エロゲの豚野郎に転生してなるべく怒りを買わないようにしたらヒロインたちの好感度がカンストした

竜頭蛇

文字の大きさ
19 / 48

夢の中の豚野郎

しおりを挟む


 寮に帰り、素朴だがうまい晩飯を食うとお風呂で豚野郎のワガママムチムチボディを清め、流れるようにベッドにインする。
 柔らかいお布団はいいですね。
 こうして寝心地のいいベッドにいる時が一番幸福を感じます。
 さて明日はどんな日になるのでしょうか。
 こうして答えの出ないことを想像する時の不安と楽観が混じり合ったなんとも言えない感じ最高にございます。
 ああリラックスしてきたらネム…zzz。

 眠って記憶が飛んだと思ったら周りが白いです。
 朝でしょうか。フィールド外のバグワールドの中でしょうか。
 それとも精神と時の部屋でしょうか。

 まだ瞼を開けてないのに周りが見えるとはおかしいですね。
 あ、よく見るとこの真っ白なフィールドの中に全裸の豚野郎がいます。
 全裸の野郎と密室で二人きり。
 非常に恐ろしい状況です。
 この現実に遭遇しないような非現実的な状況。
 これは十中八九夢ですね。

 とりあえず、同じ空間にいるリアルオークをシメましょうか。
 大概こうやって夢の世界に強制的に意識ありでインした時って、妖怪とか悪霊とかの仕業が大半ですからね。
 そういう奴らは理不尽に強い奴らばかりなので、悟られる前にヤるに限ります。
 不死身だったら自分が起きるまでハメ殺しをする必要があるのでできれば不死身タイプじゃないのでお願いします。

「悪霊退散!」

「ブホォ!?」

 両手を組んで振り下ろしを決めると獣のような悲鳴をあげて豚野郎が倒れた。

「ブヒィィィ! 何するんだ、貴様!」

「いやこっちのセリフですよ。人の夢の中で何入ってきてんですか。早く出ててください」

「元々私の体で私の夢だ! 失恋中で何もやる気にならんから貴様に貸してるだけだ! それよりも貴様日中私が悪党どもを見かけたらサインを出してるのなぜ無視する!」

 私の体と夢?
 てことはここは豚野郎の夢の中ってことか。
 俺が寝たので普通に俺の夢の中に身元不明のモンスターが侵入して来たと思った。

「え~、信用できないじゃないですか。自分の立場から見て、どこをどう信用しろと」

「何が悲しくて自分の肉体を危険が迫ってる中でふざけたマネをしなければならんのだ!」

 いやあ、でも言うて豚野郎は基本行動めちゃくちゃだからな。
 彼氏持ちの女の子に横恋慕してブチギレ散らすし、拒絶されるとしょうもない嫌がらせをするし。
 正直俺には理解できない人種だ。

「スラン君の様子を見てると後先考えずに自分のやりたいことをしたようにしか見えないからな。ぶっちゃけ自分が死にそうになってもなんかやりてえなでやる気がするし」

 実際そうやってやりたい放題やった果てに破滅してるからな。

「違う! 私は好きなことなどやっていない! 周りが肯定してきたことをただやっただけだ! それをこの学園の奴らが……」

 俺のマジレスが余程心に突き刺さったようで、豚野郎は苦しげに呻く。
 なーるほど。
 教育があれだとは思ったがヘイコラしてる周りから全肯定されることで勘違いして、それが最悪の形で学園で全て現れてしまった感じか。
 こいつの性根の部分もあると思うが、環境が悪かった部分も大きいか。
 まあ同情するわけではないけど話半分に聞いてやろう。

「ああ、流石にデリカシーがなかったね。ごめん。とりあえず君が悪党とサインで示したやつは話半分で信じることにするよ」

「話半分……。それは貴様の記憶にある『ティンクル・フィーバー』というゲームのせいか?」

 なぜ豚野郎が俺の世界のエロゲを。
 俺の記憶でも共有しているとでも言うのか。

「それもありますけど。どうしてそんなこと知ってるんです?」

「貴様の記憶をここで見ることができるからな。貴様が外で色々やっている間に見させてもらった」

 いや何俺の断りなくネイキッドな俺を見ているんですか。
 他人に自分の半生を見られるとか普通に羞恥イベントですよ。
 やはり教育とか周りの環境関係なしにこの豚野郎悪か。

「おそらく貴様はゲームの一部しかプレイできていない。だからゲームの記憶に全幅の信頼を置くのはやめた方がいい」

 なんだ…と…。
 パッケージに出てくるヒロインは全員ルートクリアしたのにまだルートがあると。
 なんなんですかそれは。
 もしかしてクソみたいに面倒な条件をクリアしないと攻略できないと言われる忌まわしき隠しルートがこのエロゲにも存在しているとでも言うんですか。
 サクッとエロいの見たいだけの人が多いのにわざわざ面倒を手順を踏ませるあの悪しき風習が『ティンクル・フィーバー』にも存在すると。

「まさか隠しルートですか?」

「そうだ。いささか貴様のゲームの情報が完全だとするとあまりにも不可解な点が多いし、何より私が悪党だと確信した人間と貴様の記憶にある人物像の乖離が甚だしい」

 最後のはあなたの直感が外れているだけではと思ったが、不可解な点があるということは確かだ。
 本来は騎士舎から延々と命令を出すだけのファラスが聖女の護衛なんてやってたし。
 基本的に何か起ころうと淡々としていて、あんなにローゼリンデに関わずらうようなやつじゃないからな。

「確かに一理ありますね。そのルートに強制的に入ってるかもしれないってことですよね」

「ああ、おそらくロロナとファラス奴らが主に動くルートに入っている」

「あの君の勘では悪党確定の二人ですか。本当に悪党だったら碌なことになりそうじゃないですね。一人は自由に動ける人で行動範囲無限大ですし、一人は教会手足みたいに動かせる人ですから」

「二人が戦闘能力を持たないことがせめてもの救いだが。搦手がひどく得意だからな。朝もロロナが聖女に顔立ちが似通っているのを利用して決闘をけしかけて来たからな」

 え。
 朝のあれ、聖女モードのローゼリンデじゃなくてロロナかよ。
 身長も雰囲気も違うけどどういうことですか。

「朝の聖女がロロナですか。流石に身長が違いすぎて無理じゃないですか?」

「いつも身長が高く見せかけているのだろう。歩き方があの女は不自然だし、なぜか昨日だけあの女から聖女の匂いが微かにした」

 身長云々には流石に無理があるんじゃないかと思ったが、ヒロインたちの悪質ストーカーだけあって匂い云々は謎の信頼感があるな。
 とりあえず豚野郎の変態性を信じて朝のことを仕組んだのはロロナと考えるのが無難か。

「じゃあとりあえず危害を加えて来てるし、目下はロロナを抑えるのを最優先に考えた方がいいってことですかね。ファラスは教会のほぼトップで手がおいそれと出せないですし」

「それがよかろう。本来のルートがわからない分それくらいしか手立てもないしな」

 豚野郎からロロナ優先の承諾が降りると意識が霞んできた。
 ああ、これはもうすぐ起きますね。
 夢の中の豚野郎バイバイです。
 ロロナをシメに行きます。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

処理中です...