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六十四話「休息」

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キメラの毒を村から除去できた事を伝えると、村人たちが家に戻ってきた。

ノヴァさんと俺は、まだ体にしびれが残っていて歩けない村人を、村長の家まで運ぶのを手伝った。

最後の村人を村長の家に運び終え、空を見上げるとまだ暗かった。

夜が明けるまでにはまだ時間がありそうだ、流石に疲れた眠い。

俺はモンターニュ村に来る途中、馬車で仮眠をとったからいいけど、ノヴァさんラック・ヴィルから休まずに動いてるから、疲れがたまってるだろうな。

ご褒美に膝枕をして癒してあげたいなぁ。

「改めてお礼を言います。お姉さん、お兄さん、キメラを倒してくれてありがとうございます!」

トマが深々と頭を下げる。

「あなたがたお二人は村の大恩人。わしからも村を代表してお礼をいいます」

トマの隣にいた村長さんが白髪頭を下げた。

「二人とも頭を上げて下さい」

キメラを倒せたのも山を登れたのも、ほとんどノヴァさんのおかげだ。こんな風に改まってお礼を言われるとこそばゆい。

「お姉さんもお兄さんも疲れたでしょ? 良かったら家に来て休んでいって」

トマが俺の服の袖を引っ張る。

「本来なら村長であるわしの家にお招きし、丁重におもてなしするべきなのですが、わしの家は今重症の患者たちが集まる病院のような状態になっておりまして……」

村長さんがすまなそうな顔で謝る。

重症者が回復して早く元の生活に戻れるといいな。

「心配はいらない、重症の者たちに一日に三回毒消し草を処方すれば、直に歩けるようになる。毒消し草は多めに買ってきたから、足りなくなることもないだろう」

ノヴァさんがそう伝えると、村長さんが安堵の表情を浮べた。

「何から何までお世話になりっぱなしで、村の者たちも皆お二人には心から感謝しております。本当にありがとうございます。」

村長さんが再び深々と頭を下げた。

「礼ならシエルに言え、私はシエルの手助けをしたまでだ」

「えっ? 俺? 俺はトマのひたむきさに打たれて、助けてあげたいと思っただけで、特に何もしてないよ。お礼ならノヴァさんに言ってよ」

俺はほとんど何もしていない。

「馬車と毒消し草と食料を買ってくれたのもノヴァさんだし、ノヴァさんが背負ってくれなかったら山頂にたどり着けなかったし、キメラ退治もノヴァさんがいなかったら出来ませんでした」

キメラ退治は俺も少しは手伝ったけど、俺一人だったら討伐に行こうとは思わなかった。

「いや、シエルのおかげだ」

「ううん、ノヴァさんがいてくれたからだよ」

「二人ともすごく仲がよろしいのですな」

俺たちのやり取りを見ていた村長さんがニコニコと笑う。

村長にからかわれ俺の頬に熱が集まる。人様の前なのだがらもう少し自重しよう。

「母さんがお姉さんとお兄さんのために料理を作ったんだ、食べて行ってよ」

トマが俺のマントを引っ張る。

トマのお母さんが料理を作ってくれたんだ、食べないと悪いかな? というよりお腹が空いたから純粋に食べたい。

「ノヴァさん、せっかくだからご厚意に甘えてごちそうになりましょう」

ノヴァさんの腕をちょいちょいと引っ張る。

「シエルがそうしたいと言うのなら、私は従う」

「わぁ! 良かった! 母さんも喜ぶよ!」

トマが嬉しそうに笑う。


◇◇◇◇◇
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