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109話「②」
しおりを挟む「シエル無事だったか!」
ヌーベル・リュンヌ様が作った世界から出ると、ノヴァさんに思いっきり抱きしめられた。
「大丈夫だから、苦しいよ潰れちゃう」
俺はお腹をかばいながらそう言った。
「すまない力が入りすぎた、痛くなかったか」
「うん、平気」
「カルムには僕から大体のことを説明しておいたよ、【漫画】とか【同人誌】とかそういう説明は省いてね」
「ありがとうございます」
やっぱりヴェルテュ様はヌーヴェル・リュンヌ様から聞いて全部知ってるんだ。
もしかしてのノヴァさんが俺のパンツを集めたり、精液を集めるしたりしてることまで知ってたり……?
顔に一気に熱が集まった。ノヴァさんそんな恥ずかしいもの集めないでくださいよ……!
「どうしたシエル?」
ノヴァさんが心配そうな顔で俺の顔を覗き込んできた。
「ノヴァさんあのね、全てが終わったらノヴァさんに伝えたいことがあるんだ、今はこれだけしか言えないけど全部終わったら家族3人で幸せに暮らそうね!」
「もちろんだ、だが父上を数に入れるの忘れているぞ、父上と兄上と私とシエル、合わせた4人家族だ」
そういう意味の家族じゃないんだけどなぁ、まあいっか、教えるとノヴァさんが必要以上に心配してしまうから、今は内緒にしておこう。
「ラブラブイチャイチャタイムは終わったかな? それじゃあ作戦会議を始めるよ」
ヴェルテュ様が冷ややかな視線で俺達を見ていた、そういえばこの人が極度のブラコンだってこと忘れてた。
この人の前ではあんまりノヴァさんとイチャイチャしないことにしよう。
ヴェルテュ様のアメジスト色の瞳には底知れぬ闇を感じる。
☆☆☆☆☆
ヌーヴェル・リュンヌ様とヴェルテュ様の立てた作戦はこうだ。
まず俺とノヴァさんがレーゲンケーニクライヒ国に行き、アインス公爵と合流。
アインス公爵はヴェルテュ様の味方で、レーゲンケーニクライヒ国の国王が悪竜オードラッへに生贄を捧げていたことも、悪竜オードラッへ=水竜メルクーアだってことも知ってるらしい。
ザフィーアが婚約破棄された日、牢屋でザフィーアの頬を叩いたのも敵を欺くためにしたことだったそうだ。
立花葵はあの日暴漢にザフィーアを襲わせる気だったらしい、立花葵本当どこまでも腐ったやつだ。
アインス公爵は牢屋の前で一晩中に見張りをし、ザフィーアを神子の策略と暴漢から守った。
辺境に送られるザフィーアに、護衛としてアモルドという自分の部下をつけていた。
俺アインス公爵のこと誤解してたわ、今度会ったら謝っとこ。
ヴェルテュ様が考えた作戦はこうだ、俺と ノヴァさんはアインス公爵とアモルドと合流し、悪竜オードラッへに生贄に捧げられる予定の村人300人を助け出す。
生贄にされた人たちとアモルドの証言をもとに、国王と水の神子立花葵を糾弾する。
立花葵はイケメンを捕らえては自分の性欲のはけ口にしていたそうだ。アモルドさんもその被害者なんだってだって、可哀想だね。だけど俺の口からはそのことに触れないようにって、ヴェルテュ様に注意された。
デリケートな問題だもんな、ましてやレーゲンケーニクライヒ国の人間は禁欲と潔癖を重んじているしな、触れられたくない話題だよな。
後はヌーヴェル・リュンヌが悪竜オードラッへを引きずり出し退治する作戦だ。
肝心なところは神様にお任せしてしまうのは申し訳ないが、人間の俺たちでは悪者とはいえ神であるオードラッへには叶わない、妥当な作戦だと思う。
作戦を決行するのは明日の朝…………いやいやいや待って! ボワアンピール帝国帝の都フォレ・カピタールから、レーゲンケーニクライヒ国の王都ヴァッサーまでは馬を飛ばしても数日かかる! どうやって明日の朝までにレーゲンケーニクライヒ国の王都に行く気なんだ?
「その辺は任せといて」とヴェルテュ様に言われたので、明日の朝まで仮眠を取ることにした。
俺とノヴァさんのベッドはもちろん一緒だ、何をしたのかはご想像におまかせする。
☆☆☆☆☆
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