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炎上する元婚約者
しおりを挟む「な、なんだこれは!?」
月木ニャンこと恵那を炎上させた翌朝、はてさてどのくらいの騒ぎになっているかとSNSを覗き、最上ヒカリこと光輝は驚愕した。
なぜか光輝が炎上しており、逆に恵那は擁護されていた。
昨日とは真逆の展開だ。
「くそ! こんなメチャクチャな! これが秋也の力とでも言うのか!」
整然と並ぶ怒りのコメントと煽りのコメントに対して、光輝は悲鳴を上げ、秋也の力を完全に見誤っていたことに気づき、冷や汗を掻く。
一体何をしたのかと気になり、光輝に対する罵詈雑言立ち込める呟きを耐え忍びながら、遡って見ていく。
すると恵那のアカウントで、光輝の女装姿が晒されていたのが見えた。
「あのクソ女!」
おそらく秋也の入れ知恵によるものだが、自分の女装写真をネットに投下した恵那に対して怒りが大爆発した。
「肖像権の侵害だ! 訴えてやる! 千垣、裁判の手続きをしろ!」
「おぼっちゃま。大変申し訳にくいのですが。稀崎家は代々、国際弁護士を務めている上、うち1人は無罪弁護士とも言われる強者です。とてもではありませんが旦那様から許可が降りません」
「くそ! 全部折り込み済みか、秋也!」
あまりにも隙のない攻勢に光輝は唇を噛む。
せめてもの抵抗のために弁解をしようとSNSを開くと、DMの通知がどんどんと膨れ上がっていくのが目に見えた。
「なんだこれは!?」
不思議に思い、開くと男性の局部の画像が大量に送信されているのが見えた。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
光輝の悲鳴が星源邸に響き渡った。
ーーー
翌日、恵那の家庭教師があったということもあり、稀崎邸に行き、まず喫緊の問題であった炎上の経過について話すことにした。
「まさか、炎上の鎮火するだけのはずが光輝君が炎上するとはね。少しかわいそうだな」
「じ、自業自得よ。ごめんだけど秋也、ちょっと炎上がトラウマになってるから、しばらくの間、秋也の方で経過については見てくれる」
恵那はまだ炎上によるダメージが抜けきていないようで、震え声でそう返事をしてくる。
あれだけの人の害意が恵那1人に対して向いていたのだ。
それもしょうがないだろう。
「あの、もう一つお願いしてもいい?」
鎮火を確認したので、雛祭で遅れ気味な進捗を取り戻すべく、教科書に手を伸ばそうとすると恵那が声を上げた。
「できる限りのことであればいいよ」
「保険というよりも私が男好きの印象がついてるのを払拭するために協力して欲しいんだけど、女の子の声って出せる」
「多分練習すればできるけど、印象を払拭するのと俺が女の子の声が出せるのと何が関係あるの?」
「秋也に女の子のアバターを使ってコラボ配信してもらうしか、頼める友達がいないから印象回復する方法がないの……」
流石に安直すぎる。
それで失敗したらもはや回復することが不可能なほどの致命傷になってしまう。
最悪、それが原因でずっと風評被害に苦しむことになることもあり得る。
「でもそれだとまた何かの拍子で女の子のアバターの中に男が入ってるてわかった時に炎上して取り返しのつかない事になるよ。今は焦らずに女性Vtuberと親交を深めるべきだよ」
「女の子のVtuberと仲良くなれたって基本皆陽キャだから全然ノリも性格も合わないから無理。こっちがその気があってもいつも流されて終わるもの」
いつも機材の調整を頼まれる程度で配信関係のことは詳しくは知らなかったが、そういう事情もあったのか。
苦手意識がある状態で変に頑張てもらってもまた炎上の火種を撒く結果になるかもしれない。
バレる危険性を考えれば、俺が女性Vtuberの振りをしないのが一番だが、最初は俺が振りをして他の女性Vtuberと一緒にコラボするようにして、慣れさせて誘導するのが現実的だろう。
「したくないからしないわけじゃないってことか。他に選択肢もないし、しばらくは俺が振りをする感じで行こうか」
「ありがとう、秋也。やっぱり一番頼りになるのは秋也だけね」
「どういたしまして」
今後のことが決まったので今日のバイトに取り掛かることにした。
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