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十六話「王子の決断」
しおりを挟む―レヴィン王子視点―
ボクは何をやっているんだ……。
大切な人に他の男との結婚を伝え、それを神話の時代からの決まりごとだと言って自分を納得させ。
好きな人を泣かせ、何もできないなんて……。
今日ほど自分をふがいなく思ったことはない。
ボクは何も守れない。民も領地も自分の命も……好きな人も。
体が勝手に動き、彼女の後を追っていた。
「女神様……!」
彼女の腕を掴む。
「嫌ッ、放して……!」
悲鳴のような叫び声。
彼女の黒真珠のような瞳は涙で濡れ、頬には涙の流れた跡があった。
心臓が剣で刺されたように痛い。
彼女を泣かせた自分が憎い。
ボクはアホだ……彼女の涙を見るまで、自分の気持ちに気づかないなんて……!
「………ほのか!」
彼女の腕を掴む手に力を入れ、彼女を抱きよせる。
女神の名を呼ぶことは、王にしか許されていない。誰かに知られれば不敬罪で罰せられる。
だがそんなこと知ったことか……!
「レヴィン……様」
ほのかが困ったような顔でボクを見上げる。
「好きだ」
たった三文字の言葉を言うのにずいぶんと時間がかかってしまった。
「行かせない! 君を陛下の元へは行かせない! ほのかはボクが守る!」
屋敷の使用人や領地の民の顔が脳裏をよぎる。
ごめん……ボクは悪い領主だ。ボクは君たちを守れない。
民と愛する人を天秤にかけ、ボクはほのかを選んだ。
ボクは地獄に落ちるだろう、だがそれでもいい。ほのかを抱きしめるこの腕をほどきたくない。
「レヴィン様……!」
ほのかの頬を涙が伝う。
「愛してる」
もう一度愛の言葉を伝えると、ほのかはためらいがちにボクの背に腕を回した。
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