【完結】「癒やしの力を持つ聖女は王太子に嵌められ民衆の恨みを買い処刑され時を巻き戻る〜二度目の人生は誰も救いません」

まほりろ

文字の大きさ
9 / 11

9話「ビーネの過去」

しおりを挟む

紅茶のお代わりを入れ、少し落ち着いた頃、ビーネが自身の生い立ちについて話し始めた。

「リアの秘密を知ってるのに、俺の秘密を話さないのはフェアじゃないよね」

知りたいビーネのことを、もっと沢山。

「俺の本当の名前は………アルフォンス・グロスマン」

名字があるということは、ビーネはやはり貴族だったのね。

「俺の母は写本装飾師だった、注文された本を貴族の屋敷に届けに行ったとき、侯爵家の嫡男だった父に出会った、二人はひと目で恋に落ちた」

ビーネには高い教養があるので貴族か商人の庶子ではないかと思っていたが、私の推測はあたっていたようだ。

「一年後、母は妊娠していることを隠し父の前から姿を消した。侯爵家に公爵家の令嬢との縁談が持ち込まれたからだ。

母は生まれ育った町に帰り女手一つで俺を育ててくれた。

母は亡くなる前に俺の父親について話してくれた。『お前の父親は偉い侯爵様だ』と『侯爵様に手紙を書いたから、私が死んだら引き取ってくれるはず、だから心配しないで』と。そう言い残して母は亡くなった。俺が七歳のときだった」

お母さんの話をするビーネは寂しそうだった。

「母の葬儀に場違いなぐらい立派な喪服を着た人がいて、その人が侯爵だった。

侯爵家は何も言わず俺の事を引き取ってくれた。母親を亡くした俺は孤児院に入るか、侯爵家に付いていくか二択しかなかった。疫病や凶作で孤児院がいっぱいだったから俺は侯爵について行くことにした。俺が意地を張り孤児院に入ることで定員がいっぱいになって、本当に身寄りのない子が孤児院に入れなくなると困るから」

ビーネは子供の頃から思いやりが深かったのね。

「侯爵家には正妻と正妻の生んだ娘がいた。二人は突然現れた愛人の子の俺を
寛大に受け入れ愛情を持って接してくれた。

読み書きや剣術は侯爵家で習った、父親はほとんど家に帰って来なかったけど継母も妹も使用人も性根の良い人たちで、とても幸せだった……あの日が来るまでは」

ビーネは辛そうに顔を歪めた。

「侯爵家は妹に婿養子を取って継がせることが決まっていた、だけど父が『侯爵家は長男のアルフォンスに継がせたい』と言い出して……それからあの家はおかしくなった」

ビーネが両手をぎゅっと握りしめた。

「妹が侯爵家を継がないと分かった途端、妹の婚約者は妹に婚約破棄を突きつけた、『侯爵家の跡取りでなくなったお前なんて用無しだ、ブス』と言って大勢の前で妹との婚約破棄をした。

妹はその日から部屋に籠もるようになって、穏やかな性格だった継母はイライラして俺に当たるようになった。そんなある日、食事に毒を盛られた」

「そんな……」

ビーネが毒を盛られたと知り、私の心臓がどくどくと音を立てる。

「一命は取り留めたけど、俺は侯爵家にいてはいけないんだと思い知った。俺が妹を不幸にしたんだと……だから名前と身分を捨てて家を出た」

「……辛かったのね」

「リアの人生ほどではないよ」

「それでビーネが家を出たあと、ご家族はどうなったの?」

「父親は妹に起きたことと継母の犯した罪を知り、自分の一存で跡継ぎを決めたことを反省したようだ。

継母は俺を本気で殺す気はなかったらしい。俺に毒を盛ったことを凄く後悔していて、長かった髪をバッサリと切ったと人づてに聞いた」

貴族の女性は美しい髪を誇りにしている、髪を伸ばしトリートメントし、より美しく見せることにこだわる。その髪をバッサリ切るのは社交界から身を引く事を意味する。

「それでも継母は自分が許せなかったらしく、国で一番厳しい修道院に入り二年間過ごしたらしいよ」

「そうだったの」

お義母様はとても反省しているのね。

「妹はしばらく家に引きこもっていたけど、妹を慰めに来た幼馴染の伯爵家の三男といい仲になり、婚約したみたいだ。

しばらくして妹の元婚約者は博打や女遊びが好きなとんでもないクズ野郎だと分かってね、縁が切れて良かったと継母も妹も喜んでるって話だよ」

「そうだったのね」

「妹と継母が不幸にならなくてホッとしてる、俺はあの人達の不幸を望んでいる訳じゃないから」

「情け深いのねビーネは」

「ありがとう」

お互いの秘密を全て話して、私たちはお互いに楽になった。

しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

何も決めなかった王国は、静かに席を失う』

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 表には立たず、裏で国を支えてきた公爵令嬢ネフェリア。 だが―― 彼女が追い出されたのは、嫉妬でも陰謀でもなかった。 ただ一つ、「決める役割」を、国が彼女一人に押しつけていたからだ。 婚約破棄の後、ネフェリアを失った王国は変わろうとする。 制度を整え、会議を重ね、慎重に、正しく―― けれどその“正しさ”は、何一つ決断を生まなかった。 一方、帝国は違った。 完璧ではなくとも、期限内に返事をする。 責任を分け、判断を止めない。 その差は、やがて「呼ばれない会議」「残らない席」「知らされない決定」となって現れる。 王国は滅びない。 だが、何も決めない国は、静かに舞台の外へ追いやられていく。 ――そして迎える、最後の選択。 これは、 剣も魔法も振るわない“静かなざまぁ”。 何も決めなかった過去に、国そのものが向き合う物語。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

縁の切れ目が金の切れ目です!

あんど もあ
ファンタジー
「みすぼらしいお前とは婚約破棄だ!」 「じゃあ、貸してたお金を返してくださいね」 質素倹約がモットーのアナベルは、浪費家の婚約者に婚約破棄されてしまう。だがそれは想定内で……。

大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…

みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。   

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

グランディア様、読まないでくださいっ!〜仮死状態となった令嬢、婚約者の王子にすぐ隣で声に出して日記を読まれる〜

恋愛
第三王子、グランディアの婚約者であるティナ。 婚約式が終わってから、殿下との溝は深まるばかり。 そんな時、突然聖女が宮殿に住み始める。 不安になったティナは王妃様に相談するも、「私に任せなさい」とだけ言われなぜかお茶をすすめられる。 お茶を飲んだその日の夜、意識が戻ると仮死状態!? 死んだと思われたティナの日記を、横で読み始めたグランディア。 しかもわざわざ声に出して。 恥ずかしさのあまり、本当に死にそうなティナ。 けれど、グランディアの気持ちが少しずつ分かり……? ※この小説は他サイトでも公開しております。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...