2 / 34
第一章
二話
しおりを挟む
この異世界にあるローファン王国。
そこの王太子の婚約者で、公爵家の一人娘フォルティエナ・シーファン。
これが私の転生したキャラの名前であった。
齢15年の少女フォルティエナは、腰まで届くストレートの漆黒の髪をもち、赤くて大きい瞳からは意志の強そうな鋭い眼光がやたらと目立つ……まさに悪役令嬢という役割にぴったりな容姿端麗の美少女だ。
ちなみに公爵家の家名はみな◯◯ファンと付くらしい。
このキャラはシーファンだったが、たぶん別の貴族にはオーファンとかラーファンとかミーファンとかいるっぽい。
王子たち含め王族の名前は、なんちゃらら・ローファンがデフォだ。
なにかな~……この~ファン縛りは。
「お嬢様は王太子様と先日婚約されたばかりなのですから、今度の初顔合わせにはぜひ仕立てたばかりの素敵なドレスで、お披露目会に参加いたしましょう」
「えー……」
たぶん前線にも出ない、そんなヘタレ第一王子と顔合わせたって意味なくないかー?
おそらくは数年後くらいに、純粋でかわゆ~いゆいのヒロインが中途で入ってきてさ、その王太子とか、どっかの令息の攻略対象とかと超親密になって、それをことごとく邪魔しながら嫌な仕事をしていくのが、このフォルティエナ・シーファンの役目なんでしょう?
『庶民ごときが、私の婚約者に色目を使って……!』
とか?
あーはい、めんどくせ。
あとドレスの新調とかいらんわ。
それより防具とか剣とかよこせ。
こんな動きにくい装備じゃ、暴漢にでも出くわしたら即床ぺろやないか!
「先ほどお医者様に診ていただき、お嬢様の健康状態には何も問題ないとお墨付きをいただきました。ご両親も、婚約したばかりでまだ色々と混乱しているだけだろうと仰っていましたし……お嬢様が何でもなくて良かったですわ」
混乱……で済む話なのか?
両親はおろか、このメイドの名前も婚約者のどっかの王太子? の名前も私は知らんのだけど。
令嬢の時の記憶も一切ないし、たぶん入ってるの別人やぞ。
……まぁいいか。
深く考えても無駄に疲れそうだ。
(ある程度出発の準備が整ったら、どこから逃げ出そうかな~……この窓は下に降りれるのかね?)
「お嬢様、今日はいい天気でございましょう?」
ん? 窓を見ていたからか。
何にも言ってないのに話しかけられた。
(はぁ……この腕細いなぁ……どうやって、この体を筋骨隆々のムキムキにしていこうかな……)
「お嬢様は色が白くて可憐でいらっしゃいますわ」
……もう、このモブメイドうっさいな。
行動起こすたびにいちいちコメントいらないから。
それはそうと……この体は何か特殊能力とかって使えないのだろうか。
このお喋りメイドにそれとなく聞いてみるか。
「ねぇ、あなたに魔力はあるの?」
「はい、それなりに……でも、お嬢様には敵いませんよ。なんせ公爵家の中でもとても特殊な……」
「特殊な?! そこっ、もっと詳しく!」
「え、えぇ……」
はい、はい、その情報が最重要事項なんです!
きたよ、これ! 特殊能力!
「フォルティエナお嬢様は回復魔法と、威圧魔法がお得意なのは、ご家族の誰もが知る能力ではないですか。特に威圧のお力は一族でも類を見ないほど、とても秀でた能力で……」
へー……威圧の能力と来たか……さすが悪役令嬢。使えなくもない。
(もしかしてこれがチートか?)
威圧魔法といえば、やっぱり眼光で相手の動きを封じる感じだよな?
どっかのフェンリルみたいに、綺麗なお嬢様が、咆哮して威嚇……とかはさすがにしないだろうし。
「お嬢様?」
私は目の前にいるこのメイドに向かって、その威圧魔法とやらを放ってみた。
とは言っても……目で強く睨みつけただけだが。
私と目が合ったメイドの体は急にすくみあがって、途端に動かなくなる。
(あらら……さっそく効果的面だね。これ、この家から脱出する時、かなり役に立ちそうだな……)
私は感覚だけで、メイドにかけた威圧の力を適当に解除した。
この魔法を使っても全然体が疲れている感じはしないし、これならば大人数相手に連続使用もできそうだ。
でも、直接的に攻撃ができる能力がこのキャラにはないみたいだから、やっぱり体を最低限でも鍛えなきゃダメだね。
「お、お嬢様……心臓に悪いので、そのお力はあまり使わないでくださいませ……」
「はいはい……ところで、この威圧魔法はモンスターにも通じるのかしら?」
「モ、モンスター……ですか? お嬢様がそんなモンスターなどという恐ろしい魔物に出くわすことなんて、公爵家や王城に居たらそうそうありませんから、心配などされなくとも大丈夫でございますよ」
おいおい、ぜんぜん質問に答えてないじゃないか。
全く……私はダンジョンに入った時の話をしているというのに。
「どのくらい使えるのかなぁ……近くにいる人に連続で試しちゃおうかなぁ……チラッチラッ」
「ひぃぃ……おやめください! お嬢様のそのお力は、国一番でございます! モンスターどころか、アリんこにすらも有能でございますよ!」
「なっ……アリんこ……だと」
あんな小さな虫の集団にも……!
ならば、例の黒光りした強敵にも、この威圧は有効か?!
この世界にあの人類の敵が存在しているかどうかも分からんが……。
もし、あの素早い動きを威圧の力で止めることができるならば、叩ける率がアップすること間違いなしだ!
「これは……使える! 使えるぞぉぉ」
「お嬢様……本当にお医者様の言う通り、大丈夫なんでございましょうか……」
そんなメイドの心配もよそに、異世界ライフで活躍できる未来への期待を胸にし、私はこの身を尽くすことに決めた。
そこの王太子の婚約者で、公爵家の一人娘フォルティエナ・シーファン。
これが私の転生したキャラの名前であった。
齢15年の少女フォルティエナは、腰まで届くストレートの漆黒の髪をもち、赤くて大きい瞳からは意志の強そうな鋭い眼光がやたらと目立つ……まさに悪役令嬢という役割にぴったりな容姿端麗の美少女だ。
ちなみに公爵家の家名はみな◯◯ファンと付くらしい。
このキャラはシーファンだったが、たぶん別の貴族にはオーファンとかラーファンとかミーファンとかいるっぽい。
王子たち含め王族の名前は、なんちゃらら・ローファンがデフォだ。
なにかな~……この~ファン縛りは。
「お嬢様は王太子様と先日婚約されたばかりなのですから、今度の初顔合わせにはぜひ仕立てたばかりの素敵なドレスで、お披露目会に参加いたしましょう」
「えー……」
たぶん前線にも出ない、そんなヘタレ第一王子と顔合わせたって意味なくないかー?
おそらくは数年後くらいに、純粋でかわゆ~いゆいのヒロインが中途で入ってきてさ、その王太子とか、どっかの令息の攻略対象とかと超親密になって、それをことごとく邪魔しながら嫌な仕事をしていくのが、このフォルティエナ・シーファンの役目なんでしょう?
『庶民ごときが、私の婚約者に色目を使って……!』
とか?
あーはい、めんどくせ。
あとドレスの新調とかいらんわ。
それより防具とか剣とかよこせ。
こんな動きにくい装備じゃ、暴漢にでも出くわしたら即床ぺろやないか!
「先ほどお医者様に診ていただき、お嬢様の健康状態には何も問題ないとお墨付きをいただきました。ご両親も、婚約したばかりでまだ色々と混乱しているだけだろうと仰っていましたし……お嬢様が何でもなくて良かったですわ」
混乱……で済む話なのか?
両親はおろか、このメイドの名前も婚約者のどっかの王太子? の名前も私は知らんのだけど。
令嬢の時の記憶も一切ないし、たぶん入ってるの別人やぞ。
……まぁいいか。
深く考えても無駄に疲れそうだ。
(ある程度出発の準備が整ったら、どこから逃げ出そうかな~……この窓は下に降りれるのかね?)
「お嬢様、今日はいい天気でございましょう?」
ん? 窓を見ていたからか。
何にも言ってないのに話しかけられた。
(はぁ……この腕細いなぁ……どうやって、この体を筋骨隆々のムキムキにしていこうかな……)
「お嬢様は色が白くて可憐でいらっしゃいますわ」
……もう、このモブメイドうっさいな。
行動起こすたびにいちいちコメントいらないから。
それはそうと……この体は何か特殊能力とかって使えないのだろうか。
このお喋りメイドにそれとなく聞いてみるか。
「ねぇ、あなたに魔力はあるの?」
「はい、それなりに……でも、お嬢様には敵いませんよ。なんせ公爵家の中でもとても特殊な……」
「特殊な?! そこっ、もっと詳しく!」
「え、えぇ……」
はい、はい、その情報が最重要事項なんです!
きたよ、これ! 特殊能力!
「フォルティエナお嬢様は回復魔法と、威圧魔法がお得意なのは、ご家族の誰もが知る能力ではないですか。特に威圧のお力は一族でも類を見ないほど、とても秀でた能力で……」
へー……威圧の能力と来たか……さすが悪役令嬢。使えなくもない。
(もしかしてこれがチートか?)
威圧魔法といえば、やっぱり眼光で相手の動きを封じる感じだよな?
どっかのフェンリルみたいに、綺麗なお嬢様が、咆哮して威嚇……とかはさすがにしないだろうし。
「お嬢様?」
私は目の前にいるこのメイドに向かって、その威圧魔法とやらを放ってみた。
とは言っても……目で強く睨みつけただけだが。
私と目が合ったメイドの体は急にすくみあがって、途端に動かなくなる。
(あらら……さっそく効果的面だね。これ、この家から脱出する時、かなり役に立ちそうだな……)
私は感覚だけで、メイドにかけた威圧の力を適当に解除した。
この魔法を使っても全然体が疲れている感じはしないし、これならば大人数相手に連続使用もできそうだ。
でも、直接的に攻撃ができる能力がこのキャラにはないみたいだから、やっぱり体を最低限でも鍛えなきゃダメだね。
「お、お嬢様……心臓に悪いので、そのお力はあまり使わないでくださいませ……」
「はいはい……ところで、この威圧魔法はモンスターにも通じるのかしら?」
「モ、モンスター……ですか? お嬢様がそんなモンスターなどという恐ろしい魔物に出くわすことなんて、公爵家や王城に居たらそうそうありませんから、心配などされなくとも大丈夫でございますよ」
おいおい、ぜんぜん質問に答えてないじゃないか。
全く……私はダンジョンに入った時の話をしているというのに。
「どのくらい使えるのかなぁ……近くにいる人に連続で試しちゃおうかなぁ……チラッチラッ」
「ひぃぃ……おやめください! お嬢様のそのお力は、国一番でございます! モンスターどころか、アリんこにすらも有能でございますよ!」
「なっ……アリんこ……だと」
あんな小さな虫の集団にも……!
ならば、例の黒光りした強敵にも、この威圧は有効か?!
この世界にあの人類の敵が存在しているかどうかも分からんが……。
もし、あの素早い動きを威圧の力で止めることができるならば、叩ける率がアップすること間違いなしだ!
「これは……使える! 使えるぞぉぉ」
「お嬢様……本当にお医者様の言う通り、大丈夫なんでございましょうか……」
そんなメイドの心配もよそに、異世界ライフで活躍できる未来への期待を胸にし、私はこの身を尽くすことに決めた。
84
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました
タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。
ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」
目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。
破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。
今度こそ、泣くのは私じゃない。
破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。
悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい
斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。
※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。
※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。
推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは前世で読んだラノベの世界で、自分が悪役令嬢だったとか、それこそラノベの中だけだと思っていた。
だけど、どう見ても私の容姿は乙女ゲーム『愛の歌を聴かせて』のラノベ版に出てくる悪役令嬢・・・もとい王太子の婚約者のアナスタシア・アデラインだ。
ええーっ。テンション下がるぅ。
私の推しって王太子じゃないんだよね。
同じ悪役令嬢なら、推しの婚約者になりたいんだけど。
これは、推しを愛でるためなら、家族も王族も攻略対象もヒロインも全部巻き込んで、好き勝手に生きる自称悪役令嬢のお話。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる