10 / 83
十話「永久に側に」*
しおりを挟む兄上に手伝ってもらい着替えを終えた。
そういえば髪の色が変わってから、まだ鏡を見ていなかった。部屋の隅にある大きな姿見の前に立つ。
水色のジュストコールを着た育ちの良さそうな美少年が映っていた。いやコレが現世のボクなんだ、自画自賛しないように気をつけよう。ナルシストだと思われる。
プラチナブロンドの髪は灰色がかったくすんだ茶色に変わっていて、濃い青の目は灰色に変わっていた。
「辛いか?」
兄上が悲壮な面持ちで聞いてきた。
前世日本人でごくごく普通の顔をしていたボクには、髪の色と目の色が変わっても、エアネストが美少年であることに変わりはない。
むしろ輝く金髪とサファイアのような青い目のエアネストは、キラキラし過ぎていて少し苦手だった。
このぐらい地味な色の方がボクにはちょうど良い。
「大丈夫ですよ兄上、ボクはこの髪と目の色が気に入りましたから」
本心である。
笑顔で伝えると、兄上に後ろからぎゅっと抱きしめられた。
ボクの胸がドキドキと音をたてる。
「兄上?」
「すまない、この償いは必ずする」
兄上がボクの髪に顔を埋める。
償いなんてそんなことを考えなくていいのに。
ボクは兄上の腕をとき、真っすぐに兄上の顔を見つめる。
「兄上、償いなんてそんな悲しい事を言わないでください! ボクは望んで兄上に光の魔力を上げたのです! 後悔なんかしていません! だから悲しまないでください!」
兄上がせつなげに目を伏せる。
「しかしそれでは」
「どうしても償いがしたいとおっしゃるなら幸せになってください。兄上が幸せになることがボクへの一番の償いです」
兄上の顔を見てにっこりとほほ笑む。
兄上が困ったように眉尻を下げた。
「エアネストにはかなわんな」
「約束してください必ず幸せになるって」
「約束しよう、私は必ず幸せになる」
兄上はそう言ってボクの腰に手を回した。ボクも兄上の背に腕を回す。
「私の幸せはエアネストの側にいることだ」
「えっ?」
「永久にお前の側にいたい、許可してくれるか?」
見上げると、兄上のアメジストの瞳に射抜かれた。
ボクの側にいることが兄上の幸せ?
兄上はずっと家族と離れて暮らしてきたから、これからは家族と一緒に過ごしたいとか、そういう意味かな?
だとしたら拒否する理由はない。
「もちろんです兄上」
家族は一緒に暮らさないとね。
「兄上さえ宜しければ、ずっとボクの側にいてください」
兄弟は仲がいいに越したことはない。
兄上がふわりと笑う。
ゲームのスチル絵にもない、穏やかな笑顔にボクの心臓が早鐘を打つ。
「エアネスト、私はお前のそばを絶対に離れない!」
兄上の紫の瞳の奥がギラリと光った。
兄上の手がボクの頬にふれ、兄上の美しいお顔が近づいてきた。
まばたきしているの間にボクの唇と兄上の唇が重なっていた。
兄上はやはりボクの髪と目の色が変わった事を相当気にしているんだな。
キスしてもボクに光の魔力は戻らないのに、何度もキスしてくるのがその証拠だ。
でも兄上の気持ちも分かる。ボクが兄上の立場だったら、戻らないと分かっていてもできる限りの手を尽くし、光の魔力を戻そうとしただろう。
兄上の舌がボクの口内に入って来るのを、受け入れながらそんなことを考えていた。
兄上の舌がボクの歯列をなぞる。
ぼくは兄上にキスされるのが嫌じゃなくて、むしろ好きで。
でも兄上にとってこれは罪悪感からくる罪滅ぼし。キスじゃなくて人工呼吸みたいなもので。
それが分かっていてもボクの心臓はドキドキしっぱなしで。兄上の舌がボクの舌を絡めとるのを、心待ちにしていた。
「ん…ぁっ、んン……」
兄上の唇が離れ、また角度を変えてキスされる。
舌を絡め取られ、望んでいた快楽に心が躍る。
くちゅくちゅと卑猥な音が響き、お互いの唾液が混ざったものを飲みこむ。
兄上の唇が離れていくころには、体の芯が熱くなり、頬がほてっていた。
兄上にとっては人工呼吸みたいなものなのに、気持ちよくて声が出てしまったり、顔を真っ赤にしてたり、すごく恥ずかしい!
「私はお前がこの世界の何よりも愛おしい」
妖美な笑みを浮かべる兄上に、兄上の言う「愛しい」が家族愛とか兄弟愛だと分かっていても、心臓がキュンキュンしてしまう。
こんな事を続けていたら、兄上を好きになってしまう。
血が繋がっていなくても兄弟、こんな感情を抱いてはだめだと、ボクの理性が警鐘をならす!
兄上はボクを家族として愛していて。ボクの髪を茶色にしてしまった罪悪感から、髪の色を元に戻そうとキスしてるだけなんだ!
恋人に向ける愛情だと勘違いして惚れてはいけない!
ボクは兄上を好きになりそうな気持ちにそっとふたをした。
◇◇◇◇◇
74
あなたにおすすめの小説
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
本編、両親にごあいさつ編、完結しました!
おまけのお話を、時々更新しています。
本編以外はぜんぶ、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
姉が結婚式から逃げ出したので、身代わりにヤクザの嫁になりました
拓海のり
BL
芳原暖斗(はると)は学校の文化祭の都合で姉の結婚式に遅れた。会場に行ってみると姉も両親もいなくて相手の男が身代わりになれと言う。とても断れる雰囲気ではなくて結婚式を挙げた暖斗だったがそのまま男の家に引き摺られて──。
昔書いたお話です。殆んど直していません。やくざ、カップル続々がダメな方はブラウザバックお願いします。やおいファンタジーなので細かい事はお許しください。よろしくお願いします。
タイトルを変えてみました。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる