幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで・BL・完結・第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

文字の大きさ
4 / 131

四話「性行為は罪悪?」

夢を見ていた。

これは多分ザフィーアの記憶。

父親譲りの金色の髪に、サファイアのように輝く瞳、母親似の愛らしい顔立ち。

幼い頃のザフィーアと、一緒にいる茶色の髪の偉そうな子供は多分エルガー王子だな。

二人とも五、六歳ぐらいだろうか?

エルガー王子がザフィーアの手を掴み、ザフィーアは王子の手を振り払った。

拒否されると思っていなかったエルガー王子が、目を見開く。

「失礼いたしました王子殿下、ですが婚約者といえど結婚するまでは肌の接触をさけるのがこの国のしきたり」

幼いながらしっかりとした言葉で事情を説明するザフィーア。

王子は顔を赤らめ、

「誰がお前なんかと手を繋ぐか!」

怒って帰ってしまった。

厳格な両親に育てられたザフィーアは、超がつくほど堅物だった。

婚約者の王子にキスどころか、指一本触れさせなかった。

この世界、というかレーゲンケーニクライヒ国の性に対する考えは厳格で、セックスは子孫を残すために仕方なくするものというのが一般的だ。

セックスができる日も厳格に定められている。

冬至の祭り、復活祭と四句節(復活祭の四十日前)、結婚後三日間。昼間、日・水・金・土、祭日は性行為をしてはいけない。

正直いつセックスしてんだよ?

性行為はあくまでも子作りのための行為なので、快楽を伴ってはいけない。

全裸でしてはだめ、愛撫もだめ、セックス中のキスも禁止、体位も正常位のみ、回数は一回きり。

エロ漫画の世界ならネタがなさすぎて、一話で打ち切りになるレベル。

そんな禁欲的な生活していて、よく子供ができるな。


◇◇◇◇◇


成長してもザフィーアは保守的なままだった。

ここからは漫画で読んだ知識。

二人が十三歳の時こんなことがあった。

エルガー王子が、いたずらでザフィーアに抱きついた。

精通したばかりのエルガー王子はエッチな遊びに興味津々で、婚約者にちょっとスケベなことをしてみたかったらしい。

幼い頃にザフィーアの手をにぎろうとして拒否されたことを、エルガー王子は忘れてしまったようだ。

ザフィーアは基本的にエルガー王子に従順だった。髪の長さから、着る服の色、食べ物の趣味まで王子に合わせていた。

多少のセクハラをしてもザフィーアなら受け入れてくれる、エルガー王子はそう期待していた。

ところが抱きつかれたザフィーアは、ショックのあまりその場に膝をつき泣き出してしまった。

ザフィーアの泣き声を聞きつけ、大人がたくさん集まってきて、騒然となった。その事件は国王とアインス公爵の耳にも入った。

エルガー王子は国王からこっぴどく叱られた。エルガーが得意な剣術の授業を禁止され、苦手な算術の授業を増やされ、一カ月外出禁止になった。

城に仕えるものは、新人のメイドに至るまで「エルガー王子は好き者の変態」と噂した。

自業自得なので同情する余地はない。

この事件が起きる前、エルガー王子はザフィーアの事が好きだったと思う。

だけどエッチないたずらしようとしたのがみんなにバレ、国王に叱られ、恥をかかされたことから、その思いが少しだけゆがんだ。ザフィーアはエルガー王子の初恋の人から、お堅いだけの婚約者に変わった。

お堅い婚約者の体を結婚後に好きなだけ抱いて快楽に目覚めさせてやる……というエルガー王子の野望は、禁欲的な国と保守的な公爵家の前に消えた。

エルガー王子は、ザフィーアとの結婚に希望を持てなくなっていた。おもに性欲処理的な意味で。


◇◇◇◇◇


それから数年経ったある日、異世界から一人の少年がやってきた。

彼の名は立花葵、この世界にはない黒曜石の髪と黒真珠の瞳を持つ愛らしい顔立ちの少年。

神秘的な容姿のアオイに、エルガー王子が惹かれるのに時間はかからなかった。

禁欲的な世界に生きてきたエルガー王子に、アオイは手とり足とり性行為の楽しさを教えた。

婚約者のいる身で他の男に手を出す罪悪感、国で禁止されている行為を楽しんでいる背徳感が、急速に二人の距離を縮め、恋を燃え上がらせた。

アオイが「ザフィーア公子から嫌がらせを受けているのです」と涙ながらエルガー王子にうったえると、エルガー王子はその言葉をあっさりと信じた。

「卒業パーティでザフィーア公子と婚約破棄して、その場でザフィーア公子を断罪して」とアオイにお願いされ、エルガー王子は言われるままに実行した。

卒業パーティの前日に、エルガー王子の名でザフィーアに漆黒の服を贈ったのもアオイだ。

自身は純白の服を身にまとい天使を装い、ザフィーアに漆黒の衣装を着せ悪魔に仕立てた。

ザフィーアの悲しみと絶望が伝わってくる。

今分かった、俺がなぜあのタイミングで前世の記憶を取り戻したのか。

ザフィーアは死んだんだ。

エルガー王子に裏切られ、自ら谷底に落ちることを選んだあの時に、ザフィーアの心は死んだ。

漫画のストーリーはザフィーアが崖から落ちて死ぬところで終わっている。

物語の筋書きはもうない。

あとは俺の好きに生きさせてもらうよ。

いいよな? ザフィーア。


あなたにおすすめの小説

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います