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最終章
四十一話
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南の国に無事到着!
白い砂浜、青い空、緑色に澄んだ海。
気候は決して涼しくはないけれど暑すぎず、薄着でいる分には全く問題ない。
そして目の前に見えるのは大きくて白い建物。
リオの家の別荘だ。
見た目は旅行番組でよく見るリゾートホテルそのものである。
「日本でも憧れてた南の高級リゾート地……すごい! 来て良かった」
クラークさんたちが色々と準備をしてくれている間、私はリオに案内されて、この島の街の方までやってきた。
「この国はさ、複数の島国で成り立ってて、この島には100人くらいしか人がいねぇんだよ」
「へぇ、そうなんだ……わりと人数の多い島国(億単位)で生まれたから、なんか不思議」
リオの友達がいるというお店まで二人で足を運ぶと、そのお友達はまさかの攻略キャラ! として、女神にモデルにされた人だった。
この人、全然出てこないなと思ってたけど、今はこんな島にいたんだ!
リオのお友達の名前は、リュエル・バ・シロールさん。
肩までかかる白銀の髪と蒼い目が特徴で、確か王族の出なんだけど、本人はそれが嫌で世界をあちこち逃げ回っている人。
ヒロインとの出会いは、確かこの人のお姉さんがキッカケだったはず。
いつまでもフラフラしている弟を見かねて、個人的に気に入ったヒロインを紹介する。
それからリュエルさんは、ヒロインの素朴な雰囲気に少しずつ惹かれて行って、王族に戻っても良いとまで思えるようになり、王家の跡継ぎ問題とか色々と難題に巻き込まれながら、ヒロインと乗り越えてゴールイン。
ちなみに私もしっかりと推してました! ふふ。
「あの、失礼ですが、リュエルさんはお姉さんいらっしゃいます?」
「いいえ? 姉はおりませんねぇ……兄と妹はおりますが」
やっぱりゲームの時とちょっと違うんだな。
現実との差を出すために、あえて少しずつ変えていたのかもしれない。
「リュエは自分の役目から逃げまくっているからな」
「リオ、私は自分の人生は自分で決めたいのですよ」
おぉ、リュエルさんのこの言葉には、なんか既視感を感じる。
このリュエルさん、お顔もスタイルも女性のようにスラッとした綺麗な人だけど、振る舞いとか身のこなしもかなり綺麗な方でモデルみたい。この島の人の中にも密かなファンがいそうだな。
確か、リュエルさんは歌もとてもお上手で、そういう意味では最初、流離の吟遊詩人みたいなイメージを持ってた。
「この島にいるのはたまたまですが、なんだかんだ一年くらいは住んでいますね。そろそろ島を出ようかなと思っているところに、リオとその婚約者の方と会えて良かったです。ここ良いところでしょう? どうぞゆっくり観光していってください」
リュエルさんやお店の人たちと楽しく過ごし、あっという間に時間は過ぎた。
今日はもう夕方になってしまったから、明日は色々とこの島を見てみよう。
変わった動物さんたちにも興味があるし。
「リオ、こんな綺麗なところに連れてきてくれてありがとね」
「またいつでも連れてきてやるよ」
私とリオは二人で手を繋いで別荘に戻る。
こんなに幸せなことが続くと、これから先がちょっと怖いな。
船の倉庫で大蛇に食べられそうになった時は、本当にもう終わったかと思ったけど、今ここでこうやって普通にリオと過ごせているのが何よりも不思議。
◇ ◇ ◇
リオと別荘に戻った後、私はここの庭を静かに一人で散策していた。
この庭は、リオの本邸の方のバラ園に少し似ている感じである。
ここにはバラではなくて、ハイビスカスがいっぱい咲いているんだけど。
わりと庭の奥まで来たので、そろそろ帰ろうかと思ったころに、私の足元を何か小さいものが通った。
随分と派手な色をしていたから、もしかしてリオの言っていたこの島の珍しい動物かな?
私は好奇心から、小さいものが向かった先へと足をすすめる。
「あら……こんにちは」
『……言葉が分かるの?』
私は小さい動物さんと目が合うと、警戒されないように自分から挨拶をしてみた。
この子はピンクの体に黄色い尻尾をもつ、かなりファンシーカラーな小猿さんだった。
確かに珍しい色をしている。
『あのね、お願いがあるの』
「お願い?」
『困ってるの』
私は小猿さんに誘導されて、庭のさらに先へ行ってみた。
ん?
これは……何だろう?
植木に囲まれた道の真ん中に、黒くて何か変なものが見えた。
私は恐る恐る少しだけ近づいてみる。
よく見ると、まるで空間自体に大きな亀裂が入っているような……ちょっと怖くて嫌な感じのするモノだった。
『これが今日急にできて、この先に行けなくて困っているの。なんとかならない?』
「う、うん、何かしてみるわね」
うーん、なんだか女神の聖痕辺りが痛む。
これってちょっとヤバいかな。
でもこの小猿さん困ってるし……。
リオを呼んだ方がいいのかもしれないけど、でもいつも頼ってばかりでは……。
私は謎な亀裂をそっと手で触れてみる。
すると歪みは突然、私を強い力で飲み込み、そして……閉じた。
(しまっ……!)
うそ……暗い……。
手で探っても何も触れない。
や、やばい、これ……体が浮いてる。
本当に何も見えない……リオ……。
白い砂浜、青い空、緑色に澄んだ海。
気候は決して涼しくはないけれど暑すぎず、薄着でいる分には全く問題ない。
そして目の前に見えるのは大きくて白い建物。
リオの家の別荘だ。
見た目は旅行番組でよく見るリゾートホテルそのものである。
「日本でも憧れてた南の高級リゾート地……すごい! 来て良かった」
クラークさんたちが色々と準備をしてくれている間、私はリオに案内されて、この島の街の方までやってきた。
「この国はさ、複数の島国で成り立ってて、この島には100人くらいしか人がいねぇんだよ」
「へぇ、そうなんだ……わりと人数の多い島国(億単位)で生まれたから、なんか不思議」
リオの友達がいるというお店まで二人で足を運ぶと、そのお友達はまさかの攻略キャラ! として、女神にモデルにされた人だった。
この人、全然出てこないなと思ってたけど、今はこんな島にいたんだ!
リオのお友達の名前は、リュエル・バ・シロールさん。
肩までかかる白銀の髪と蒼い目が特徴で、確か王族の出なんだけど、本人はそれが嫌で世界をあちこち逃げ回っている人。
ヒロインとの出会いは、確かこの人のお姉さんがキッカケだったはず。
いつまでもフラフラしている弟を見かねて、個人的に気に入ったヒロインを紹介する。
それからリュエルさんは、ヒロインの素朴な雰囲気に少しずつ惹かれて行って、王族に戻っても良いとまで思えるようになり、王家の跡継ぎ問題とか色々と難題に巻き込まれながら、ヒロインと乗り越えてゴールイン。
ちなみに私もしっかりと推してました! ふふ。
「あの、失礼ですが、リュエルさんはお姉さんいらっしゃいます?」
「いいえ? 姉はおりませんねぇ……兄と妹はおりますが」
やっぱりゲームの時とちょっと違うんだな。
現実との差を出すために、あえて少しずつ変えていたのかもしれない。
「リュエは自分の役目から逃げまくっているからな」
「リオ、私は自分の人生は自分で決めたいのですよ」
おぉ、リュエルさんのこの言葉には、なんか既視感を感じる。
このリュエルさん、お顔もスタイルも女性のようにスラッとした綺麗な人だけど、振る舞いとか身のこなしもかなり綺麗な方でモデルみたい。この島の人の中にも密かなファンがいそうだな。
確か、リュエルさんは歌もとてもお上手で、そういう意味では最初、流離の吟遊詩人みたいなイメージを持ってた。
「この島にいるのはたまたまですが、なんだかんだ一年くらいは住んでいますね。そろそろ島を出ようかなと思っているところに、リオとその婚約者の方と会えて良かったです。ここ良いところでしょう? どうぞゆっくり観光していってください」
リュエルさんやお店の人たちと楽しく過ごし、あっという間に時間は過ぎた。
今日はもう夕方になってしまったから、明日は色々とこの島を見てみよう。
変わった動物さんたちにも興味があるし。
「リオ、こんな綺麗なところに連れてきてくれてありがとね」
「またいつでも連れてきてやるよ」
私とリオは二人で手を繋いで別荘に戻る。
こんなに幸せなことが続くと、これから先がちょっと怖いな。
船の倉庫で大蛇に食べられそうになった時は、本当にもう終わったかと思ったけど、今ここでこうやって普通にリオと過ごせているのが何よりも不思議。
◇ ◇ ◇
リオと別荘に戻った後、私はここの庭を静かに一人で散策していた。
この庭は、リオの本邸の方のバラ園に少し似ている感じである。
ここにはバラではなくて、ハイビスカスがいっぱい咲いているんだけど。
わりと庭の奥まで来たので、そろそろ帰ろうかと思ったころに、私の足元を何か小さいものが通った。
随分と派手な色をしていたから、もしかしてリオの言っていたこの島の珍しい動物かな?
私は好奇心から、小さいものが向かった先へと足をすすめる。
「あら……こんにちは」
『……言葉が分かるの?』
私は小さい動物さんと目が合うと、警戒されないように自分から挨拶をしてみた。
この子はピンクの体に黄色い尻尾をもつ、かなりファンシーカラーな小猿さんだった。
確かに珍しい色をしている。
『あのね、お願いがあるの』
「お願い?」
『困ってるの』
私は小猿さんに誘導されて、庭のさらに先へ行ってみた。
ん?
これは……何だろう?
植木に囲まれた道の真ん中に、黒くて何か変なものが見えた。
私は恐る恐る少しだけ近づいてみる。
よく見ると、まるで空間自体に大きな亀裂が入っているような……ちょっと怖くて嫌な感じのするモノだった。
『これが今日急にできて、この先に行けなくて困っているの。なんとかならない?』
「う、うん、何かしてみるわね」
うーん、なんだか女神の聖痕辺りが痛む。
これってちょっとヤバいかな。
でもこの小猿さん困ってるし……。
リオを呼んだ方がいいのかもしれないけど、でもいつも頼ってばかりでは……。
私は謎な亀裂をそっと手で触れてみる。
すると歪みは突然、私を強い力で飲み込み、そして……閉じた。
(しまっ……!)
うそ……暗い……。
手で探っても何も触れない。
や、やばい、これ……体が浮いてる。
本当に何も見えない……リオ……。
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