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33年ぶりの再会
しおりを挟むトリシュの励ましにより、俺はまたエラーとの関係を再構築することを決意できた。
早速奴の元に行って、実行にかかろうと思ったが、今は放課後だし女子寮にいる可能性が高いことに思い立った。
常識的に女子寮て、男子禁制だよな。
別に校則を確認したわけじゃないからよくわからないんだけど。
しまったな……。明日にするしかなくないか。
これならトリシュが魔法の練習のために分かれると言った時に、明日教えると約束せずについていけばよかったかもしれない。
決意した手前、引っ込みもつかないし、期待にはできるだけ早く応えたい。
一応ダメもとで職員室に挨拶がてら、女子寮に入ることが可能か聞いてみるか。
生徒がまばらにいる廊下を通って、職員室の扉の前に立つ。
少し緊張したが、迷わず扉を開ける。
中は机に教師がひしめいており、活気にあふれていた。
33年前はシェイムとガリしかおらず、寂寥感が漂っていたことを思うと、内装などは何も変わっていないが大きく変わったように思えた。
活気にあふれる場所には似つかわしくない、疲れた雰囲気の男がこちらに近づいてきた。
ガリだ。
33年前の溌剌とした姿は見る影もなく、倦怠感あふれるオーラを出している。
「リードか。相変わらず、俺の知り合いのリーデンベルクとか言うトカゲ野郎に、生き写しみたいにそっくりだな」
ガリが覇気のない声でそんな感想を述べる。
リーデンベルクだと言いたい衝動にかられたが、話の腰が折れそうなので抑える。
「エラーに会うために女子寮に入りたいんだが、俺が入るのは大丈夫そうか」
「おま、教師にためぐちって……」
しまった。いつものようにタメ口で話してしまった。
今の俺とこいつは生徒と教師という間柄なのだからまずい。
それに契約があるから、ガリに敬語を要求されたら、学園で敬語のまま過ごすことになる。
敬語使いながらエラーと仲良くなれてどんな縛りプレイだ。
どこぞのカリスマ持ちしか無理だろ。
「すいません。先生の親しみやすさについ、タメ口が出てしまったんです」
「かなりこじつけ臭い言い訳だな。……まあ、タメ口だろうが何だろうが情報が伝わればいいからいいが」
ガリは頭の痛そうな顔でそういうと言葉をつづけた。
「お前が女子寮に入って、エラーに会うのは別に構わん。好きにしろ」
「……」
ガリの口調がぶっきらぼうなのでなんか信用できない。
こいつ適当に言ってそうだからな。新入生紹介の時にも前科があるし。
「先生、適当に言ってるんじゃないですよね?」
「適当に言ってるわけないだろ。今は出張と産休でいないからあれだが、シェイム学園長とヒース教頭に聞いてみても同じことを言うぞ」
ガリの口から衝撃の事実が開陳された。
シェイムが学園長になり、学園長は結婚したようだ。
シェイムは深淵の引きこもりから出世し過ぎたし、堅物ぽい学園長は独身をとおすと思っていたのに、想像とは正反対の道に行っている。
33年の間にレッドハウンド家は大躍進を遂げていたようだ。
「ヒースの相手は?」
「俺だ」
「お前か……」
33年前にそんな出来事があっただろうか。思い当たらない。
でも、魔道具の事で頻繁に意見交換してはいたな。
「教頭いや、クライハは何をしているんだ?」
「新任教師だからシェイムの出張についていた」
教頭は辣腕教師みたいな感じだったのに、ここでは新任教師か。
シェイムが真人間になるといろいろと変わるものだな。
これ以上話していると、日が暮れるまで止まらないような気がするし、そろそろお暇するか。
「そうか、邪魔したな。また来るよ」
そこまで言って、俺はタメ口に戻って話していたことに気づいた。
しまった……。ガリに敬語を要求される可能性が高い。
去り際だというのに、ガリを見つめてしまう。
ガリの口が開かれた。
「じゃあな、リーデンブルク」
それは俺が想像していた言葉とは異なった。思わず、ガリの目を凝視する。
「お前、さすがにばれるに決まってんだろ。シェイムとヒースのことを聞いた時に、目ん玉見開くほど驚いたあげく、ヒースの事を突っ込んで訊いてくるんだ。そんなリザードマンお前しかいないだろう」
ガリはしたり顔でそういう。ムカつく顔してるなと思いつつも気分は悪くなかった。
「気づいたなら、早く言えばいいだろ。慌てた俺が馬鹿馬鹿しい」
「お前がクライハの事を言うから混乱したんだよ。あのとき、クライハはまた生まれてなかったていうのに、お前が知ってるような口ぶりで言うから。下調べして、おれを騙すために拵えてきやがったな、この野郎。まあ俺は騙されなかったけどな」
教頭のことは混乱させるために言ったととられたのか。
崩壊した学園で会ってる事は知らないんだし、そりゃそうなるか。
「ところで、リーデンベルク、お前何時までここに滞在していくんだ?」
「そうだな、正確にはわからんが、たぶん1か月くらいはここにいるぞ」
俺は習得するものがないからトリシュとアルテマイヤの状況次第になるが、奴らを俺くらいの理解力とすると1か月くらいだろう。
それよりも早く終わる場合もあるが、自分があいつらよりも理解力がないと思うと恐ろしくなってくるので想像しないことにする。
「それなら、シェイム達も帰って来るまではいるな。あいつらが帰ってきたら、再会を祝してパーティでも開くか。プラムがいないからあの時の面子でとはいかないが」
「おお、開くか! 多分、プラムもこの近くにいると思うから、俺が探して連れてくるよ。それであの時の面子でできるだろう」
「ほんとかよ?」
ガリは半信半疑のような感じで聞き返してくる。
崩壊した学園では師匠と再会しただけなので、本当とまでは言えないが、ここの近くにいる確度は高いと思う。
エラーとの関係再構築、トリシュの魔法習得のアシスト、師匠の捜索。
やることがなくなったと思うと、すぐに3つのことを掛け持ちすることになった。
また忙しくなりそうだ。
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