【完結】「癒やしの力を持つ聖女は王太子に嵌められ民衆の恨みを買い処刑され時を巻き戻る〜二度目の人生は誰も救いません」

まほりろ

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2話「癒やしの力を持つ聖女、タイムリープする」

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目を開けると古い木組みの天井が見えた。

見覚えのある部屋、嗅いだことがある匂い。

「私、ギロチン台にセットされて……それから……」

処刑された事を思い出し戦慄した。ブルブルと震える手で首に触れる。

「よかった……繋がっている」

首筋に手を当てて確認したが、傷一つなかった。

その時扉がドンドンと叩かれた。

「リートちゃん、起きてるのかい? 私だよ」 

ドアの外から聞き覚えのある声がする。

この声はアポテーケ村にいたとき、お隣に住んでいたおばさんの声だ。

私はベッドから出て、ゆっくりと扉を開けた。

にこやかに笑う中年のご婦人が立っていた。間違いない、昔隣に住んでいたおばさんだ。

おばさんは右手には大きなバスケットを抱え、左手にピンクの花を持っている。

「やっと起きたね。おはようリートちゃん、それから誕生日おめでとう。クッキー焼いたからお食べ、土手に綺麗なお花が咲いていたから摘んできたんだよ、よかったら食卓にでも飾って」

おばさんがにこにこ笑いながら、お菓子の入ったバスケットと、花束を私に手渡した。

「誕生日……?」

「やだ忘れちゃったの? 今日はリートちゃんの十四歳の誕生日よ」

「ボケるにはまだ早いよ」と言ってケタケタと笑いながら、おばさんは帰って行った。

扉を閉め、ゆっくりと息を吐く。

胸に手を当てると、心臓がどくどくと激しく音を立てていた。

「時間が巻き戻ってる……?」

私は部屋の中を見回す、三人がけのテーブルと椅子、古ぼけた食器棚、一人用の木のベッド、壁にかけられた小さな鏡、間違いなく十五歳まで私が住んいた家だ。

壁の鏡の前に立ち自分の姿を確認する。

栗革くりかわ色の髪に胡桃くるみ色の瞳の見慣れた顔、でも鏡の中の私はあどけなさを残していた。

どう見ても十三歳~十四歳ぐらいの少女の顔だ。

「タイムリープ……したの?」

未来の記憶を持ったまま、精神だけ時を遡り、過去の自分の体に宿るタイムリープというものがあると、王宮の書物で読んだことがある。

おばさんは今日が私の十四歳の誕生日だと言っていた。

やり直し前の私は二十歳だったから、六年分の時が巻き戻ったことになる。

十四歳の誕生日、私は癒やしの力を得た。

その日の夕方村長様が馬車の下敷きになり大怪我を負う、私はそこで初めて癒やしの力を使った。

「私は……この村にいてはいけない」

私は急いで荷造りをし【旅に出ます】と書いた紙を机の上に置き、生まれ育った村を後にした。

両親は一年前に亡くなった、私が村を出て行っても悲しむ人はいない。

私はここにいてはいけない、この村にいたら私は村長様を助けてしまう。

私が村長様を助けるために癒やしの力を使ったら、いずれ王家に知られてしまう。

王族に見つかり利用されるのはもう嫌、沢山の人が私のせいで不幸になるのを見たくない。

やり直し前の人生、初めのうちはアポテーケ村の人や近隣の村の人達の怪我や病を治しているだけだった。

私はそのままひっそりと村の人たちを治療して、一生アポテーケ村で生きていくつもりだった。

でも運命は残酷で、王太子が私の噂を聞きつけてアポテーケ村を訪ねて来た。それから私の人生はおかしくなった。

王都に連れて行かれ、国王の病を治したことで聖女として崇められ、王太子に「皆の為」と説得され、大勢の人を癒やした。そして要らなくなったら全ての罪を押し付けられ処刑された……そんな人生はもう嫌。

私が王都に行けばまたレーベン公爵の養女にされるだろう。レーベン公爵家の人を巻き込めない。

レーベン公爵家の人は平民出身の私にも分け隔てなく接してくれた、養父である公爵は貴族としての嗜みを、養母である公爵夫人は読み書きや刺繍やダンスを教えてくれた。

メイドさんも執事さんも、みんな情に満ちたいい人達だった。

私を養子にしたばかりに養父は爵位を剥奪され、家を取り潰され、養父の三親等先の親族は処刑され、使用人まで殺された。

私が治療を施した貧しい子供達は奴隷として海外に売られた。

私が癒やした兵士達は、何度も何度も治療され戦場に送られ廃人になった。

ハイル国に攻められたメーアト国は、戦争に負けハイル国の属国になった。

今回の人生でも、私が癒やしの力を使えば遅かれ早かれ王家に嗅ぎつけられる。この力を王家に悪用させる訳にはいかない。

村長様が大怪我をするのを分かっていて見捨てるのは、心苦しい。

だけど私が癒やしの力を使えば村が無くなる。六年後アポテーケ村は悪魔の聖女の誕生した地として焼き払われ、村人は皆殺しにされる。

私はアポテーケ村にいないほうがいい。

今回の人生では聖女の力を使わない。

大勢の人巻き込まない為に村長様を見捨てる私は酷い人間だ、でも他に選択肢がない。

今回の人生は誰も私の巻き添えにしたくない。

私は最低限の荷物を背に村を後にした。

「ごめんなさい村長様、さようなら村の人達」

私がアポテーケ村の土を踏むことは二度とないだろう。



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