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8話「ヤンデレなお義兄様」【フォンゼル視点】
しおりを挟む【フォンゼル視点】
僕の名前はフォンゼル。
バウムガルトナー公爵家の養子で元はアルニウム伯爵家の三男だった。
僕が公爵家に養子に出されたのは十四歳の時。
公爵家には女子しかおらず、女子では家督を継ぐことができないため親戚の伯爵家の三男である僕が養子にもらわれたのだ。
僕が公爵家に来た時ソフィアはまだ七歳だった。
七歳のソフィアは金色のサラサラしたボブカット、湖面のように青く輝く大きな瞳、きめ細かな白い肌、あどけない笑顔が似合う天真爛漫な美少女だった。
恥ずかしい話、僕は七歳のソフィアに一目惚れした。
だけど僕は義理の兄妹の関係を壊すのが怖くて告白する勇気が持てなかった。
ソフィアのことを異性として愛していることが義父にバレたら、養子縁組を解消され、伯爵家に送り返され二度と彼女に会わせてもらえないかもしれない……。
告白して「お義兄様を恋愛対象としては見られません」ソフィアにそう言われ拒絶されたら……そう思うと怖くて想いを告げられなかった。
僕は義理の兄としてソフィアのそばにいて、彼女の成長を見守ることしかできなかった。
本来なら貴族の令嬢は他家の貴族との繋がりを作るために八歳ぐらいからお茶会に参加させる。
だが一人娘のソフィアを溺愛している義父はどの家からお茶会の招待状が届いても、決してソフィアをお茶会に参加させなかった。
公爵家で行われる誕生会などの行事にも、身内以外は呼ばなかった。
それでも日に日に美しさを増していくソフィアの評判は、義父や僕がどんなに隠しても隠しきれるものでもなく、どこかしらから漏れたのか義妹のことが貴族の間で噂されるようになった。
「バウムガルトナー公爵令嬢は天使のような容姿だ」……
「ソフィア嬢は絶世の美少女だ」……
「バウムガルトナー公爵令嬢に見つめられた男は漏れなく恋に落ちる」……
噂は広がり続け、ついには王族の知るところになった。
国王はソフィアの容姿とバウムガルトナー公爵家の後ろ盾欲しさに、愚鈍なことで有名な第一王子をソフィアの婚約者に指名してきた。
その時点で国王は第二王子を立太子させると決めていた。
公爵家は養子の僕が継ぐのに、国王はソフィアと第一王子を婚約させてどうする気なんだ?
ソフィアを王子妃として王宮で飼い殺しにする気なのだろうか?
それとも跡継ぎである僕を排除し、第一王子に公爵家を継がせる気なのか?
どちらにしても国王が公爵家の婚姻から跡継ぎに至るまで、自分の意のままにできると思っているところが気に入らない。
義父はのらりくらりと国王の要望を躱し続け、第一王子の【婚約者候補の一人にする】という条件を付けて王家からの縁談を受けた。
顔と身分以外何の取り柄もない第一王子がソフィアの婚約者候補になるなんて……なんとも腹立たしいことだ。それは同じ気持ちだったらしい。
凡骨を押し付けてきた国王も、婚約者候補になったのにソフィアに贈り物一つして来ない第一王子もどちらも気に入らない。
いつか必ず二人を排除し、幼い第二王子をバウムガルトナー公爵家のあやつり人形にしてやる。
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