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昼食(雑談)

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「ほらよ、シズマ、齧ったところナイフで落としたから食えんだろ?」

「まあ……(もしゃもしゃ) ううっ、肉の部分ごっそり持っていかれてるッス」

「スマンっつってんだろ、ああもうっ!」

「ダーリン、多分、誠意が足りてないと思うデース!」

「そーッス! 誠意! 誠意! 誠意!」

「アリス、お前ときどきバックファイアするよなっ?」

「……まぁまぁ、シズマ。ボクのハンバーグも分けてあげるから」

「別にオレは、催促したわけじゃ……(もぐもぐ)」

「食べるのかよっ?」

「……シズマはどんな可能性も見捨てない」

「いやぁ」

「食い意地張ってるだけなのを美化するにも程があんだろ?!」

「ダーリン、ダーリン、ミーも昼飯食べたいデース!」

「さっき食ったろ、オレの分含めてっ!」

 目の前で、何だかよくわかんない人間模様が展開されてる。

 それにしても青島くん、意外と常識人(ツッコミ)枠なのが面白い。

(んふーっっ)

「ところでだ、テツヤ」

 青島くんが疲れ切った顔で、髪をかきあげながら、鐵也を見る。

「お前の横でモシャモシャ飯食いながら人間観察してるお嬢ちゃんは何なんだ?」

 えーと、オレのこと?

「……ん?」

 オレの横で同じように飯を食ってた鐵也が、箸を咥えたまま、じっと見返す。

「ナニをいいたい?」

「お前とソイツの関係がよくわからん」

「ダーリン、もしかして浮気デースッ?!」

「違う、違うから揺するな」

「どっちデス?! どっち狙いデス?!」

「どっちもねぇよっ!? てか、鐵也まで指すな! オレはホモじゃねえ!」

 そういえば、初日は、全く説明してなかったっけ?

「えーと、オ……私と鐵也の関係は、幼馴……」

「嫁」

 オレの説明をぶった切り。

 オレを抱き寄せながら。

 鐵也は、簡潔に言いきった。

 まぁ、……今は、たしかに、ソッチのほうが正しい表現、なの、かな?

「嫁、……だと?」

「……それは何かの比喩表現?」

「いや、ホンモノの嫁だ。結婚した」

 いつの間にか、教室が静まり返っていた。

 え、何?

 何でみんな会話止まってんの?

「てっきり愛人か何かと思ったが、そうか嫁か」

 毒気を抜かれたような顔で、青島くんが肩を竦める。

「嫁というのも訳わからんスけど、何で他の関係すっ飛ばして愛人……」

「あん? シズマ、そりゃあ、こいつ前に……」

 疑問符浮かべる井上くんに、青島くんが鐵也を指差しながら、何かいいかけたんだけど。

「おい、喧嘩売ってんなら、買うぞ?」

「……あ?」

 睨みつける鐵也、胡乱げに睨み返す青島くん。

 一気に、一触即発な雰囲気になったんだけど。

「アホらしい」

 最初に視線を反らしたのは、青島くんだった。

「こんな色ボケ話ネタに決闘なんてダセェ話できるかよ」

「……ふん」

 小さくため息を漏らしつつ、鐵也も視線を弁当に戻し、食事を再開する。

 いや、待って。

 ここまで時間が経って、ようやくオレの桃色の脳細胞が会話のピースを重ね、一つの推論を導き出す。

 鐵也、8人経験あるって話だけど、……もしかして、「一晩の過ち」だけじゃ、ない?

「鐵也、……何か、隠してない?」

 責めるつもりはないから、笑顔で問いかける。

 少なくとも今は。

「……な、何も、ない」

 ぐぐぐっと視線を反らす鐵也。

「あるんだ?」

「ないって」

「あるんだ?」

「ないって!」

「あの、今のは、オレの言い間違い……」

「青島くんは黙っててくれますか?」

「あ、はい」

『やっぱお義母さんの娘だな』

 視線反らし、真っ青になりながら、鐵也が呟く。

「何か、いいましたか、ア・ナ・タ?」

「っ?!」

 鐵也が真っ青になりながら、オレを見上げたその時。

「いや、何喧嘩してるのか知らねぇッスけど」

 少し不機嫌そうな井上くん。

「……?」

「そろそろ食い終わらねーと、次の体育遅れるッスよ?」

 体育?

 脳裏に浮かぶのは、カワイイ女の子たちや鐵也の体操服姿。

 制服もカワイイけど、体操服もいいんだよなぁ。

 しかも、このクラス、カワイイ娘多いし。

「……、……、……」

(にへら)

「じゃー、オレ、先に男子更衣室に行ってるんで!」

「……シズマのモテナイ男ムーブが役立つこともあるんだね」

「ほっとけよッス!」

「ちょっ、ちょっと待ってくれ! オレも、オレも行くぞ、井上っ!」

「こらっ、テツヤッ、シズマッ、ダチだろっ? 置いてくなっ!」

 ドタドタと逃げるように出ていく男3人。

 そして。

「じゃー、ミーたちも女子更衣室行くデーッス!」

「……、……、……」

 ああ、女子更衣室、アリスが連れて行ってくれるんだ。

 そりゃそうだよね、今はもう女なんだし?

 ……て、待って、女子更衣室?

「ちょ、ちょっと、えっ、えええっ?」

「……いってらっしゃーい」

 手を振り見送る等々力くんの声が、ひどく遠くに聞こえた。
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