聖女として召喚された女子高生、イケメン王子に散々利用されて捨てられる。傷心の彼女を拾ってくれたのは心優しい木こりでした・完結

まほりろ

文字の大きさ
33 / 37
二章

33話「国王の登場」ざまぁ

しおりを挟む


会場の入口を警備していた眷属の一匹が『国王がケットシー様に会いたいそうです』と伝えにきた。

「通しなさい」

私が許可すると、兵士に支えられながら王冠を被った男が私に近づいてきた。

事前に調べてあるので知っている。奴はこの国の国王だ。

私が最初ここにきたとき、国王は会場にいなかった。

おそらく会場の外にいた誰かが、会場の騒ぎに気づき国王に伝えに行ったのだろう。

「余はこの国の王だ。
 騒ぎを聞き急ぎ会場に駆けつけた次第だ。
 そなたたちの目的はなんだ……!
 余たちがそなたらに何をしたというのだ!?」

「これは陛下。
 お初にお目にかかります。
 私の名前はケットシー・シュヴァルツ・ドリット・クローネ・ケーニヒ、ケットシー界の第三王子です。
 今後お会いすることはないと思いますので、覚えなくて結構ですよ」

私は恭しく挨拶をした。

「先ほどの質問の答えなのですが、私の記憶が確かなら、我々ケットシー一族があなた方人間に何かされた事はありませんね」

「では、なぜこんなことを……!」

「この国の王族はほんの数年前、異世界から聖女を召喚しましたね?
 聖女を王子と婚約させ、王子との結婚を餌に聖女を不眠不休で働かせた。
 そして聖女が国中の瘴気を浄化し終えたら、王子は用済みになった聖女との婚約を破棄し、聖女を己の借金のかたにハゲでデブで五十過ぎの辺境伯に嫁がせようとした。
 身に覚えがありますよね?」

私の言葉を聞いて、王太子と辺境伯と大臣と神官たちが、顔を真っ青にして額に大量の汗を浮かべている。

「すまんが余はここ数年体の調子が思わしくなく、内政は息子に任せていた……」

「おや?
 国王は病弱なのを理由に逃げましたか?  では王太子に尋ねます。
 今私が申し上げたことに、身に覚えがありますよね?」

「リ……リコは生きていたのか……?
 お、お前は……リコに頼まれて……ふ、復讐に来たのか?」

王太子が震える指で私を指し、尋ねてきた。

「当たらずも遠からずですね。
 城から逃げ出したリコ様は心優しい木こりに保護されました。
 やがて二人は愛し合い、男の子を授かった。
 私の主はリコ様の第一子です。
 御主人様は私にこう命じました。
 『母さんが帰ってきたとき気持ちよく過ごせるようにをしておいて』と。
 私は主の言葉を『国の汚物である腐った王族と貴族と神官と商人を一掃しろ』という意味に解釈いたしました。
 なので私は城の大掃除のついでに、獅子身中の虫であるあなた方を廃棄処分に参ったのです」

私はそう言ってニッコリと微笑んだ。

城の大掃除の名目で城の大金庫と食料庫の中身をいただきました。

あとは獅子身中の虫粗大ゴミの処分だけですね。

会場にいた人間たちは紫を通り越して白い顔をしていた。

口から泡を吹いて倒れた者もいる。

気を失ったくらいでは許しませんよ。

「リ、リコの子供ならまだ幼いだろ?!
 幼い子がそんな恐ろしいことを命じるわけがない……!
 頼む見逃してくれ!
 見逃してくれたら、家臣として召し抱えてやる!」

王太子が自分に都合の良いことを喚いている。

「私は今の主を気に入っておりますので、二君に仕える気はありません。
 あなたの家臣になるなど死んでもゴメンです。
 それから、今のリコ様は人妻です。
 王太子といえどリコ様を呼び捨てにすることは許しませんよ!」

私が王太子を睨みつけると、王太子はまたお漏らしをした。

「まずは王太子から庭に放り投げなさい!」

私が命じるとケットシーの一族の者が王太子を担ぎ上げた。

「おい! 止めろ! さわるな!」

王太子が何か話しているが無視し、一族の者は王太子を窓から放り投げた。

「ぐわぁぁぁぁあああああっっ!!」

醜い悲鳴を上げて王太子が落下していく。

ケルベロスがおしっこまみれの王太子を口でキャッチするのを嫌がったので、王太子は地面に激突した。

「王太子に回復魔法をかけてあげなさい。
 簡単に死なれては面白くないのですからね。
 王太子にらこのあと、嫌というほどケルベロスと追いかけっこをしてもらわなくてはいけませんから」

私の命を受けたケットシーの一族の一匹が、王太子のあとを追って窓から飛び降りた。

ケットシー一族のニャンパラリは普通の猫のそれとは違う。この程度の高さから落ちても問題ない。

私の予想通り一族の者は綺麗に着地を決めた。


しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さくら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

処理中です...