元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花

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第二章

十七話

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 森の奥へ奥へと進むと、恐らく村から見えていた高山のふもとあたりまで来たことだろう。
 自然にできた洞窟の入り口のような場所が、私たちの視界に映った。
 広くできた空洞の中へと入ってみると、紫がかって透明な石が何層も折り重なってできたような壁に周囲を包まれている。
「村の警備の人が言ってたダンジョンって、ここのことかしら? 壁や天井がすごいキラキラしてる……もしかして、この石って水晶?」
「すごい綺麗な洞窟だな。入口のこの部分だけでもすごい価値がありそうな……」
「そうね、この国の北の方は水晶の産地って聞いたことがあるわ。あまり単価は高くないけれど、アクセサリーやお守りとしてもよく売られているわね」
 想像していたよりもずっと天井が高くて、神秘的な雰囲気のダンジョンである。
 それと同時に床も水晶が折り重なっているようになっていて、ゴツゴツしているから少し歩きにくい。
 かと言って変にツルツルしていたり、水が垂れていたりすると足が滑って今度は危なそうなのだ。
「綺麗だけど歩きにくいわね……こんなんで戦えるかしら」
「ここのモンスターは弱いらしいけど……」
 こういう足場の悪いところでは接近戦だと人間には不利だろうし、大人数で立ち回るのも苦労しそうだ。
 そういう意味では私の威圧魔法で相手の動きを封じ、レイが遠距離から大魔法を放つという協力技は完璧かもしれない。
 威圧魔法の場合は相手に目があることが前提だから、ここにアメーバのようなモンスターがいないことを祈ろう。

 私とレイは足元に気をつけながら、少しずつ先へと進んだ。
 水晶が光を適度に反射しているからか、洞窟の中はわりと明るいので照明には特に困らない。
 たまに上から奇声をあげて飛んでくるコウモリのモンスターはレイの火魔法で燃やすか、タイミングを見計らって私の剣で斬り落とせば良いから楽だった。
「なんかコウモリだらけだな……」
「そうね、コウモリと光ってる変なキノコだらけ」
「このキノコ、実はノンアクティブモンスターだったりしてな」
「ノンアクティブ? あぁ動かないってことね。でもモンスターではなさそうよ。ほら……攻撃しても変化なし」
 レイは手から発射した小さな氷弾を壁に生えているキノコに向けてうまく当てたが、キノコからの反応は特になかった。
(絶対食べれないだろうし、毒もあるかもだから触れないけど、近づかなきゃほぼ無害だな)

 水晶の洞窟をさらに進むと、道が二つに別れている分岐点が現れる。
 きっと片方は行き止まりなのだろうが、どちらの道へ行くのが正しいのか検討も付かない。
「フォル、左に行く? 右に行く? それとも一人ずつ別々に行ってみる?」
「いや、こういう場合は離れない方が良いと思う」
「そうよね。私は攻撃魔法しか出せないから、致命的な怪我をしたら終わりだし」
「私は回復魔法と威圧魔法だけで、直接的な攻撃魔法は使えないからなぁ……多少レベルは上がったとしても、剣の技術はまだまだだし」
 二人で進み悩んでいると、突然右の道の方からカチカチと変な音が聞こえてくる。
 もしかして新手のモンスターだろうか?
 私とレイはとりあえず反対にある左の道へと進んだ。
 そして壁に身を寄せて体を隠し、息を潜めて耳を澄ましていると、カチカチ音は段々と大きくなっていることに気がつく。
 何かがこちらに近づいてきているのは確定のようだ。
 少し経って反対側の道から顔を出したのは、水晶できたロボットのような見た目のモンスターだった。
 大きさは人間の半分ほどであるが、短い手足のついた四角い塊がカチカチと音を立てて動いている。
(な、なんだあれ……)
 私は思わず後ろにいるレイと目を見合わせた。
 想像を超えた変な生き物? いや無機物にも見える物体がのそのそと歩いているのだ。
 幸いなことにその変なモンスターはまだこちらの存在に気がついていない。
 私たちが歩いてきた方向へゆっくりと進んでいっているだけだから、今なら後ろから先制攻撃も可能である。
 私は指で示しながらレイに合図を送ると、彼女は黙って頷き、無詠唱で火魔法を放った。
 このモンスターの弱点はまだ分からないが、彼女が手から出したのは火でできたボールである。
 そして燃え盛る火の玉がモンスターの頭を見事直撃した。
 その衝撃でモンスターは床に倒れるも、火の玉が当たった場所は少し焦げただけで、対象はまだ手足をバタつかせて動いている。
「フォル、やっぱり魔法の効果は薄いみたい。あのモンスターが衝撃に弱い水晶でできているなら……」
「そうか。弱点は物理攻撃かっ」
 私は言い終わるより先、モンスターが起き上がる前にと上から飛びかかって剣で叩いた。
 すると呆気なくバラバラと崩れて、物体の中心からはモンスターのコアのような丸い結晶が現れ床に落ちていった。
 警備の人が言ったように法則さえ分かれば随分と弱いモンスターだった。
 崩れたモンスターの水晶部分はそのまま床の一部となっている。
 その真ん中にはモンスターのコアらしき物体が、赤紫色に光りを放ちながらただ静かに転がっていた。
「それがこのモンスターの核なの?」
「かなぁ……なんか光ってるけど、これって壊した方が良いのか?」
「うーん、それがある限りはまた復活するかもしれないけど……復活しても弱そうだし……別にほっといても良いかも」
 それは確かに言える。
 魔法の効果はあまりなかったが、あれだけ物理的に弱いとなると、レイが杖で叩いただけでも簡単に崩れてしまう気がする……。

 私とレイはとりあえず左側の道へと進んで、行き止まりなのを確認した後、今度はモンスターが出てきた右の方へと進んでいく。
 左側の道は行き止まりではあったが、念のため奥まで進んだことは決して悪いことでもなかった。
 気がついたのはレイだが、青く光るとても純度の高いサファイアの原石が、水晶でできた壁の出っ張りの影にまるで隠れるように生えていたのだ。
 それは両手でも余るくらいの大きさだった。
「こんな大きいサファイアの原石を見るのは生まれて初めて! きっとすごい価値があるわよ! おそらく水晶の比じゃないわっ!」
 レイはそう言ってかなり興奮していた。
「ならそれはレイが持つか?」
「い、いや……嬉しいけど、今の私は鞄を持ってないし、このまま手で抱えてダンジョンの中を進んでいくのはちょっと……」
「そういえばそうだったな」
 私は学園でたまたま使っていた鞄を今でも使い回しているが……。
 通学の時にフォルティエナの部屋にあった比較的使いやすそうで大きめの物を選んだから、今でも意外と重宝している。
 フォルティエナ貴族の娘の私物はきっとブランド物で良いやつだろうしな。
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