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夢の中の豚野郎
しおりを挟む寮に帰り、素朴だがうまい晩飯を食うとお風呂で豚野郎のワガママムチムチボディを清め、流れるようにベッドにインする。
柔らかいお布団はいいですね。
こうして寝心地のいいベッドにいる時が一番幸福を感じます。
さて明日はどんな日になるのでしょうか。
こうして答えの出ないことを想像する時の不安と楽観が混じり合ったなんとも言えない感じ最高にございます。
ああリラックスしてきたらネム…zzz。
眠って記憶が飛んだと思ったら周りが白いです。
朝でしょうか。フィールド外のバグワールドの中でしょうか。
それとも精神と時の部屋でしょうか。
まだ瞼を開けてないのに周りが見えるとはおかしいですね。
あ、よく見るとこの真っ白なフィールドの中に全裸の豚野郎がいます。
全裸の野郎と密室で二人きり。
非常に恐ろしい状況です。
この現実に遭遇しないような非現実的な状況。
これは十中八九夢ですね。
とりあえず、同じ空間にいるリアルオークをシメましょうか。
大概こうやって夢の世界に強制的に意識ありでインした時って、妖怪とか悪霊とかの仕業が大半ですからね。
そういう奴らは理不尽に強い奴らばかりなので、悟られる前にヤるに限ります。
不死身だったら自分が起きるまでハメ殺しをする必要があるのでできれば不死身タイプじゃないのでお願いします。
「悪霊退散!」
「ブホォ!?」
両手を組んで振り下ろしを決めると獣のような悲鳴をあげて豚野郎が倒れた。
「ブヒィィィ! 何するんだ、貴様!」
「いやこっちのセリフですよ。人の夢の中で何入ってきてんですか。早く出ててください」
「元々私の体で私の夢だ! 失恋中で何もやる気にならんから貴様に貸してるだけだ! それよりも貴様日中私が悪党どもを見かけたらサインを出してるのなぜ無視する!」
私の体と夢?
てことはここは豚野郎の夢の中ってことか。
俺が寝たので普通に俺の夢の中に身元不明のモンスターが侵入して来たと思った。
「え~、信用できないじゃないですか。自分の立場から見て、どこをどう信用しろと」
「何が悲しくて自分の肉体を危険が迫ってる中でふざけたマネをしなければならんのだ!」
いやあ、でも言うて豚野郎は基本行動めちゃくちゃだからな。
彼氏持ちの女の子に横恋慕してブチギレ散らすし、拒絶されるとしょうもない嫌がらせをするし。
正直俺には理解できない人種だ。
「スラン君の様子を見てると後先考えずに自分のやりたいことをしたようにしか見えないからな。ぶっちゃけ自分が死にそうになってもなんかやりてえなでやる気がするし」
実際そうやってやりたい放題やった果てに破滅してるからな。
「違う! 私は好きなことなどやっていない! 周りが肯定してきたことをただやっただけだ! それをこの学園の奴らが……」
俺のマジレスが余程心に突き刺さったようで、豚野郎は苦しげに呻く。
なーるほど。
教育があれだとは思ったがヘイコラしてる周りから全肯定されることで勘違いして、それが最悪の形で学園で全て現れてしまった感じか。
こいつの性根の部分もあると思うが、環境が悪かった部分も大きいか。
まあ同情するわけではないけど話半分に聞いてやろう。
「ああ、流石にデリカシーがなかったね。ごめん。とりあえず君が悪党とサインで示したやつは話半分で信じることにするよ」
「話半分……。それは貴様の記憶にある『ティンクル・フィーバー』というゲームのせいか?」
なぜ豚野郎が俺の世界のエロゲを。
俺の記憶でも共有しているとでも言うのか。
「それもありますけど。どうしてそんなこと知ってるんです?」
「貴様の記憶をここで見ることができるからな。貴様が外で色々やっている間に見させてもらった」
いや何俺の断りなくネイキッドな俺を見ているんですか。
他人に自分の半生を見られるとか普通に羞恥イベントですよ。
やはり教育とか周りの環境関係なしにこの豚野郎悪か。
「おそらく貴様はゲームの一部しかプレイできていない。だからゲームの記憶に全幅の信頼を置くのはやめた方がいい」
なんだ…と…。
パッケージに出てくるヒロインは全員ルートクリアしたのにまだルートがあると。
なんなんですかそれは。
もしかしてクソみたいに面倒な条件をクリアしないと攻略できないと言われる忌まわしき隠しルートがこのエロゲにも存在しているとでも言うんですか。
サクッとエロいの見たいだけの人が多いのにわざわざ面倒を手順を踏ませるあの悪しき風習が『ティンクル・フィーバー』にも存在すると。
「まさか隠しルートですか?」
「そうだ。いささか貴様のゲームの情報が完全だとするとあまりにも不可解な点が多いし、何より私が悪党だと確信した人間と貴様の記憶にある人物像の乖離が甚だしい」
最後のはあなたの直感が外れているだけではと思ったが、不可解な点があるということは確かだ。
本来は騎士舎から延々と命令を出すだけのファラスが聖女の護衛なんてやってたし。
基本的に何か起ころうと淡々としていて、あんなにローゼリンデに関わずらうようなやつじゃないからな。
「確かに一理ありますね。そのルートに強制的に入ってるかもしれないってことですよね」
「ああ、おそらくロロナとファラス奴らが主に動くルートに入っている」
「あの君の勘では悪党確定の二人ですか。本当に悪党だったら碌なことになりそうじゃないですね。一人は自由に動ける人で行動範囲無限大ですし、一人は教会手足みたいに動かせる人ですから」
「二人が戦闘能力を持たないことがせめてもの救いだが。搦手がひどく得意だからな。朝もロロナが聖女に顔立ちが似通っているのを利用して決闘をけしかけて来たからな」
え。
朝のあれ、聖女モードのローゼリンデじゃなくてロロナかよ。
身長も雰囲気も違うけどどういうことですか。
「朝の聖女がロロナですか。流石に身長が違いすぎて無理じゃないですか?」
「いつも身長が高く見せかけているのだろう。歩き方があの女は不自然だし、なぜか昨日だけあの女から聖女の匂いが微かにした」
身長云々には流石に無理があるんじゃないかと思ったが、ヒロインたちの悪質ストーカーだけあって匂い云々は謎の信頼感があるな。
とりあえず豚野郎の変態性を信じて朝のことを仕組んだのはロロナと考えるのが無難か。
「じゃあとりあえず危害を加えて来てるし、目下はロロナを抑えるのを最優先に考えた方がいいってことですかね。ファラスは教会のほぼトップで手がおいそれと出せないですし」
「それがよかろう。本来のルートがわからない分それくらいしか手立てもないしな」
豚野郎からロロナ優先の承諾が降りると意識が霞んできた。
ああ、これはもうすぐ起きますね。
夢の中の豚野郎バイバイです。
ロロナをシメに行きます。
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