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4話「婚約者と妹の裏切」
しおりを挟む「アダリズとの婚約は亡き王太后様が結んだものだから、簡単に破棄できない。本当に腹立たしいよ、カラスのように真っ黒な髪に悪魔のような漆黒の瞳、魔女のように大きくて醜い鼻の不美人が僕の婚約者だなんて」
「アダリズお姉様と魔女を比較するなん魔女に失礼ですわ。アダリズお姉様の醜さは魔女の比ではありませんもの」
「それもそうな、アハハハ」
ショックだった、信じていた二人に裏切られていたことが。
王太子殿下は私の事を愛していなかった。それどころか不美人な私が自身の婚約者であることを恨み、私をさげすんでいた。
家族の中で唯一私に優しく接してくれた妹は、その実誰よりも醜い私を見下し腹の中で笑っていた。
「今朝もアダリズお姉様が食事中にダイニングルームに入ってきたので、お父様とお母様の機嫌が悪くなって大変でしたのよ。おかげで鯛のカルパッチョと小エビのスープがまずくなってしまいましたわ。でもお父様とお母様がお姉様と食事をしたくないというお気持ちも分かるんです、お姉様のあのわしのような鼻を見てると食欲がなくなるんですもの」
「ハハハ公爵夫妻も君も大変だな、だがそれもあと半日の辛抱だ」
「デレック様それはどういうことですか?」
「エマに宝石のついたアクセサリーをいくつかプレゼントしただろう? 初めのうちは婚約者に当てる費用から出していたんだが、すぐに底をついてしまってね、仕方なく国庫の金に手をつけたんだよ」
「国庫のお金って民の税金ですよね? そんなことして大丈夫なんですか? バレたら牢屋行きですよ? 私捕まるのは嫌ですよ」
「心配ないよ、書類を改ざんして全てアダリズがしたことにしたから」
「まぁ、それは本当なんですか?」
「ああ本当さ、もしかしてアダリズをはめた僕を恨んでる? 君にとってアダリズは実の姉だから……」
「まさか、そんな気持ち一ミリも湧きませんわ、あんな醜い女を姉だなんて思ったこと一度もありませんもの」
「それはよかった、エマに頼みがあるんだ、今夜の内に僕がエマに贈ったアクセサリーをいくつかアダリズの部屋に隠してくれないか? 断罪するときアダリズの部屋に証拠の品があった方がいいからね」
「分かったわ、お姉様の部屋に入り込むなんて簡単よ」
「頼んだよ、君にしか出来ないことだ」
「任せて、それより明日家に兵士が来るんでしょ? 私の部屋も捜索されるの?」
「そんなことはさせないよ、もし君の部屋からアクセサリーが見つかっても、アダリズがエマに罪を着せようとして隠したって言うさ、何せ操作の指揮をとるのは僕だからね」
「デレック様、頼もしいわ」
「アダリズはきっと国庫の金を横領した罪で死刑になるだろう。邪魔な婚約者を排除できた上に僕は手柄を立てられる、その上愛するエマを次の婚約者に指名にできる、最高の計画だ!」
「デレック様、その話本当ですの? 本当に私をデレック様の次の婚約者に指名してくださるのですか?」
「当然だろ僕はエマを愛しているんだから! それに王家はボーゲン公爵家と縁を結びたがっているからね。僕の婚約者になるのは姉でも妹でもどちらでも良かったのさ、亡くなったお祖母様の顔を立てて今まで僕の婚約者はアダリズのままだったけど」
「ふふ、明日が楽しみだわ」
二人は抱き合って、しばらくのあいだ口付けを交わしていた。
数分後王太子殿下とエマは「そろそろ夕食の時間だ、戻らないと」「名残惜しいですわ」「エマと婚約すればいつも一緒にいられるよ、こんなふうにコソコソと会う必要もなくなる」「まぁ、素敵」と言って入口に向かい歩き出した。
私は二人に見つからないように、本棚の奥の夕日の当たらない場所に身を隠した。私の真っ黒な髪と地味な色の服が幸いし、壁と同化した私に、二人は気づくことなく楽しげに笑いながら図書室を後にした。
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