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四話「性行為は罪悪?」
夢を見ていた。
これは多分ザフィーアの記憶。
父親譲りの金色の髪に、サファイアのように輝く瞳、母親似の愛らしい顔立ち。
幼い頃のザフィーアと、一緒にいる茶色の髪の偉そうな子供は多分エルガー王子だな。
二人とも五、六歳ぐらいだろうか?
エルガー王子がザフィーアの手を掴み、ザフィーアは王子の手を振り払った。
拒否されると思っていなかったエルガー王子が、目を見開く。
「失礼いたしました王子殿下、ですが婚約者といえど結婚するまでは肌の接触をさけるのがこの国のしきたり」
幼いながらしっかりとした言葉で事情を説明するザフィーア。
王子は顔を赤らめ、
「誰がお前なんかと手を繋ぐか!」
怒って帰ってしまった。
厳格な両親に育てられたザフィーアは、超がつくほど堅物だった。
婚約者の王子にキスどころか、指一本触れさせなかった。
この世界、というかレーゲンケーニクライヒ国の性に対する考えは厳格で、セックスは子孫を残すために仕方なくするものというのが一般的だ。
セックスができる日も厳格に定められている。
冬至の祭り、復活祭と四句節(復活祭の四十日前)、結婚後三日間。昼間、日・水・金・土、祭日は性行為をしてはいけない。
正直いつセックスしてんだよ?
性行為はあくまでも子作りのための行為なので、快楽を伴ってはいけない。
全裸でしてはだめ、愛撫もだめ、セックス中のキスも禁止、体位も正常位のみ、回数は一回きり。
エロ漫画の世界ならネタがなさすぎて、一話で打ち切りになるレベル。
そんな禁欲的な生活していて、よく子供ができるな。
◇◇◇◇◇
成長してもザフィーアは保守的なままだった。
ここからは漫画で読んだ知識。
二人が十三歳の時こんなことがあった。
エルガー王子が、いたずらでザフィーアに抱きついた。
精通したばかりのエルガー王子はエッチな遊びに興味津々で、婚約者にちょっとスケベなことをしてみたかったらしい。
幼い頃にザフィーアの手をにぎろうとして拒否されたことを、エルガー王子は忘れてしまったようだ。
ザフィーアは基本的にエルガー王子に従順だった。髪の長さから、着る服の色、食べ物の趣味まで王子に合わせていた。
多少のセクハラをしてもザフィーアなら受け入れてくれる、エルガー王子はそう期待していた。
ところが抱きつかれたザフィーアは、ショックのあまりその場に膝をつき泣き出してしまった。
ザフィーアの泣き声を聞きつけ、大人がたくさん集まってきて、騒然となった。その事件は国王とアインス公爵の耳にも入った。
エルガー王子は国王からこっぴどく叱られた。エルガーが得意な剣術の授業を禁止され、苦手な算術の授業を増やされ、一カ月外出禁止になった。
城に仕えるものは、新人のメイドに至るまで「エルガー王子は好き者の変態」と噂した。
自業自得なので同情する余地はない。
この事件が起きる前、エルガー王子はザフィーアの事が好きだったと思う。
だけどエッチないたずらしようとしたのがみんなにバレ、国王に叱られ、恥をかかされたことから、その思いが少しだけゆがんだ。ザフィーアはエルガー王子の初恋の人から、お堅いだけの婚約者に変わった。
お堅い婚約者の体を結婚後に好きなだけ抱いて快楽に目覚めさせてやる……というエルガー王子の野望は、禁欲的な国と保守的な公爵家の前に消えた。
エルガー王子は、ザフィーアとの結婚に希望を持てなくなっていた。おもに性欲処理的な意味で。
◇◇◇◇◇
それから数年経ったある日、異世界から一人の少年がやってきた。
彼の名は立花葵、この世界にはない黒曜石の髪と黒真珠の瞳を持つ愛らしい顔立ちの少年。
神秘的な容姿のアオイに、エルガー王子が惹かれるのに時間はかからなかった。
禁欲的な世界に生きてきたエルガー王子に、アオイは手とり足とり性行為の楽しさを教えた。
婚約者のいる身で他の男に手を出す罪悪感、国で禁止されている行為を楽しんでいる背徳感が、急速に二人の距離を縮め、恋を燃え上がらせた。
アオイが「ザフィーア公子から嫌がらせを受けているのです」と涙ながらエルガー王子にうったえると、エルガー王子はその言葉をあっさりと信じた。
「卒業パーティでザフィーア公子と婚約破棄して、その場でザフィーア公子を断罪して」とアオイにお願いされ、エルガー王子は言われるままに実行した。
卒業パーティの前日に、エルガー王子の名でザフィーアに漆黒の服を贈ったのもアオイだ。
自身は純白の服を身にまとい天使を装い、ザフィーアに漆黒の衣装を着せ悪魔に仕立てた。
ザフィーアの悲しみと絶望が伝わってくる。
今分かった、俺がなぜあのタイミングで前世の記憶を取り戻したのか。
ザフィーアは死んだんだ。
エルガー王子に裏切られ、自ら谷底に落ちることを選んだあの時に、ザフィーアの心は死んだ。
漫画のストーリーはザフィーアが崖から落ちて死ぬところで終わっている。
物語の筋書きはもうない。
あとは俺の好きに生きさせてもらうよ。
いいよな? ザフィーア。
これは多分ザフィーアの記憶。
父親譲りの金色の髪に、サファイアのように輝く瞳、母親似の愛らしい顔立ち。
幼い頃のザフィーアと、一緒にいる茶色の髪の偉そうな子供は多分エルガー王子だな。
二人とも五、六歳ぐらいだろうか?
エルガー王子がザフィーアの手を掴み、ザフィーアは王子の手を振り払った。
拒否されると思っていなかったエルガー王子が、目を見開く。
「失礼いたしました王子殿下、ですが婚約者といえど結婚するまでは肌の接触をさけるのがこの国のしきたり」
幼いながらしっかりとした言葉で事情を説明するザフィーア。
王子は顔を赤らめ、
「誰がお前なんかと手を繋ぐか!」
怒って帰ってしまった。
厳格な両親に育てられたザフィーアは、超がつくほど堅物だった。
婚約者の王子にキスどころか、指一本触れさせなかった。
この世界、というかレーゲンケーニクライヒ国の性に対する考えは厳格で、セックスは子孫を残すために仕方なくするものというのが一般的だ。
セックスができる日も厳格に定められている。
冬至の祭り、復活祭と四句節(復活祭の四十日前)、結婚後三日間。昼間、日・水・金・土、祭日は性行為をしてはいけない。
正直いつセックスしてんだよ?
性行為はあくまでも子作りのための行為なので、快楽を伴ってはいけない。
全裸でしてはだめ、愛撫もだめ、セックス中のキスも禁止、体位も正常位のみ、回数は一回きり。
エロ漫画の世界ならネタがなさすぎて、一話で打ち切りになるレベル。
そんな禁欲的な生活していて、よく子供ができるな。
◇◇◇◇◇
成長してもザフィーアは保守的なままだった。
ここからは漫画で読んだ知識。
二人が十三歳の時こんなことがあった。
エルガー王子が、いたずらでザフィーアに抱きついた。
精通したばかりのエルガー王子はエッチな遊びに興味津々で、婚約者にちょっとスケベなことをしてみたかったらしい。
幼い頃にザフィーアの手をにぎろうとして拒否されたことを、エルガー王子は忘れてしまったようだ。
ザフィーアは基本的にエルガー王子に従順だった。髪の長さから、着る服の色、食べ物の趣味まで王子に合わせていた。
多少のセクハラをしてもザフィーアなら受け入れてくれる、エルガー王子はそう期待していた。
ところが抱きつかれたザフィーアは、ショックのあまりその場に膝をつき泣き出してしまった。
ザフィーアの泣き声を聞きつけ、大人がたくさん集まってきて、騒然となった。その事件は国王とアインス公爵の耳にも入った。
エルガー王子は国王からこっぴどく叱られた。エルガーが得意な剣術の授業を禁止され、苦手な算術の授業を増やされ、一カ月外出禁止になった。
城に仕えるものは、新人のメイドに至るまで「エルガー王子は好き者の変態」と噂した。
自業自得なので同情する余地はない。
この事件が起きる前、エルガー王子はザフィーアの事が好きだったと思う。
だけどエッチないたずらしようとしたのがみんなにバレ、国王に叱られ、恥をかかされたことから、その思いが少しだけゆがんだ。ザフィーアはエルガー王子の初恋の人から、お堅いだけの婚約者に変わった。
お堅い婚約者の体を結婚後に好きなだけ抱いて快楽に目覚めさせてやる……というエルガー王子の野望は、禁欲的な国と保守的な公爵家の前に消えた。
エルガー王子は、ザフィーアとの結婚に希望を持てなくなっていた。おもに性欲処理的な意味で。
◇◇◇◇◇
それから数年経ったある日、異世界から一人の少年がやってきた。
彼の名は立花葵、この世界にはない黒曜石の髪と黒真珠の瞳を持つ愛らしい顔立ちの少年。
神秘的な容姿のアオイに、エルガー王子が惹かれるのに時間はかからなかった。
禁欲的な世界に生きてきたエルガー王子に、アオイは手とり足とり性行為の楽しさを教えた。
婚約者のいる身で他の男に手を出す罪悪感、国で禁止されている行為を楽しんでいる背徳感が、急速に二人の距離を縮め、恋を燃え上がらせた。
アオイが「ザフィーア公子から嫌がらせを受けているのです」と涙ながらエルガー王子にうったえると、エルガー王子はその言葉をあっさりと信じた。
「卒業パーティでザフィーア公子と婚約破棄して、その場でザフィーア公子を断罪して」とアオイにお願いされ、エルガー王子は言われるままに実行した。
卒業パーティの前日に、エルガー王子の名でザフィーアに漆黒の服を贈ったのもアオイだ。
自身は純白の服を身にまとい天使を装い、ザフィーアに漆黒の衣装を着せ悪魔に仕立てた。
ザフィーアの悲しみと絶望が伝わってくる。
今分かった、俺がなぜあのタイミングで前世の記憶を取り戻したのか。
ザフィーアは死んだんだ。
エルガー王子に裏切られ、自ら谷底に落ちることを選んだあの時に、ザフィーアの心は死んだ。
漫画のストーリーはザフィーアが崖から落ちて死ぬところで終わっている。
物語の筋書きはもうない。
あとは俺の好きに生きさせてもらうよ。
いいよな? ザフィーア。
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