【完結】「第一王子に婚約破棄されましたが平気です。私を大切にしてくださる男爵様に一途に愛されて幸せに暮らしますので」

まほりろ

文字の大きさ
17 / 22

17話「教育と成長と変化」

しおりを挟む


――レーア・カイテル視点――



私が嫁ぐにあたり、オーベルト男爵家を改装中。

改装というより、新築に近いですね。

お父様がオーベルト男爵家の近隣の土地を買い上げていましたから、元の大きさの十倍の敷地面積に、男爵家の元の屋敷の五倍ほどの大きさのお屋敷が建ちそうですわ。

改装工事の間、ミハエル様とお義母様はカイテル公爵家に住むことになりました。

私とミハエル様は正式に婚約しておりますので、一緒の家に住んでも問題ありませんわ。

当然というべきか、残念というべきか、ミハエル様と私の部屋は別々。

お父様ったら、ミハエル様の部屋を私の部屋から一番遠い部屋にしてしまったの、あんまりだわ。

ミハエル様は私の伴侶になる試練として、領地経営の仕方や、歴史、経済学、マナー、ダンス……などなど、家庭教師について習っています。

ミハエル様の学園入学時の成績は三番目でした。

入学後に行われたテストの成績も学年で五番目。

元王子のベルンハルト様が、成績よりも身分でクラス分けをするように学園に圧力をかけていなければ、私とミハエル様は同じ特進クラスだったかもしれませんわ。

ミハエル様のお父様である前男爵が亡くなってからは、学園と男爵家の領地経営の両立が難しかったのか、一気に成績が下がりましたが、それは仕方ないこと。

ミハエル様と婚約してから、男爵家の領地経営に関わらせていただきましたが、過去の資料に目を通して分かったのはミハエル様のお仕事ぶりは悪くないということ。

ただミハエル様が当主になってから、冷害による農作物の不作や、モンスターが農作物を食い荒らすなど、災害が続いたのは不運でしたわ。

男爵領に出現するモンスターは私が倒しますし、農作物の不作はお母様の魔法でなんとかなりますし、足りない分の食糧はカイテル公爵家から援助するから、男爵領の抱えていた問題は全て解決ですわ。

ミハエル様は地頭が良い方なので、家庭教師が教えることも、吸収しているようですし、来年の今頃には見違えるほど、博識になっていますわね。

今から楽しみですわ。

あとはミハエル様の見た目です。

一カ月に一度のミハエル様とのお茶会。

久しぶりにお会いしたミハエル様は、髪の艶はなく、手はカサカサで疲れ果てているご様子でした。

お父様ったら、同じ家に住んでるのに一カ月に一度しか、ミハエル様に会わせてくれませんのよ。

お父様に、ミハエル様と私のスケジュールが合わないように調整されています。

同じ家に住んでいるのだから、せめて食事くらいミハエル様と一緒にしたいわ。

「まあミハエル様、髪の毛を石鹸で洗っておりましたの?
その石鹸も体を洗う石鹸ではなく手を洗う石鹸ではありませんか?
その上顔を洗った後、何もつけてないですって?」

お父様ってば、ミハエル様に意地悪をしているのね。

カイテル公爵家で過ごす間は、私と同じ待遇をするようにお願いしたのに。

しかし、ミハエル様のお話をよくよく聞いて見ると、ミハエル様はシャンプーもトリートメントも知らないようなのです。

体を洗う石鹸も浴場に置いてあったそうなのですが、いい匂いがしすぎてもったいなくて使えなかったそうなのです。

使用人に体を洗ってもらうのも、恥ずかしくて断っていたんだとか。

部屋に化粧水や乳液を備え付けておりましたが、何に使うのか分からなかったようです。

お父様、ミハエル様に意地悪をしていると疑ってごめんなさい。

ミハエル様の髪や肌に艶がないのは、ミハエル様が無知だったからのようですわ。

「仕方ありませんわ、私がシャンプーとトリートメントの使い方を教えます。
そのためにはミハエル様と一緒にお風呂に……」

ガシャン! パリーン!

ミハエル様が飲んでいた紅茶のカップを落としました。

ミハエル様のお顔は真っ赤です。

「だめだよレーアちゃん!
結婚前の男女が一緒にお風呂に入るなんて!」

「そうですわお嬢様!
ご自分の体を労ってください!」

どこからともなく現れた、お父様とチェイに、一時間お説教されてしまいましたわ。

せっかくミハエル様と水入らずで過ごせる貴重な時間だったのに。

結局、ミハエル様の髪と肌のケアは男性使用人に任せることにしました。






――一カ月後――


久しぶりにお会いしたミハエル様は、爽やかな好青年になっていました。

ミハエル様の漆黒の髪はサラサラつやつや
、長かった髪は綺麗にカットされ、肌はしっとりとし、顔のそばかすも消えておりました。

高級シャンプーとトリートメントと石鹸と化粧水と乳液の効果ですね。

これらのものは魔女のスキルを持つ、お母様が作っておりますの。

お母様は薬草集めと、薬品の開発が趣味。

なのでお母様の開発した高級シャンプーとトリートメントと石鹸と化粧水と乳液には、貴重な薬草やエーテルやポーションなどがふんだんに使われておりますの。

これだけお金をかけて、綺麗にならないはずがありませんわ。

「あとは近眼が治れば良いのですが」

近眼が治れば瓶底眼鏡とはさようならですわ。

「あら~、それならママいいお薬を持っているわ~」

どこからともなくお母様が現れました。

ミハエル様と二人きりになれる数少ない機会なのに、どうしてこうも邪魔が入るのでしょう?

「私が開発した~どんな近眼でも~、視力2.0になる薬があるの~。
ミハエルくん~、試してみる~」

お母様がドレスのポケットから小瓶を取り出した。

「僕の目が良くなったら、レーア様は喜んでくれますか?」

「もちろんよ~~。
遠くからでも好きな人の顔を認識できるって素敵よね~」

「結婚するまでは、レーア様と二人きりになれるのは月に一回のお茶会のみ。
せめて遠くにいるレーア様を眺めるぐらいしたいです!
お義母様、僕にその薬をください!」

「いいわよ~」

お母様はにっこり笑ってミハエル様に薬を渡した。

「その薬をお茶に入れて毎日飲んでね」

「分かりました!」





――一カ月後――


今日はミハエル様とのお茶会の日。

一カ月振りにお会いしたミハエル様のお顔には瓶の底のように厚いレンズの眼鏡はなかった。

「ミハエル様、ですの?」

「お義母様にいただいた薬を飲んだら目が良くなって、眼鏡が不要になったんです。
おかげでレーア様のことを遠くからでも認識できます」

ミハエルの視力は眼鏡をかけても0.5だったとか。

それでは遠くにいる私の顔をはっきりと認識するのは難しいですね。

私の顔を見てハニカム、ミハエル様は見目麗しい青年になっていて……私の顔に熱が集まる。

「レーア様、どうされました?」

「ミハエル様を自慢したいような、誰にも見えないところに隠しておきたいような、とても複雑な気分です」

「僕はレーア様の隣に立つのにふさわしい人間になりたかっただけです。
レーア様が望むなら、どこかに隠れて暮らしても構いません」

「まぁミハエル様ったら、どこでそんなセリフを覚えましたの」

「この二カ月、お義母様に鍛えられましたから」

お義母様ったら、ミハエル様にどんな教育を施したのかしら?

「ミハエル様が洗練されていくのは良いことなのですが、女性にキャーキャー言われて、ミハエル様の心が私から離れて行かないか不安ですわ」

「僕の心にいるのは、一生レーア様だけです!」

ミハエル様が私の手を取る。

ミハエル様の瞳って黒真珠のように美しかったのですね。

ミハエル様のお顔が近づいてくる……良い雰囲気ですわ。

このまま口づけを交わしてしまおうかしら?

私が瞳を閉じようとしたその時……。

どこからともなくクナイが飛んできて、ミハエル様の眼前をかすめていきました。

ミハエル様が真っ青なお顔でガクガクと震えている。

「いやー、すまない。
チェイとサバイバル訓練をしていたら手が滑ってしまってね」

「お怪我はありませんでしたかお嬢様?」

お父様とチェイが木の影から現れた。

タイミングが悪すぎますわ。

まるで監視されているみたい。

結婚までミハエル様とイチャイチャするのは、難しそうですわ。


☆☆☆☆☆
しおりを挟む
感想 113

あなたにおすすめの小説

「失礼いたしますわ」と唇を噛む悪役令嬢は、破滅という結末から外れた?

パリパリかぷちーの
恋愛
「失礼いたしますわ」――断罪の広場で令嬢が告げたのは、たった一言の沈黙だった。 侯爵令嬢レオノーラ=ヴァン=エーデルハイトは、“涙の聖女”によって悪役とされ、王太子に婚約を破棄され、すべてを失った。だが彼女は泣かない。反論しない。赦しも求めない。ただ静かに、矛盾なき言葉と香りの力で、歪められた真実と制度の綻びに向き合っていく。 「誰にも属さず、誰も裁かず、それでもわたくしは、生きてまいりますわ」 これは、断罪劇という筋書きを拒んだ“悪役令嬢”が、沈黙と香りで“未来”という舞台を歩んだ、静かなる反抗と再生の物語。

訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果

柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。 彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。 しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。 「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」 逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。 あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。 しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。 気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……? 虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。 ※小説家になろうに重複投稿しています。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

【完結】婚約破棄された悪役令嬢ですが、魔法薬の勉強をはじめたら留学先の皇子に求婚されました

楠結衣
恋愛
公爵令嬢のアイリーンは、婚約者である第一王子から婚約破棄を言い渡される。 王子の腕にすがる男爵令嬢への嫌がらせを謝罪するように求められるも、身に覚えのない謝罪はできないと断る。その態度に腹を立てた王子から国外追放を命じられてしまった。 アイリーンは、王子と婚約がなくなったことで諦めていた魔法薬師になる夢を叶えることを決意。 薬草の聖地と呼ばれる薬草大国へ、魔法薬の勉強をするために向う。 魔法薬の勉強をする日々は、とても充実していた。そこで出会ったレオナード王太子の優しくて甘い態度に心惹かれていくアイリーン。 ところが、アイリーンの前に再び第一王子が現れ、アイリーンの心は激しく動揺するのだった。 婚約破棄され、諦めていた魔法薬師の夢に向かって頑張るアイリーンが、彼女を心から愛する優しいドラゴン獣人である王太子と愛を育むハッピーエンドストーリーです。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?

当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。 ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。 対して領民の娘イルアは、本気だった。 もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。 けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。 誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。 弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

始まりはよくある婚約破棄のように

喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

処理中です...