幼なじみに婚約破棄された僕が、隣国の皇子に求婚されるまで・BL・完結・第9回BL小説大賞、奨励賞受賞作品

まほりろ

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110話「③」

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次の日起きるとご飯を軽く済ませ出撃することになった。

俺の装備は【神の子守歌】という名の真っ白なローブで、炎、水、氷、毒、麻痺、息攻撃90パーセントカット、水と氷の魔法70パーセントカット、物理攻撃70パーセントカットの驚異の装備だった。

お値段金貨20万枚、日本円で約20億円という値段も驚異的なアイテムだった。

杖は【エメラルドの杖】、魔法攻撃力50パーセントアップ、魔法力消費率50パーセント減、お値段金貨2万枚(日本円で約2億円)というグレイトなアイテムだった。

ここら辺まで来ると金銭感覚がおかしくなってくる。

さらに【救世主の靴】という名の白のブーツ、回避率60パーセントアップ、お値段金貨1万枚(日本円で約1億円)。

それとノヴァさんのお母さんの形見の【精霊の祈りの指輪】、呪文反射率100パーセント、お値段はつけられません。

ラスボス戦とはいえ、この装備はちょっと気合い入れすぎじゃないのか?

悪竜オードラッへと戦うのはヌーヴェル・リュンヌ様だろ??

ノヴァさんの装備も白のジュストコールとベストとシャツとパンツとブーツだ。武器はおなじみバスタードソード。

全息攻撃100パーセントカット、魔法攻撃100パーセントカット、物理攻撃90パーセントカット、回避率70パーセントだとか、値段は怖いから聞いてないが、俺の装備よりお金がかかってると思う。

これらの装備は全てヴェルテュ様からのプレゼントだ。サイズピッタリなんですけど? なんで俺たちのサイズ知ってるの? なんかあの人やっぱり怖いな、色んな意味で。

「カルム~~! 気をつけてね~~!」

ヴェルテュ様がノヴァさんにハグをした、そして俺に勝ち誇った笑みを見せつけた。

なんだろう、やっぱりこの人苦手だ。

そんなことしてもやかないもんね! ノヴァさんは俺のことが大好きなんだから!

「可愛いねシエルくんは、僕がノヴァにハグしているのを見て嫉妬した? 心配しなくても大丈夫、これは兄弟の情だよ」

「してませんよ、嫉妬なんて!」

昨日だってあれからノヴァさんと部屋で……。

「シエル、やきもちをやいてくれたのか? 嬉しいぞ!」

ノヴァさんにギューッと抱きしめられた、嬉しいけどヴェルテュ様が人を殺しそうなほど鋭い目で俺を見てるからやめて。

「ヴェルテュ様、一つ質問なんですけど、どうやってレーゲンケーニクライヒ国に行くんですか? 今から向かったのでは復活祭に間に合わないのでは?」

「これがあるから大丈夫だよ、新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェット!」

ヴェルテュ様の手に黒い鈴が握られていた。

新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェット?」

「ヌーヴェル・リュンヌ様から借りた物さ、新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェットを手に持つと、転移、混乱、幻覚の魔法を使えるようになるんだ、転移の魔法を使えばレーゲンケーニクライヒ国まで一瞬で行けるよ」

「便利ですね」

さすが1000年以上ボワアンピール帝国を守ってる神様、凄いアイテムを持ってるな。

でも転移はともかく、混乱と幻覚の魔法は何に使うんだろう?

「じゃあ行ってらっしゃい、無事に帰ってきてね」

「ヴェルテュ様は一緒に行かないんですか?」

「僕は援護射撃担当だから」

「はい?」

援護射撃担当? どういう意味だろう?

ヴェルテュ様が新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェットを鳴らす、次の瞬間俺とノヴァさんはレーゲンケーニクライヒ国へと転移した。
 

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――ヴェルテュ視点――

シエルとノヴァがレーゲンケーニクライヒ国に旅立ったあと、ヴェルテュは王宮のバルコニーでひとりごとをつぶやいていた。

「カルムとシエルくんには、国王と王太子と水の神子を捉えて殺すのは無理だろうね」

ヴェルテュはシエルとノヴァがいたときには見せない険しい顔をした。

「それに水竜メルクーアにおんぶに抱っこでいい思いをしてきたレーゲンケーニクライヒ国の人間が、水竜メルクーア=悪竜オードラッへと知ったところで、今更生贄制度をやめられるとも思えない、数百人の犠牲で数十万人の国民が100年間安全に暮らせる訳だし」

ヴェルテュの手には、新月のヌーヴェル・リュンヌクロシェットの他に、闇のオプスキュリテ・グローブと、闇のオプスキュリテ手錠・マン・セリュールが握られていた。

「レーゲンケーニクライヒ国の国民の目を覚まさせるにはインパクトが必要かな、頭の上から氷の刃を受けるくらいの大きな衝撃がね。ヌーヴェル・リュンヌが悪竜オードラッへを倒すのにも名分が必要だし、少なくても一人は悪竜オードラッへの犠牲になって彼のお腹の中に入ってもらわないとね」

ヴェルテュの紫色の瞳がギラリと光った。

「甘っちょろい考えの二人にはやらせられないかな、汚れ役は僕がやらないとね」

ヴェルテュは援護射撃の準備に入った。


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