【完結】「婚約破棄ですか？ それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか？」

17話「フィルタ侯爵の怒り」微ざまぁ回

女王陛下が会場に視線を向ける。

「フィルタ侯爵、娘がこのような目に合っていた事を知っていましたか？」

女王陛下が斜め後ろにいた父に視線を合わせる。父は鬼のような形相でザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人の四人を睨んでいた。

父の隣には母の兄であるコアト・シュティーア公爵と、父の弟でクレープス公爵家の婿養子で現クレープス公爵家の当主であるベン・クレープス公爵の姿があった。

「レイモンドの所業については娘から聞いておりましたが、レイモンドの母であるイエーガー公爵夫人……今はザックス伯爵令嬢でしたな。ザックス伯爵令嬢と彼女の友人のトーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人にされていたことは知りませんでした」

婚約破棄の証拠が揃っていましたし、私はレイモンド様との縁が切れれば良かった。

だから父にはロビサ様と、ロビサ様の取り巻きのトーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人にいじめられていたことを黙っていました。

「そうなのアリシア？」

「はいレイモンド様のことでご心配をおかけしましたので、これ以上心労をおかけしたくなく、ロビサ様とトーマ子爵夫人とコッホ子爵夫人とヴァイル男爵夫人にされたことは黙っておりました」

「水臭いことを言うな！　親子ではないか！　話してくれたらこんな奴らをアリシアに近づけなかったのに！」

父がザックス伯爵令嬢を睨みつける。父がザックス伯爵令嬢とその取り巻きに向ける目はゴミを見る目だった。

「そうね私もそう思うわ。アリシアこれからは何でも気軽に相談しなさい」

「承知いたしました、女王陛下。お気遣い感謝します」

「フィルタ侯爵はザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人の四人をどうしたいですか？」

女王陛下が父に問う。女王陛下はこの四人を裁く権利を父に委ねるおつもりかしら？

「娘を傷つけたこの四人を八つ裂きにしてやりたいです！」

父が四人を人を殺す目で睨む。四人の体はビクリと震え、目の端に涙を湛えていた。

「ですが法的な裁きは女王陛下におまかせします。私はフィルタ侯爵家の当主としてアインス商会の会長として、彼らに経済的な制裁を与えます。フィルタ侯爵家はザックス伯爵家、ヴァイル男爵家、トーマ子爵家、コッホ子爵家、この四家とは今後一切いかなる取引をもいたしません！　我が領内に立ち入ることを許しません！！」

父の言葉を聞いてザックス伯爵令嬢、トーマ子爵夫人、コッホ子爵夫人、ヴァイル男爵夫人の周りにいた親族が息を呑んだ。

夫人たちの家族は、自分たちにまで責任が及ぶとは思っていなかったようだ。

フィルタ侯爵家の領地は広大で交通の要です。侯爵家の領地を通らずに商売をしようとすると大きく遠回りすることになり多大な損失が出てしまいます。