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二章
17話「連れ去られた母」アビー編
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【アビー編】
僕は三歳まで穏やかな父さんと明るい母さんと三人で、山奥の小屋で幸せに暮らしていた。
父さんは幼い頃から人里はなれた山奥で暮らしていたから少し天然で、母さんは父さんと結婚する前別の世界で暮らしていたせいかちょっと風変わりだった。
でも二人ともとっても優しかった。
母さんは元いた世界で、高校というところに通っていたらしい。
普通の女の子だった母さんは、ある日突然悪い王子にこの世界に呼び出された。
そして王子との結婚をエサにされ、過酷な環境で過労死寸前まで働かされた。
母さんの働きにより三年で瘴気の浄化作業は終わったらしい。
それなのに王族も大臣も教会も、瘴気が浄化されたらあっさりと母さんを捨てた。
母さんは王子の借金のかたにハゲでデブの五十過ぎの辺境伯に嫁がされそうになった。
それを知った母さんは、お城から逃げ出した。
追ってから隠れるために森に入った母さんは、森で道に迷い、カゲから落ちて怪我をした。
そこで母さんを助けたのが父さんなんだって。
「初めて会った時のコルトは、ちょっぴりシャイで可愛かったわ」
母さんは頬を染めながら、父さんとの馴れ初めを話してくれた。
父さんには内緒だけど、母さんは僕と二人だけのとき「出会った時の父さんはとってもカッコよかったのよ。お姫様のピンチに現れて助けてくれる物語の騎士みたいだったわ」と言ってよくのろけていた。
母さんは、元いた世界の話をよく僕に聞かせてくれた。
僕は母さんの話を聞くのが大好きだった。
飛行機、自動車、自転車、洗濯機、乾燥機、電気ポット、温度を感知して明かりがつく街灯などなど……。
母さんがいた世界はこの世界より何倍も文明が進んでいたみたいだった。
母さんは絵を描くのが得意で、お話だけではイメージできないものを紙に描いて説明してくれた。
この世界にはないものを自分の手で作り出したいと思ったのはいつからだろう?
母さんの元いた世界にあった便利な道具を作ったら母さんは喜んでくれるかな?
幼い頃の僕はそんなことを考えていた。
☆
そんなある日、僕たちの前に自称神様が現れた。
自称神様は、
「一生大切に扱うっていうから王族に聖女召喚を許可したのに。
こんな山奥のボロ小屋に捨て置くとはね。
かわいそうに、そこの男にむりやり手籠にされ、子供を産まされたんだね。
大丈夫だよ、私が元の世界に戻してあげるからね。
ここでの忌まわしい記憶を消してね」
と言って母さんを連れて去ってしまった。
その日、僕は母さんがいなくなったのが悲しくて、父さんの腕の中でわんわんと泣いてしまった。
父さんはそんな僕をひと晩中あやしてくれた。
僕より母さんとの付き合いの長い父さんの方が辛いのに、僕よりも泣きたいのは父さんの方なのに。
父さんは僕を心配させないように、僕の前では涙を見せずにいた。
僕はこの日から母さんを見つけるまで泣かないと決めた。
僕がいつまでもめそめそしてたら、父さんが悲しめなくなってしまうから。
自称神様は母さんを元の世界に戻すと言ってた。
つまり母さんがどこに連れて行かれたのか断定できるということだ。
悪い王子が母さんをこの世界に呼び出して、自称神様が母さんを元いた世界に戻してしまった。
それはつまりこの世界と母さんのいる世界を繋ぐ方法があるってことだ。
悪い王子や自称神様にできることが僕にできないはずがない!
僕は母さんと再会するまで、絶対にあきらめない!
僕は三歳まで穏やかな父さんと明るい母さんと三人で、山奥の小屋で幸せに暮らしていた。
父さんは幼い頃から人里はなれた山奥で暮らしていたから少し天然で、母さんは父さんと結婚する前別の世界で暮らしていたせいかちょっと風変わりだった。
でも二人ともとっても優しかった。
母さんは元いた世界で、高校というところに通っていたらしい。
普通の女の子だった母さんは、ある日突然悪い王子にこの世界に呼び出された。
そして王子との結婚をエサにされ、過酷な環境で過労死寸前まで働かされた。
母さんの働きにより三年で瘴気の浄化作業は終わったらしい。
それなのに王族も大臣も教会も、瘴気が浄化されたらあっさりと母さんを捨てた。
母さんは王子の借金のかたにハゲでデブの五十過ぎの辺境伯に嫁がされそうになった。
それを知った母さんは、お城から逃げ出した。
追ってから隠れるために森に入った母さんは、森で道に迷い、カゲから落ちて怪我をした。
そこで母さんを助けたのが父さんなんだって。
「初めて会った時のコルトは、ちょっぴりシャイで可愛かったわ」
母さんは頬を染めながら、父さんとの馴れ初めを話してくれた。
父さんには内緒だけど、母さんは僕と二人だけのとき「出会った時の父さんはとってもカッコよかったのよ。お姫様のピンチに現れて助けてくれる物語の騎士みたいだったわ」と言ってよくのろけていた。
母さんは、元いた世界の話をよく僕に聞かせてくれた。
僕は母さんの話を聞くのが大好きだった。
飛行機、自動車、自転車、洗濯機、乾燥機、電気ポット、温度を感知して明かりがつく街灯などなど……。
母さんがいた世界はこの世界より何倍も文明が進んでいたみたいだった。
母さんは絵を描くのが得意で、お話だけではイメージできないものを紙に描いて説明してくれた。
この世界にはないものを自分の手で作り出したいと思ったのはいつからだろう?
母さんの元いた世界にあった便利な道具を作ったら母さんは喜んでくれるかな?
幼い頃の僕はそんなことを考えていた。
☆
そんなある日、僕たちの前に自称神様が現れた。
自称神様は、
「一生大切に扱うっていうから王族に聖女召喚を許可したのに。
こんな山奥のボロ小屋に捨て置くとはね。
かわいそうに、そこの男にむりやり手籠にされ、子供を産まされたんだね。
大丈夫だよ、私が元の世界に戻してあげるからね。
ここでの忌まわしい記憶を消してね」
と言って母さんを連れて去ってしまった。
その日、僕は母さんがいなくなったのが悲しくて、父さんの腕の中でわんわんと泣いてしまった。
父さんはそんな僕をひと晩中あやしてくれた。
僕より母さんとの付き合いの長い父さんの方が辛いのに、僕よりも泣きたいのは父さんの方なのに。
父さんは僕を心配させないように、僕の前では涙を見せずにいた。
僕はこの日から母さんを見つけるまで泣かないと決めた。
僕がいつまでもめそめそしてたら、父さんが悲しめなくなってしまうから。
自称神様は母さんを元の世界に戻すと言ってた。
つまり母さんがどこに連れて行かれたのか断定できるということだ。
悪い王子が母さんをこの世界に呼び出して、自称神様が母さんを元いた世界に戻してしまった。
それはつまりこの世界と母さんのいる世界を繋ぐ方法があるってことだ。
悪い王子や自称神様にできることが僕にできないはずがない!
僕は母さんと再会するまで、絶対にあきらめない!
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