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10話「第二王子とアルゾンの婚約」
しおりを挟む――第二王子視点――
パーティの数日後。
俺はアルゾンと婚約するため、お供を連れてカウフマン伯爵家を訪れていた。
婚約を伯爵家で結ぶのは、婿入り先の内情視察を兼ねている。
俺を乗せた馬車は中庭に停車した。
馬車から降りた俺はカウフマン伯爵家の屋敷を見て、息を呑んだ。
カウフマン伯爵家は年月を感じさせない美しい白い壁と、青い屋根の大邸宅で、庭も広かった。
手入れの行き届いた庭園にはバラが咲き乱れ、庭の中心には噴水があり、清らかな水音を奏でている。
カウフマン伯爵家の敷地に一歩踏み入れた時から、空気がガラリと変わったのを感じた。
屋敷内は神殿や高い山々のような、澄んだ空気で満ちていた。
俺は残りの人生の大半をここで暮らすのだな。
美しい奥さんと可愛い子供達に囲まれて、過ごす穏やかな日々。
気が早いかもしれないが、俺はこの家での新婚生活を脳裏に描いていた。
もちろんアルゾンとの初夜についても。
ああ早く彼女と結婚して、彼女のドレスを脱がしたい!
その前に結婚式を挙げないとな。
アルゾンは国一番の美人だからな。どんなウェディングドレスも似合うだろうな。
アルゾンには、王太子妃が着たものよりも豪華なドレスを着せたい。
アルゾンには裾の長いロングトレーンドレスが似合いそうだ。
王道のプリンセスラインやベルラインのドレスも捨てがたいが、ミニ丈もいいな。
彼女の美しい足を、近くでじっくり眺めたい。
このときの俺は、このあと伯爵家で起こることも知らず、希望に胸を膨らませていた。
俺は伯爵家の書斎に通された。
書斎にはセンスの良いアンティーク家具が並んでいた。
窓も床がピカピカに磨かれていて、カーテンにも絨毯にはシミひとつない。
とても管理の行き届いた家だ。
俺はそこで、アルゾンと婚約するための書類にサインをした。
「あたし、王子様と婚約したのね!
嬉しいわ!」
アルゾンが耳元でキンキン声で喚く。
美女の声はキンキンしていても、小鳥のさえずりのように聞こえる。
これが恋の魔法というものだろうか?
アルゾンが舞踏会で着ていた豪華なドレス姿も美しかったが、今日着ているフリルの付いたワンピース姿も可愛らしい。
美人は何を着ても似合うというのは本当だな。
書類にサインをし終え、俺は一息つく。
これでこの家も、この家の富も、アルゾンも、俺の物だ。
その時書斎のドアがノックされ、ボロボロのワンピースをまとった金色の髪の少女が入ってきた。
メイドだろうか?
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