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二章
18話「特殊スキルと召喚とケットシー」
しおりを挟む僕はその日から母さんを連れ戻す機械を作るための研究を始めた。
だけど何をするにもお金がかかる。
父さんは優しい人だけどお金はあまり持っていないから、無料で使役できる眷属を召喚することにした。
眷属の召喚方法は村の教会に行ったとき、神父さんから譲って貰った本にあった。
神父さんは、
「古過ぎて誰も読めなくて処分に困っていた。
貰い手が見つからないなら燃やそうと思っていたところだ。
引き取ってくれるなら助かるよ」
と言って快く僕に本を譲ってくれた。
神父さんから貰った本は、おそらく古代語で書かれている。
こんなにも貴重な本を、読めないという理由だけで燃やそうとしていたなんて……もったいない。
本をぺらぺらとめくっているうちに、僕は古代語を独学で読めるようになっていた。
普通の人にはこんなことは不可能だと思う。
誰にでも出来ることなら、神父さんは貴重な本を燃やそうとするはずがない。
母さんが浄化という特殊スキルを持っていたみたいに、僕にも特別なスキルがあるのかもしれない。
僕は神父さんから頂いた本を読み込み、召喚方法をマスターした。
精霊や妖精やモンスターが沢山いる。
母さんが言っていた。道具を使うには電気が必要だと。電気とは雷みたいなものだとも。
僕は数ある候補から的を絞り、雷竜を呼び出すことにした。
庭に魔法陣を描き雷竜を呼び出す。
しかし…………現れたのは、二足歩行で歩く人語を話す黒い猫だった。
おそらく彼は神話に出てくるケットシーだろう。
雷竜とは別の生き物を呼び出してしまった。
ケットシーは賢い。僕の言うことを聞いてくれるかどうか……。
もしケットシーに言うことを聞かせることに失敗して、彼が暴れ出したら……。
僕がそんな不安な気持ちに襲われたとき、父さんが家の中から出てきた。
ケットシーを見た父さんが「可愛い猫だな」と言って、ケットシーを抱っこし部屋に連れて帰った。
そして僕が赤ちゃんの頃着ていた服と靴をリメイクして、ケットシー専用の服と靴を作ってあげた。
ケットシーは父さんに作って貰った服と靴が気に入ったのか、父さんに懐いていた。
父さんの膝の上で喉をゴロゴロと鳴らすケットシーは、どう見ても人に危害を加えようとしているようには見えない。
ひとまず危機は去った。
父さんの膝の上は僕の特等席だったのに……これが召喚に伴う代償というものなのだろうか?
少しだけ寂しい気持ちになったが、こんなことで母さんの世界に行くことを諦めることは出来ない!
すっかり家に馴染んだケットシーは、日差しが差し込む窓辺や、暖炉の横に敷いたクッションの上で昼寝していることが増えた。
ケットシーは家の生活になれると、家事を手伝ってくれるようになった。
ケットシーは父さんより料理が上手だけど、それは父さんには内緒。
父さんのプライドを傷つけて、父さんが泣いちゃったら可哀想だから。
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