110 / 131
110話「③」
しおりを挟む次の日起きるとご飯を軽く済ませ出撃することになった。
俺の装備は【神の子守歌】という名の真っ白なローブで、炎、水、氷、毒、麻痺、息攻撃90パーセントカット、水と氷の魔法70パーセントカット、物理攻撃70パーセントカットの驚異の装備だった。
お値段金貨20万枚、日本円で約20億円という値段も驚異的なアイテムだった。
杖は【エメラルドの杖】、魔法攻撃力50パーセントアップ、魔法力消費率50パーセント減、お値段金貨2万枚(日本円で約2億円)というグレイトなアイテムだった。
ここら辺まで来ると金銭感覚がおかしくなってくる。
さらに【救世主の靴】という名の白のブーツ、回避率60パーセントアップ、お値段金貨1万枚(日本円で約1億円)。
それとノヴァさんのお母さんの形見の【精霊の祈りの指輪】、呪文反射率100パーセント、お値段はつけられません。
ラスボス戦とはいえ、この装備はちょっと気合い入れすぎじゃないのか?
悪竜オードラッへと戦うのはヌーヴェル・リュンヌ様だろ??
ノヴァさんの装備も白のジュストコールとベストとシャツとパンツとブーツだ。武器はおなじみバスタードソード。
全息攻撃100パーセントカット、魔法攻撃100パーセントカット、物理攻撃90パーセントカット、回避率70パーセントだとか、値段は怖いから聞いてないが、俺の装備よりお金がかかってると思う。
これらの装備は全てヴェルテュ様からのプレゼントだ。サイズピッタリなんですけど? なんで俺たちのサイズ知ってるの? なんかあの人やっぱり怖いな、色んな意味で。
「カルム~~! 気をつけてね~~!」
ヴェルテュ様がノヴァさんにハグをした、そして俺に勝ち誇った笑みを見せつけた。
なんだろう、やっぱりこの人苦手だ。
そんなことしてもやかないもんね! ノヴァさんは俺のことが大好きなんだから!
「可愛いねシエルくんは、僕がノヴァにハグしているのを見て嫉妬した? 心配しなくても大丈夫、これは兄弟の情だよ」
「してませんよ、嫉妬なんて!」
昨日だってあれからノヴァさんと部屋で……。
「シエル、やきもちをやいてくれたのか? 嬉しいぞ!」
ノヴァさんにギューッと抱きしめられた、嬉しいけどヴェルテュ様が人を殺しそうなほど鋭い目で俺を見てるからやめて。
「ヴェルテュ様、一つ質問なんですけど、どうやってレーゲンケーニクライヒ国に行くんですか? 今から向かったのでは復活祭に間に合わないのでは?」
「これがあるから大丈夫だよ、新月の鈴!」
ヴェルテュ様の手に黒い鈴が握られていた。
「新月の鈴?」
「ヌーヴェル・リュンヌ様から借りた物さ、新月の鈴を手に持つと、転移、混乱、幻覚の魔法を使えるようになるんだ、転移の魔法を使えばレーゲンケーニクライヒ国まで一瞬で行けるよ」
「便利ですね」
さすが1000年以上ボワアンピール帝国を守ってる神様、凄いアイテムを持ってるな。
でも転移はともかく、混乱と幻覚の魔法は何に使うんだろう?
「じゃあ行ってらっしゃい、無事に帰ってきてね」
「ヴェルテュ様は一緒に行かないんですか?」
「僕は援護射撃担当だから」
「はい?」
援護射撃担当? どういう意味だろう?
ヴェルテュ様が新月の鈴を鳴らす、次の瞬間俺とノヴァさんはレーゲンケーニクライヒ国へと転移した。
☆☆☆☆☆
――ヴェルテュ視点――
シエルとノヴァがレーゲンケーニクライヒ国に旅立ったあと、ヴェルテュは王宮のバルコニーでひとりごとをつぶやいていた。
「カルムとシエルくんには、国王と王太子と水の神子を捉えて殺すのは無理だろうね」
ヴェルテュはシエルとノヴァがいたときには見せない険しい顔をした。
「それに水竜メルクーアにおんぶに抱っこでいい思いをしてきたレーゲンケーニクライヒ国の人間が、水竜メルクーア=悪竜オードラッへと知ったところで、今更生贄制度をやめられるとも思えない、数百人の犠牲で数十万人の国民が100年間安全に暮らせる訳だし」
ヴェルテュの手には、新月の鈴の他に、闇の球と、闇の手錠が握られていた。
「レーゲンケーニクライヒ国の国民の目を覚まさせるにはインパクトが必要かな、頭の上から氷の刃を受けるくらいの大きな衝撃がね。ヌーヴェル・リュンヌが悪竜オードラッへを倒すのにも名分が必要だし、少なくても一人は悪竜オードラッへの犠牲になって彼のお腹の中に入ってもらわないとね」
ヴェルテュの紫色の瞳がギラリと光った。
「甘っちょろい考えの二人にはやらせられないかな、汚れ役は僕がやらないとね」
ヴェルテュは援護射撃の準備に入った。
☆☆☆☆☆
285
あなたにおすすめの小説
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
優秀な婚約者が去った後の世界
月樹《つき》
BL
公爵令嬢パトリシアは婚約者である王太子ラファエル様に会った瞬間、前世の記憶を思い出した。そして、ここが前世の自分が読んでいた小説『光溢れる国であなたと…』の世界で、自分は光の聖女と王太子ラファエルの恋を邪魔する悪役令嬢パトリシアだと…。
パトリシアは前世の知識もフル活用し、幼い頃からいつでも逃げ出せるよう腕を磨き、そして準備が整ったところでこちらから婚約破棄を告げ、母国を捨てた…。
このお話は捨てられた後の王太子ラファエルのお話です。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。
時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!?
※表紙のイラストはたかだ。様
※エブリスタ、pixivにも掲載してます
◆4月19日18時から、この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」を1話ずつ公開予定です。そちらも気になったら覗いてみてください。
◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる