『お前が『やめろ!』と叫ぶたびに仲間を1人ずつ殺していく…』『やめろ!』〜迫害されていた無職の私は魔王幹部にそう言われて『やめろ』と叫んだ

竜頭蛇

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ダンジョン

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 とりあえずのところ、白翼騎士団が潰れたことで戦場は混乱状態ですぐに動ける状態でなく、すぐにここまで攻めてくることはないので、戦力を増強するために村の坑道の奥にあるダンジョンに足を運ぶことにした。
 時間に余裕があるとはいえ、戦場は生もので何が起こるかはわからないため、朝日が登ってすぐ出発するとクリスが眠そうな顔をしていた。

「朝が早い。私は日頃太陽が絶頂に至るまでは起きんというのにこんな朝早くに」

「遅すぎだよ。そんなに寝る時間が長いのに、よく寝込みを襲われずに生きて来れたね」

「ふん。寝込みなぞ襲うものなど私の体にかすり傷一つつけられずに全て肉塊に変わったわ」

 襲われてたのか。
 それでも生きているのだからやはり職業やスキルを持った人間は化け物だ。
 たまに職業やスキルを戦場で戦ううちに進化させるものがいることを考えると、ひとまず戦場は安全だという認識も見つめ直した方がいいかもしれない。
 ダンジョンから有用な遺物を手に入れたら、もう一度戦場の様子を見た方がいいかもしれない。

「凄まじいね。ダンジョン内でもその強さを発揮してくれるの期待してるね」

「顎で使われるのは気に入らんが、そのことなら期待を違うことなど億分の1でさえないから安心しておけ。で、水先案内人はどこにいるんだ?」

「今から交渉に行くよ」

「今からこんな時間に起きてるのか?」

「年寄りだから起きてるよ」

 そのまま道沿いに沿ってルイナの家に向かうと、ちょうど朝の散歩にでるところだったのか、少し驚いた顔したルイナに会った。

「お主ら、朝早くから何をやっとるんだ?」

「ダンジョンに行こうと思って」

「ダンジョン? 2人でか?」

 ルイナは驚いた顔でそう尋ねてくる。
 ダンジョンは主に魔族領に密集しており、人族領にある数少ないダンジョンはすでに攻略済みのため、攻略の適正人数ははっきりとした情報は持ってなかったが二人はやはり少ないようだ。
 クリスが規格外の戦力であるため、多少の無理は通ると思ったが、魔王幹部の素性を見抜いており、クリスの実力を把握しているルイナがそれでも少なすぎると言っているのでやはり二人は分が悪いか。

「ルイナに案内を頼もうと思ってたから。ルイナが案内をしてくれるなら3人かな」

「3人か。前回は有志のもの50人ほどで中に入ったからな。人数が心許ないが人数が多いことで問題もあったことを考えるとはてどうしたものかの」

 少しルイナの口ぶりに違和感を覚える。
 これだけ近くにダンジョンがあるというのに、まるでダンジョンに入るのは前回が初めて入ったような口ぶりだ。

「推奨挑戦人数が定まっていないって、ダンジョン挑戦回数はそこまで重ねてないの?」

「挑戦回数は少ないわけではない。儂がここにきてからしか記録を残してないから情報が少ないんじゃよ。山ゴブリンたちには簡単な文字や数字を使う文化はあったが、それを後に残す記録媒体が存在していなかったからな」

「ふーん。ルイナが来てから具体的にどのくらいダンジョンに挑戦しているの?」

「儂が来てから一度だけだな」

「1度……。婆さん。ここに来てから何年だ?」

「ざっと300年くらいじゃ」

 300年。
 身体的特徴から人間だと思っていたが、長命種か魔族か。
 人族と同盟、敵対関係にある長命種や魔族にはここまで人族に近いのは見当たらないが、海の向こうの遠い島国か、どこかの出身か、あるいはおとぎ話出てくる不死の霊薬でも飲んでいるのか。
 どちらにせよ、ルイナもまたクリスと同じ人外と同じものということは間違いないようだ。

「そんな長い年月の中で1度しか入らなかったの?」

「村の防衛にはすでにある遺物だけで十分間に合っていたからな。それに上層の遺物をあらかた回収し終えてるようなら、入っても割に合わん。だから入ったのは山ゴブリンの有志が探索隊を結成した100年前の1度のみじゃ」

「結果はどうだったのだ?」

「碌でもないことに。奥まで行けたのは7層まででそこまでにある遺物はすべて回収されていた。半分ほど有志たちも犠牲になり、本当に損をするだけの結果に終わったよ」

「7層だと! 低層のまた低層ではないか。山ゴブリンはそこまで脆弱だというのか」

 クリスがイキリたつところを見るに、ダンジョン攻略置いて一桁台で攻略終了というのはかなり惨憺たるものらしい。
 低層の低層という言葉からして、ほとんどのものが三桁台といったところだろうか。
 そうだとするのなら完全に攻略するとしたらかなり骨というか、実質的に不可能に近いような気がする。
 人族領にあるものも攻略済みというのも眉唾ものような気がしてきた。
 伝説に箔を付けるために脚色という説も濃厚か。
 そうであるのならば、攻略したと勘違いしたまま、戦術や魔術が進んでも未攻略のままで放置され、完全攻略できる未来が潰えたことになる。
 くだらない箔付けのために王国全体として見れば大損害だ。
 遺物は神が作ったものであり、ものによっては一国を壊滅もしくは世界を滅亡させるレベルのものもあり、もし手にれることができれば、魔族に対する攻略を有利に進められるだけではなく、他国を牽制する抑止力にもなるのだから。
 見栄のために自分たちの生存の可能性を切り詰める思考回路が理解できない。
 生きていなければ見栄も張ることもできないというのに。

「脆弱ではない。そこらの人や魔族よりもよほど強靭じゃよ、ここの連中は。ただ圧倒的に相性が悪い。ダンジョン内では物理と火に強い大火蝦蟇が出るからな。水属性に特化した魔法使いがいなければ、一方的にこちらがダメージと疲労を蓄積をすることにならからな」

「大火蝦蟇か。あのような雑魚など小指一つで葬れるわ。私のような真の強者に耐性や属性など些事に過ぎん」

「えらい自信じゃのう。そこまで言うのならば一層で様子見をして、望みがあるようであればその下の層も案内がてら同行するのもやぶさかではないが」

「様子見ね。確かにいい考えだね。それで行こう」

 一層区切りというのはこちらにとっても魅力的だ。
 時間的な損失もクリスの消耗も最小限で抑えられるので、後に控えている戦場の確認が潰れる可能性が最小限に抑えられる。

「若いもんは血気盛んだの。このババアの寿命を縮めんでいてくれることを祈るよ」

「大船に乗ったつもりでいるがいい。一層など貴様らが瞬く間に攻略して、このダンジョンの果てを今日中に見せてやろう」

 ルイナとクリスは各々真逆の反応をしているが、どちらの可能性もあり得そうなので、あながち否定はできない。

「どっちが正しいかは、入ってから次第だね。チャチャっと入っちゃおうか」

 とりあえずはその真偽を確認するためにダンジョンに入っていく。
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