらすじなんか違うなと思ってちょっと変えました。
『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』
ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています
この物語は完結しました。
前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。
「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」
そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。
そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる