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5話「その方は颯爽と現れた」
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――レーア・カイテル視点――
第一王子に食堂に呼び出されたので行ってみると、第一王子の隣には腕に包帯を巻いたシフ伯爵令嬢の姿があった。
「レーア・カイテル!
貴様見下げ果てた女だな!」
第一王子が私を突き飛ばし、
「レーア・カイテル! 貴様との婚約を破棄する!」
と言い放った。
第一王子がシフ伯爵令嬢と懇意に……はっきりと言えば浮気をしているのは知っていました。
第一王子が私を疎ましく思っていることも存じておりました。
卒業前に何かしかけてくるとは思っていましたが、学園の食堂で婚約破棄してくるとは思わなかった。
下劣だし、幼稚だわ。
私の学友兼メイドのチェイが、心配そうにこちらを見ている。
何もしないようにチェイに目で合図を送る。
チェイはポケットから録音機を取り出し、スイッチを入れていた。
チェイのそういう抜け目がないところが好きだわ。
「レーア・カイテル!
貴様は伯爵令嬢のハンナ・シフに嫉妬し、彼女を大衆の前で罵ったな!
それだけでも許しがたいことだが、貴様は昨日の二時間目と三時間目の休み時間、東校舎でハンナを階段の上から突き飛ばし、殺そうとしたな!」
「怖かったですわ~。
ベルンハルト様~」
シフ伯爵令嬢が王子殿下によりかかり、泣く真似をした。
嘘なきなのがバレバレです。
もう少しうまくやりなさい。
「ハンナは幸い腕に怪我をしただけで済んだが、彼女は腕に怪我を負った。
貴様のような心の醜く暴力的な女は我が国においておけない、よって貴様を国外追放とする」
シフ伯爵令嬢の口元がかすかに上がるのを、私は見逃さなかった。
この子はだめね。
なんでも顔に出るようでは、とても王子妃は務まりそうにないわ。
第一王子に婚約破棄を言い渡された私の知ったことではないけど。
「殿下、お言葉を返すようですが、私がハンナ様を階段の上から突き飛ばしたという証拠はありまして?」
証拠ぐらい流石に用意しているのかしら?
「私~突き飛ばされるとき、とっさに~犯人の手を引っ掻いたんです~」
「貴様の右手の甲にある包帯、それはハンナに引っかかれた傷を隠すためのものだろな!
素直に白状しろ!
貴様の罪は明白だ!」
殿下が私を罵った。
シフ伯爵令嬢は私を見下し、殿下から見えない角度でほくそ笑んだ。
証拠ってそれだけですか?
大方私が右手に怪我をしたのを知って、この計画を立てたのでしょうけど。
シフ伯爵令嬢が階段から落ちたというのも、嘘なんだろう。
左手に包帯を巻いているが、本当は怪我なんかしてないのだろう。
それとも私をはめるために、階段から落ちて本当に怪我をしたのかしら?
シフ伯爵令嬢には、そこまでする勇気も度胸もないわね。
こんな安っぽい三文芝居に、いつまで付き合わなくてはいけないのかしら?
ちらりと周囲を見ると、私と目が合った瞬間視線を逸らされた。
食堂には先生も生徒会で一緒だった仲間も、クラスメイトもいたが、誰も私と目を合わせなかった。
学園に入学してからの三年間。
周囲に認められるように努力してきたつもりだった。
でも友達一人作れなかったようね。
ここにいる全員が第一王子の顔色を伺っている。
誰も私と目を合わせようとしない。
長い物に巻かれる、より力のあるものに付く、貴族としては正しい選択。
こんな茶番劇は私一人でも終わらせることは可能だ。
でも何かしら?
胸の奥に広がるこの虚しさは。
一人でもいいか、使用人のチェイ以外に味方になってくれた人がいたら救われるのに。
彗星のように現れて、私を助けてくれる人がいたら……私はきっとその方に惚れてしまうわ。
そんな人いるはずもないのに……乙女チックな夢を見ているなんてバカみたいだわ。
さてと立ち上がって、スカートのホコリを払い、殿下に反論しなくては。
「罪人レーア・カイテルを拘束しろ!」
第一王子が側近に命令したそのとき、
「お待ちください!」
その方は颯爽と私の前に現れた。
第一王子に食堂に呼び出されたので行ってみると、第一王子の隣には腕に包帯を巻いたシフ伯爵令嬢の姿があった。
「レーア・カイテル!
貴様見下げ果てた女だな!」
第一王子が私を突き飛ばし、
「レーア・カイテル! 貴様との婚約を破棄する!」
と言い放った。
第一王子がシフ伯爵令嬢と懇意に……はっきりと言えば浮気をしているのは知っていました。
第一王子が私を疎ましく思っていることも存じておりました。
卒業前に何かしかけてくるとは思っていましたが、学園の食堂で婚約破棄してくるとは思わなかった。
下劣だし、幼稚だわ。
私の学友兼メイドのチェイが、心配そうにこちらを見ている。
何もしないようにチェイに目で合図を送る。
チェイはポケットから録音機を取り出し、スイッチを入れていた。
チェイのそういう抜け目がないところが好きだわ。
「レーア・カイテル!
貴様は伯爵令嬢のハンナ・シフに嫉妬し、彼女を大衆の前で罵ったな!
それだけでも許しがたいことだが、貴様は昨日の二時間目と三時間目の休み時間、東校舎でハンナを階段の上から突き飛ばし、殺そうとしたな!」
「怖かったですわ~。
ベルンハルト様~」
シフ伯爵令嬢が王子殿下によりかかり、泣く真似をした。
嘘なきなのがバレバレです。
もう少しうまくやりなさい。
「ハンナは幸い腕に怪我をしただけで済んだが、彼女は腕に怪我を負った。
貴様のような心の醜く暴力的な女は我が国においておけない、よって貴様を国外追放とする」
シフ伯爵令嬢の口元がかすかに上がるのを、私は見逃さなかった。
この子はだめね。
なんでも顔に出るようでは、とても王子妃は務まりそうにないわ。
第一王子に婚約破棄を言い渡された私の知ったことではないけど。
「殿下、お言葉を返すようですが、私がハンナ様を階段の上から突き飛ばしたという証拠はありまして?」
証拠ぐらい流石に用意しているのかしら?
「私~突き飛ばされるとき、とっさに~犯人の手を引っ掻いたんです~」
「貴様の右手の甲にある包帯、それはハンナに引っかかれた傷を隠すためのものだろな!
素直に白状しろ!
貴様の罪は明白だ!」
殿下が私を罵った。
シフ伯爵令嬢は私を見下し、殿下から見えない角度でほくそ笑んだ。
証拠ってそれだけですか?
大方私が右手に怪我をしたのを知って、この計画を立てたのでしょうけど。
シフ伯爵令嬢が階段から落ちたというのも、嘘なんだろう。
左手に包帯を巻いているが、本当は怪我なんかしてないのだろう。
それとも私をはめるために、階段から落ちて本当に怪我をしたのかしら?
シフ伯爵令嬢には、そこまでする勇気も度胸もないわね。
こんな安っぽい三文芝居に、いつまで付き合わなくてはいけないのかしら?
ちらりと周囲を見ると、私と目が合った瞬間視線を逸らされた。
食堂には先生も生徒会で一緒だった仲間も、クラスメイトもいたが、誰も私と目を合わせなかった。
学園に入学してからの三年間。
周囲に認められるように努力してきたつもりだった。
でも友達一人作れなかったようね。
ここにいる全員が第一王子の顔色を伺っている。
誰も私と目を合わせようとしない。
長い物に巻かれる、より力のあるものに付く、貴族としては正しい選択。
こんな茶番劇は私一人でも終わらせることは可能だ。
でも何かしら?
胸の奥に広がるこの虚しさは。
一人でもいいか、使用人のチェイ以外に味方になってくれた人がいたら救われるのに。
彗星のように現れて、私を助けてくれる人がいたら……私はきっとその方に惚れてしまうわ。
そんな人いるはずもないのに……乙女チックな夢を見ているなんてバカみたいだわ。
さてと立ち上がって、スカートのホコリを払い、殿下に反論しなくては。
「罪人レーア・カイテルを拘束しろ!」
第一王子が側近に命令したそのとき、
「お待ちください!」
その方は颯爽と私の前に現れた。
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