エロゲの豚野郎に転生してなるべく怒りを買わないようにしたらヒロインたちの好感度がカンストした

竜頭蛇

文字の大きさ
35 / 48

悪徳セラピスト豚野郎

しおりを挟む

 水着イベント中ローゼリンデは噴水広場にいるのでそちらに向けて飛んでいきます。
 噴水広場はこの島唯一水が出ているため、人は勿論動物とか無害な魔物も訪れる場所であり、動物好きという設定のあるローゼリンデはここに足繁く通っており、本来ならばイクスにここで動物を可愛がっているところを発見され、恥ずかしがるイベントが発生する場所です。
 到着すると早速ローゼリンデがタマアザラシというバスケットボールくらいの大きさのボールみたいなアザラシを懐で抱きしめているのを発見しました。
 タマアザラシは「何が聖女だ……。性女じゃねえか!」とプレイヤーに言わしめた凶暴な胸に目潰しをされ、胴体と見分けがつかない首部分にちょうどいい感じに手が回されていることで首が絞められ非常にグロッキーな状態になっております。
 本人からしたら愛情によるスキンシップかもしれませんが傍から見たら動物虐待の現場です。

「死ぬぞそいつ」

「え……あ?」

 指摘すると驚いたローゼリンデが手を離し、初めて人間による恐怖を植え付けられたのか、タマアザラシが何度も振り返りながら必死に逃げていきます。
 かわいそうだけど可愛いですね。
 もしかしたら人間に危害を加える動物というのはこうして生まれるのかもしれませんね。
 あっちの世界でもじっちゃん家の犬にいとこがジャンプ騎乗してたら犬が骨折して以来人に対して凶暴になったりしたりしましたし。
 まあ野生の畜生であるタマアザラシがどうなろうとどうでもいいんです。
 今俺は密輸の対価にこのヘラってる娘を使える状態にしてシアに献上しなければいけないんですから。
 今から俺はセラピスト豚野郎です。

「調子悪いみたいだな」

「すいませんスラン様。どうにも前の戦いの事が気になってしまって」

「見ていられん。私についてこい」

 とりあえず聖騎士にちょっかいをかけられないために薄暗い密室──会員制の意識高い系喫茶店に誘導することにしましょう。
 こちらが誘導するとローゼリンデがついてきました。
 いい感じですね。
 さて喫茶店にゴーです。
 見窄らしいデカ海パン豚野郎と白ビキニのたわわプラチナ髪美少女の組み合わせに道ゆく人が見つめてきますね。
 ここの住民は年中いつでもどこでも水着で常識など頭の中から滅び去っていることと思ってましたがちゃんと残存していたようです。
 あ、つきました。
 この無骨な鉄扉間違い無いです。
 ノックを5回すると渋い声が「ブーメラン」と言ってくるので、「パンツ」と会員が知ってる合言葉を言うとブーメランパンツの眼帯のおっさん──ここの亭主バンガードが扉を開けた。

「会員だな。入れ」

 本来ならサブクエストでカフェイン仮面とか言うファラスの親戚みたいなのを倒さなければ合言葉は手に入らないのですが、俺はすでに合言葉を知っているのでめんどくさいクエストスルーして直接ゴーできます。
 ここの何がいいと言うと会員制なので機密性があるのもありますが、ここで飲食できる食べ物にはヒロインに対して好感度アップ効果があることもあります。
 この邪悪の塊である豚野郎ではそのままスカウトしても不信感しか湧きませんからこいつで下駄を履かせてもらいたいと思います。

「座れ」

 ローゼリンデに上座に座ってもらったのでローゼリンデ専用好感度アップメニュー『愛愛アイス』を頼みます。
 どう見てもバカップル専用メニューみたいな名前で頼むのに精神的な負荷がかかりそうですが好きなもん好きなのでしょうがないので行きます。

「愛愛アイス一つ頼む」

 カン!

 注文したら鉄を叩く音が聞こえてきたので、注文完了です。
 厨房から炎が踊るかと思うと青い二つ棒の刺さったシェアアイスが出てきました。
 ゲームでは飯作る演出が一つしかないからしょうがないと思っていたがまさかこの世界でもアイスを作って炎が出るとは驚きですね。
 さてこのアイス二つに分けてシェアして食べなければ好感度が上がりません。
 こう言う系の割り箸みたいに割って分けるアイスって今までうまいこと割れた試しがないんですよね。
 まあ考えてもこんなもの綺麗に割れるわけがないので一思いにやっちょいましょうか。

 パキリ!

 うーんやっぱり綺麗に割れませんね。
 一つが鍵型で大きめ、もう一つは短冊型で小さめになりました。
 すいません、俺体積多いんで鍵型の方もらいますね。
 短冊の方をローゼリンデに渡そうとするとシュンと悲しそうな顔になっていく。

「冗談だ」

 急いで短冊を引き戻して、鍵型の方を渡す。
 機嫌を直して好物にご満悦ですね。
 俺のアイス……。
 気をとりなして俺も短冊を食べましょう。
 口がデカいので一口でなくなくちゃいました。
 一口で食べれるものってほぼ無を食ってるようなもんですよね。
 まあ美味しかったからいいんですけど。
 好感度も上がって下駄も履けたみたいですし、本題に入っていきましょうか。

「実はあの時私も戦場にいて貴様が何をしたのか見ていた。貴様が心ここにあらずになっているのはイクスを騙し討ちをしたからだろう?」

 俺が知っているとは夢にも思っていなかったようでローゼリンデは目を見開くとこちらを見つめてきます。
 目の奥が揺れているところを見ると内心ショックを受けているって感じでしょうか。
 身内には誰にも目撃されていないし、酷いことをしたのを漏らした覚えもないのに実はあなたの恥部を見ていましたよってなればこんなものか。

「沈黙は肯定と取っておこう。無論、貴様を責めているわけでも脅しているわけでもないし、私が見たものが全てだとは思わない。イクスを騙すのが本望なのならそうはならないはずだしな。あそこでのことを貴様の口から全て話せ。貴様が何に苦しんでいるのか知りたい」

「ですが……」

「ですがもヘチマもない話せ」

「……はい」

 人間後ろめたいことを話す時は誰でも抵抗があるものでローゼリンデも口を閉ざしかけたので多少強引に発破をかけて口の堰が崩壊するように促すと話し始めました。
 話し出すとファラスの悪行がまあ出るわ出るわ。
 まああのおっさんならて言うか教会ならしそうなことではあるんですが。
 内心ずっと話したいのを我慢していたんですかね。
 責任感が強いみたいですし、迷惑かけるかもと思ってたのかもしれません。
 俺から言わせれば自分以外の人間に迷惑かけても自分に返ってこないから好きなだけ掛ければいいのにと思わずにいられないんですが。
 泣いちゃってるし、よっぽど辛かったんですね。

「よく話してくれたな。お前は悪くない。お前を利用したファラスが悪い。アイスもう一本食うか?」

 むせているので背中を摩ってやって好物を食うかと聞くとこくりとうなづいたので追加で『愛愛アイス』をオーダーする。

「スラン様……」

 弱り目に祟り目で介護されて感極まったのか、この豚野郎の胸に頭を埋めてきます。
 抱きついてらっしゃるローゼリンデさぞやぷよぷよで抱き心地が良かろうと思うのですが私のワガママバストはあなたの涙と鼻水で構成された美少女汁でぐちゃぐちゃになっております。
 まあ今海パン一丁で服着てませんしいいいですがね。
 さてワダカマリが解けてメンタルも回復傾向にありますし、そろそろスカウトに移りましょうか。

「お前はイクスに謝りたいか?」

「それはそうですが。あのような裏切り方をされて彼はもう私の前にも人族の前にも姿を現すことは」

「手段は限られているがあいつに会う手段はある」

「それは一体どのような?」

「あいつが所属する第二王女派閥に貴様が入ることだ」

「確か第二王女派閥は教会と対立して。と言うよりもスラン様の所属する派閥にイクスが」

「そうだ。教会と対立派閥にイクスは私と共にいる。強要はしない。選べ。教会にこのまま身を委ねるか、イクスと向き合い、我々と教会とは違う形で世を救済するか?」

 とりまそれらしいことを言ってレッツゴースカウトしましたが行けますかね。
 信じたファラスに裏切られ、人間不信半分教会不信で好感度も下駄履いてるので行けるんではないかと思ったんですが。

「私はスラン様を信じたいと思います。私の知っているスラン様は決して人を犠牲にする方ではないですから」

 あ、行けましたね。
 普段ヘイトを溜めんようにとヘイコラしていた賜物ですかねこれは。
 とりあえずスカウト成功なのでシアから渡された渡すものを渡しておこう。

「これで貴様もキングスゲインの一員だな。シア様直通の魔道具だ。受け取れ」

「はい」

 はい、シア様の密輸代償ミッション完了でございます。
 期間も余裕ありますし、ローゼリンデを放流したら今日はもうダラダラして明日ロロナのところにいきましょうかね。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

処理中です...