15 / 27
十五話「王都への旅立ち前夜、私は王様の花嫁になる運命なの?」
しおりを挟む―ヒロイン視点―
一カ月後
「いよいよ明日は王都に向けて出発ですね。王都とはどんなところなのでしょう? 大きな町ならおいしい食べ物もありますよね? 王都の音楽やファッションにも触れてみたいです」
明日はイオニアス王国の王都への旅立つ日。
シェーンフェルダー公爵領は森と湖に囲まれた、とてものどかなところだった。お城の人たちも町の人たちも、みんな親切で私にやさしくしくれた。
レヴィン様は私のわがままに付き合い、お城の中や町を案内してくれた。
レヴィン様と一緒にいて分かったことは、レヴィン様はお城の人たちにも、町の人たちにもとても愛されているってこと。
こんなに素敵な人が独身で、婚約者も恋人もいないなんて不思議。
この世界の人は結婚が早いのに、王の弟であるレヴィン様に婚約者も婚約者候補もいないなんて。
詳しく聞きたいけど、レヴィン様はその辺のことを何も教えてくださらない。ドミニクさんも何も話してくれない。
私はレヴィン様のことが好き、レヴィン様のことをもっと知りたい。
最初はただの憧れだった。金髪碧眼の美少年、絵に描いたような王子様。
でも今は憧れじゃなくて、レヴィン様が本気で好きだ。
女性に免疫のないところも、時々ツンデレになるところも、時折見せる悲しげな表情も……好き、全部好き、大好き。
王都から帰ったら、告白してみようかな?
相手は王子様、身分違いの恋だけど告白するぐらいいいよね?
「レヴィン様が一緒なので、すごく気強いです」
知らない世界でひとりぼっちの私を、レヴィン様はずっと支えてくれた。
レヴィン様がいなかったら、私の心はとっくに折れていた。
「シェーンフェルダー公爵領を案内してくださったみたいに、王都のことも案内してくださると嬉しいです」
にっこりと笑いかけると、レヴィン様に目を逸らされた。
時々こんな風に目を逸らされることがある、嫌われているのかな……?
そんなとき、レヴィン様はいつも悲しげな顔で俯いていらっしゃる。
今日はいつもにも増して、沈んだ表情をしていらっしゃっる。
シェーンフェルダー公爵領を立つ日が決まり、王都行きが近づくにつれレヴィン様の表情は曇っていった。
今日はこの世の終わりみたいな顔をしている。
「…………女神様」
「ほのかでいいって言ってるじゃないですか、レヴィン様」
王子様→レヴィン王子→レヴィン様と段階的に名前の呼び方を変えることに成功した。
でもレヴィン様はずっと私のことを「女神様」と呼んでいる。私はレヴィン様に名前で呼んでもらいたいのに。
私がいくら「ほのかでいいですよ」と言っても「女神様を名前で呼ぶことが許されているのは陛下だけです」と返されてしまう。レヴィン様の態度はかたくなだ。
国王陛下ってそんなに偉いの?
陛下の弟であるレヴィン様だって十分高い地位にいるんだから、私を名前で呼んでもいいと思うんだけどな。
「王都に行く前に、女神様にお伝えしなければならないことがあります」
レヴィン様がいつになく神妙な面持ちで、私を見つめる。
「なんですか? レヴィン様」
レヴィン様がいつもは見せない真剣な表情に、場の空気がピリリとする。
「あなたは…………王都に行き、王に謁見し…………」
「それは聞きました。王様ってどんな方なのでしょう? 気難しい方でないとよいのですが。陛下はレヴィン様の実の兄上なんですよね、お顔立ちは似ているんですか?」
レヴィン様が美形なんだから、王様もきっと凛々しいお顔をしているハズ。
レヴィン様とは十五歳も年が離れてるんだよね?
美少年というよりは、美青年って感じかな? それともイケオジ?
「あなたは国王に拝謁し………………陛下の花嫁になります」
「えっ……?」
レヴィン様の言葉に頭の中が真っ白になった。
「レヴィン様……いまなんて……?」
「あなたは王と結婚するのです」
再度伝えられた言葉に、目の前が真っ暗になる。
「そんな…………」
息ができない、酸素はどこ……?
「これは神話の時代からの我が国の決まりで……」
レヴィン様はなんでそんなことを、淡々と言えるの?
「聞きたくありません!」
聞きたくないよそんな言葉……!
「女神様……」
「どうして、どうしてそんな酷いことが平然と言えるのですか……!」
涙で視界がにじむ。
レヴィン様お願い、それ以上なにもおっしゃらないで……!
「兄上は聡明な方で、女神様と少し年は離れていますが、見目も良く剣術も得意で……」
レヴィン様の口から、他の男性を推す言葉なんか聞きたくない!
「そんなこと言ってるんじゃありません……!」
「女神……様」
「どうして? どうして……レヴィン様の口から、他の人と結婚する話を聞かされなくちゃいけないの!? 私は、私の気持ちは……!」
神話とか約束事とか知らない! 女神なんてなりたくてなったんじゃない!
十五歳も年上の会ったこともない男と結婚するなんて嫌だよ!
「私はレヴィン様のことが好きなんです……!」
レヴィン様に感情をぶつけてしまった。
私の完璧な片思い。
無表情で他の男と結婚しろなんて言う人を、好きになっても意味ないのに……。
「女神……」
「触らないで……!」
私はレヴィン様の手を払い、部屋を飛び出した。
涙があふれ、頬を流れた。
2
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
蝋梅
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる