【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ

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31話「フリード公子、怒る!」

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「ふわっ!」

走っていたら何かにぶつかってしまった。

「大丈夫、ディアーナ?」

「フリード様!」

ぶつかった相手がフリード様と分かりホッと息をつく。

「側にいるっていったのに手を離してごめん」

「フリード様ぁぁぁ! 怖かったよぉぉぉぉ!」

フリード様の胸に顔をうずめ、背に腕を回す。

「どうしたのディアーナ? 何かあった?」

フリード様が私を優しく抱きしめる。

「待ってくれ! 行かないで!」

フリード様と話しているところにコーエン王子が現れた。振り切ったと思ったのに、追いかけて来てたのね。

「フリード様、助けて……!」

目に涙を浮かべ小刻みに震える私を見て、フリード様の目に怒りの色が宿る。美形は怒らせると怖いと言うのは本当のようだ。

こんなに怖い顔をしたフリード様を初めて見た。

フリード様がコーエン王子をキッと睨み、私を自身の背の後ろに隠す。私はフリード様のジュストコールの裾をぎゅっと掴み、フリード様の陰から様子を伺う。

「第二王子殿下、どうしてこちらに?」

フリード様の声が冷たい、心なしか空気も冷えてきた気がする。

フリード様のお父様のルーデンドルフ伯爵は剣聖、お母様のルーデンドルフ伯爵夫人は魔法の才をお持ち。息子であるフリード様は剣と魔法、両方の才能を受け継いでいて、特に氷の魔法が得意だ。 

フリード様の魔力が怒りに反応して漏れ出しているのかもしれない。

「フォークト公爵家のフリード公子か」

二人は面識があったようで、コーエン王子はフリード様の名前を知っていた。

「私の婚約者が酷く怯えていますが、殿下が何かなさったのですか?」

フリード公子に睨まれコーエン王子の顔が額に汗を浮かべる。

フリード様の魔力に反応し周囲の植物の葉が凍りつく。私にはフリード様の目から吹雪シュネーシュトゥルムが出ているように見えた。

「違う! 俺はその子が落としたリボンを偶然拾って、その……届けようとしただけだ」

コーエン王子が握っていた赤いリボンをフリード様に見せる。

「せっかく届けてくださって申し訳ありませんが、そのリボンは婚約者のものではありません」

フリード様が無表情でさらっと答える。

あのリボンが私の身につけていたものだとフリード様も知っている。知っていてしらばっくれたのだ。

フリード様もコーエン王子と関わり合いになりたくないらしい。

「そ、そうなのか……?」

コーエン王子がフリード様の後ろにいる私に尋ねる。

「僕の婚約者は知らないと申しております、お引き取りください」

私に答えさせることなくフリード様が即答する。

フリード様が目に力を込めると、コーエン王子の握っていたリボンが凍り始めた。

「リボンが婚約者のものではないと分かっていただけたようですね。よぼど怖い目にあったのか婚約者の体調が優れません、これにて失礼させていただきます」

フリード様が踵を返そうとする。

「待ってくれ!」

「まだ何か?」

コーエン王子に引き止められ、フリード様の額に青筋が浮かぶ。フリード様にねめつけられたコーエン王子の顔が青くなる。

「そ、そなたの……婚約者の名前を聞いていない、ぼ……俺に紹介してくれないのか?」

第二王子の言葉に私はビクリとした。自己紹介したくない。名乗りたくない。関わりたくない。

しかしそれは第二王子に対してあまりにも無礼だ。

フリード様が眉間にしわを寄せ鷹が獲物を狩るような目でコーエン王子を見据える。コーエン王子は顔を青ざめさせ小刻みに震えていた。

相手は第二王子、挨拶をしろと言われて名乗らずに帰るわけにもいかない。

仕方なく私は一歩前に出てドレスの裾を掴み挨拶する。

「お初にお目にかかります、ディアーナ・フォークトと申します。フリード様の婚約者でフォークト公爵家の長女です」

顔を上げるとコーエン王子がうっとりとした顔でこちらを見ていた。

やめてください! そんな目で見ないでください。全身に鳥肌が立つ。

挨拶が終わるとフリード様は私を自身の背の後ろに隠した。

「俺の名はコーエン・グランツ、この国の第二王子だ」

知ってます。出来れば一生知り合いたくなかったです。できることなら一刻も早くこの場から逃げ出したいです。

「まだ結婚してないのに二人が同じ姓なのはなぜだ?」

「僕が八歳のとき、ディアーナと婚約するためにフォークト公爵家の養子に入りました」

フリード様が淡々と説明する。フリード様はコーエン王子を射抜くように見据えたままだ。さっきより周囲の気温が下がっている。

このままだとフリード様の目から出る吹雪シュネーシュトゥルムでコーエン王子が凍ってしまいそうだ。

「そんなに前から……では二人は兄弟のように育ったのだな、親が決めた政略的な婚約でそこに恋愛感情は……」

コーエン王子が自分に都合よく話を解釈しようとしている。

「僕とディアーナは愛し合っています!」
「私はフリード様を愛しています!」

フリード様と声が揃った。コーエン王子の考えを即効否定する。

「そ、そうなのか……」

私達の言葉にコーエン王子が驚いた顔をしている。

コーエン王子を見るフリード様の目が氷河よりも冷たい。

早くこの場を離れたい。これ以上コーエン王子と関わり合いになりたくない。


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